人類はなぜ肉食をやめられないのか: 250万年の愛と妄想のはてに
- インターシフト (2017年6月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784772695565
感想・レビュー・書評
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まあまあ。著者のスタンスは「人類はそもそも積極的に肉を食べるべきではない」というもので、現代の世の中の一部のカシコイ人々はそれをわかっているし、ベジタリアンと呼ばれる人もいるのに、なぜ人々は肉を食べるのをやめられないのか、ということについて、生物学や文化人類学、社会学などの観点から著者なりに分析している一冊。納得できる部分もあり、おもしろいっちゃおもしろい。ちょっと文章にくどさがあって、ボリューミーなので読むのが大変だけど。
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筆者はポーランド系カナダ人で、アメリカとフランスで活動するジャーナリスト。本著はジャーナリストらしい切り口で、歴史や宗教、倫理、慣習、技術などの観点から肉食というテーマを時に丁寧に時に大胆に切り刻んでいく。読んでいて引き込まれた。
主張には本人の生まれたキリスト教などの背景も影響しているのかなと感じたが、東アジアの犬食、日本の馬や鹿との接し方、インドの独自性など、比較文化論としてもおもしろく読める。
サブタイトルは「250万人の愛と妄想の果てに」。これはよいですね。脱・肉食の壁が厚いことは本人が最もわかっているようであるが、培養肉、昆虫食など、さらには税金という解決策を提示していく。何もしなければ新興国の1人あたりの肉の消費量は増え、温暖化も加速する。
制度や技術による解決は考えられますが、愛と妄想とあるように、最後は人間の認知なのかも。50年後の我々の食生活、食文化がどうなってるだろう?とそれこそ妄想しながら読むのがオススメです。 -
今後全人類が、今の我々と同様の肉食を謳歌することは、地球環境的に不可能、という現実と向き合う一冊。
肉食を減らしていくには、我々が肉食に惹かれるメカニズムを理解した上で、対策を講じていく必要がある。
「肉食は、肉を獲得できる力の象徴であり、肉を分け合うことでできるコミュニティの起点という文化的意味合いが大きい」、このような記述が大勢を占めるが、個人的には、肉のうまみや芳香が人を惹きつけるメカニズムの説明も興味深かった。 -
肉を食べるためには非常なコストが掛かる。
よく知られる話だと、牛肉育てるためのえさ用のトウモロコシを食用に回せば、飢餓が解消するくらいだ。
じゃあ人は菜食になればいいの?といっても、そう簡単に人は肉食をやめられない。そもそも野菜類の苦みを感じやすい人も居るし、社会背景として肉を食べることがいいことだととらえられている(食肉産業の広告の力でもあるのだが)。
古代においても、肉は貴重なカロリー源でもあり、狩った獲物を皆に分け与えると言うことで集団の一体感を得ることが出来る貴重な機会だ。
また、人は食べたものの力を得ることができるという意識がまだあり。強くなるためには力強い牛の力が必要という考え方も根強い。
古来よりインドでベジタリアンが多いのは、宗教の力はもちろんだが、豊富な豆類と香辛料による、美味しい食事が担保されていることも大きい。
なんというか、肉すごい!ってなる。
そうして、現代において人が肉を求めすぎるともうそれをまかなえないほどになってきているのだが、それを回避するためにベジタリアンになれるのかというと、難しい。
しかしながら、肉をかさ増しするために加工肉の半分は大豆だったりするので、我々は密やかにゆるベジになりつつあるようだ。
肉はいいものだ! 肉を食べよう!(でもそれは肉じゃ無い)っていう時代になるのかもしれない。面白かった。