前半に大学生のインタビュー、後半にはセクシュアリティに関する論考という構成の本。大学生が親と性を結びつけて考えることに抵抗感を持っているということと結婚後のセックスレス問題を関連付けた論考はたいへん興味深い。
この本の前半は大学生が性について語った内容が編集され、これ自体は充実している。しかしどうも語りっぱなしになっている。せっかくのインタビュー内容が、分析して論じるという後半部分が不足しているために浮いてしまっているようだ。これではただの"体験談"集ではないかと感じてしまうのも無理もない。
そもそもなぜ大学生が対象なのか、その必然性が本書からはあまり感じられない。大学という特殊な人間関係(社会といってもよい)の構造と性の意識の関連性であるとか、若者に占める大学生の割合が増えてきたことによる世間全体の性の意識の変化であるとか、「大学生」という部分にもう少し着目したら面白かったのではないだろうか。あるいは"現代"特有の現象としてのインターネットと性意識の関わりについてなど。無論紙面には限りがあるのは承知だが、インタビューの中でもこれらに関係する話題が出ているだけに残念である。
いずれにせよ分量的に言っても論考が不十分である感は否めない。前半のインタビューをもう少し調理できたらさらに面白いものになったのではないだろうか。これでは、「大学生"が"語る性」である・・・。