空 見上げて: 「新人育成教員」日記

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  • 仮説社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773502626

作品紹介・あらすじ

先生になりたての新人教師といっしょに1年間ひとつの学級を担任するベテラン教師,それが「新人育成教員」。
「新人育成教員」になった筆者は,新人先生のさまざまな疑問や悩みにどう答えるのか?
迷いつつ悩みつつ歩んだ1年の記録には,知恵とユーモアがいっぱい。
全ての新人教員と,それを指導する立場の人々に読んで欲しい,読めば元気が出る1冊。
月刊『たのしい授業』で大好評を博した人気連載が待望の書籍化!

感想・レビュー・書評

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  •  著者の小川は,定年退職後,再任用で小学校現場につとめている教師である。仕事は,「新人育成教員」という「新しく先生になった人を一人前にするための副担任」という仕事。新人側にしてみれば,ありがたいのか,迷惑なのか,わかんないような立場の仕事だ。
     さて,その小川は,新人さんが〈要求していること〉に対して,あるいは〈今求めているだろうと思われること〉に対して,実に,タイミングよく,関わり,アドバイスをしている。これだと,新人さんも,安心して授業に取り組んだり,子どものことを理解したりできるであろう。まさに「啐啄の機」である。
     本書に,新人育成教員たちが集まったときの話も出てくるが,そこでは,「新人への愚痴花盛り」といった感もあったそうだ。でも,小川は,新人さんの愚痴なんていわない。我慢して言わないのではなく,言う必要がないのだ。
     このことを裏がえして言うと,新人ばかりの集まりでは,おそらく「育成教員への愚痴ばかり」となっているではないか。そして,小川が担当している新人さんは,「俺って,なんていい人に巡り会ったのだろう」と思っているのに違いない。
     小川の子どもや新人さんへの指導の〈優しさ〉〈的確さ〉は,彼が現役時代ずっと取り組んできた仮説実験授業をはじめとするたのしい授業や子ども中心の考え方が根底にあって、醸し出されてくるものだ。
     本書のことは,月刊誌『教育・2016年4月号』掲載の子安潤の論文にも取りあげられている。以下引用して,本書の紹介を終わろう。
    「かかわりすぎないようにしつつ,子どもにも新任教師にも小さな達成感を積み重ねていく。その〈ゆるさ〉は新任教師への優れたガイドであるだけでなく,スタンダードへのやわらかい向き合い方を示唆している。」(p.34 子安潤著「授業のスタンダード化に向き合う」『教育・2016年4月号』かもがわ出版)

     私の現場にも若い人たちが多くなってきた。
     小川のように,若者たちとは,余り関わりすぎず,しかし,小さな達成感が感じられるような,そんな人間関係を作っていきたいものだと思う。

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著者プロフィール

1952年 新潟県の農家に生まれる。
1977年 東京学芸大学教育学部卒業。東京都の小学校教員になる。
1983年 月刊『たのしい授業』創刊号(仮説社)で仮説実験授業を知る。同じころ八王子市の書店で偶然見つけた板倉聖宣『未来の科学教育』(国土社,現在は仮説社から刊)は〈人生を変える1冊〉となる。以後30年に渡って小学校で仮説実験授業の実践と普及につとめる。
2013年 退職。東京都の「新人育成教員」の職につき,現在に至る。
 『たのしい授業』誌に授業記録や論文などを多数発表。仮説実験授業研究会会員。

「2015年 『空 見上げて 「新人育成教員」日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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