山上敏子の行動療法講義with東大・下山研究室

  • 金剛出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772411578

作品紹介・あらすじ

「すべての精神現象を刺激‐反応の枠組みでとる」行動療法の大家・山上敏子が、下山晴彦研究室を領域に、行動療法の基礎から応用までを「臨床の楽しさ」とともに語った東大講義の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 厳しく優しい山上敏子先生の行動療法のゼミ講義集。セラピストは皆必読本。

  • 行動療法講義というけれどそれほど行動療法じゃなかった。一般的に役に立つTIPSというか心構えが多いので、いいのか悪いのか。

  • 「心理療法家は技術職である」という言葉に強く感銘を受けるとともに同意。心理療法家はその人の人格で治療するのではないのだ。「日々の臨床の忙しさを言い訳にしてはいけない」ということなど励まされることも多い。ここ最近で読んだ心理療法の本の中でベストの内容

  • 臨床とは何か…困っている人たちとどう向き合って一緒に歩んでいくか、というようなことがわかりやすく書いてありました。福祉の現場、相談という部分でも大いに参考になり、技術が上がるのではないかなと思います。

  • ・たとえば「その子は、ある先生の授業のときに乱暴が多い。『先生の授業は好きじゃない』と言っているように見える。この先生と相性が悪いのかしら」と想像して、先生の授業はどの授業でもいつも乱暴があるのですか」と質問してみる。質問は、聞くこちら側が頭をいっぱい使って、向こう側がハイとかイイエで答えられるような質問の仕方をするといいですよ。逆に、クライエントのほうがいっぱい頭を働かせなければいけなくて、セラピストのほうが頭を働かせない質問というのは、よくないです。役に立ちません。

    ・不安になったとき、ゼロ百思考になっていることが多いんですよ。「治さなくてはいけない。でも治せない」と考えるでしょう。そうではなくて、「自分が手伝えるところは少しはある。どこかに少しはあるはず」と思うこと。若いうちは、「絶対に、全部、何もかも、完全に」と思ってしまう。理論についてもそう。そんなになりがちです。けれども、わからないことはいっぱいあるし、そんなにきれいには見えませんね。

    ・問題解決は、クライエントの問題理解とセラピストの問題理解とが二等辺三角形みたいなところで進んでいく。クライエントがこれだけわかったら私もこれだけわかる、私がこれだけわかったらクライエントもこれだけわかる、というようにして進んでいくように思います。絶対にことらが先というわけではないね。このように進んでいくと「問題は何々のせいだ」というような見方は、でなくなりますね。そして、クライエントも、そして治療者も元気になっていく。

    ・受講生 私が関わっている事例で、クライエントは来談などとてもできない状態だと思っていた。ところが、そのような状態で来てくれた。そのことが嬉しいというのがあって、そのことを言ったんです。具体的に治療をどう進めるかという考えはほとんど私のなかにはありませんでした。「来てくれて嬉しい」と言うのは良くないのでしょうか。

    山上 その人がここにやっと来てくれたという、そこに目を向けて声かけをしたらどうですかね。嬉しいというのは素直な感情かもしれないけれど、クライエントは治療者が喜ぶために来るわけではないでしょう。そうではなくてクライエントが必死の思いで来た、この治療の過程の一生懸命さに、まず注目してあげたらどうでしょう。「大変でしたか?」とか、「頑張って来られたのですか?」とか。来たことを労うのであればそのことに関係した感情を労わないとね。治療者のために来ているわけではないので、間違えないように。穏やかに対応するの。一生懸命の気持ちで来たと思えば、クライエントのその気持ちを大切に扱うことが必要なのです。こちらの気持ちを直接もちだすとちょっと変よね。

    ・それからね、治療ではセラピストが進みすぎないことが必要なの。私はいつも、治療では「這えば立て、立てば歩めの親心」は非治療的だと言っています。這ったら、「ああ這った」と患者が這ったところに止まって考えればよい。あるいは、這わなくても、そこに居るだけで、そこのところで、良かったと思う。そんなところが必要です。

    ・治療の組み立ての二つ目のポイントは、大まかに「ここのところが変わったらいいかな」というような治療の対象化をすることです。よくわからないわけだから、わかった分だけ、大まかに治療の対象化をする。「…なればいい」、というようにですね。これは、クライエントの言葉で発されたことをセラピストが反復するだけですね。セラピストが勝手に言うものではないですよ。もしクライエントから何も言葉がなければ、「こうなったらいいの?」とクライエントの気持ちをセラピストが汲み取って聞くことはあるかもしれない。
    そのようにして、クライエントの気持ちを少し整理する、そして安定の方向に向ける。そーっとですよ。「あなたの問題は何なのか、わかるようにしましょう」というのは一つの枠づけですが、これではますますわからなくなってしまうことも少なくないのです。

    ・彼は確認を始める前から緊張していることがわかったので、落ち着いて確認を始めればパニックが軽くてすむのではないかと考えました。また、彼は確認を止めようと努力していますが、その努力がかえって興奮を高めて叫び声になり、さらに興奮が強まっているところがありました。その観察から落ち着いてゆっくり確認できれば少し良いのではないかと考えました。そこで私は彼に、「深呼吸を三回ゆっくりと繰り返してしよう。落ち着いて気持ちがゆったりなったと思ったら、それからゆっくりと確認しよう。ゆっくり確認したら、一回でいいと思うよ」と言いました。

  • 途中までしか読めていないが、心理療法の基礎部分を行動療法の視点から書いているように思う。

  • 今までの行動療法のイメージが間違っていたことに気づいたし、
    行動療法的要素は説明が分かりやすいし、これから色々組み込めるような感じがする。
    関わり方について勉強になった!また時間をおいて読みたい。

  • 臨床は技術である。技術には練習が必要である。目の前にあるものを扱うのが臨床。精神活動を含めて、刺激に対する反応全てが「行動」である。行動を具体的にとることがクライエントを理解するということ。理解なしに共感はない。

  • 行動療法とはどんなものなのか、イメージを掴むのに最適な本だと思いました。文体は口語体で親しみやすく読みやすかったです。
    行動療法の役立て方はもちろんのこと、臨床で気をつけることや、心構えなどにも触れられており、行動療法を用いた臨床活動をしたい人だけでなく、臨床に携わる人全般にも価値のある本だと感じました。

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