- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784773892116
感想・レビュー・書評
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警官のリトゥーマは惨殺された若者の死体を見つける。彼はパロミノ・モレーロ、歌とギターはプロ並み。秘密の恋人に歌を捧げるために軍隊に入隊したらしい。リトゥーマと先輩のシルバ警部補は捜査を続ける。シルバ警部補は金髪の白人でいい男。それなのに町のおデブの料理屋のおかみさんにいかれてる。
捜査では軍隊は非協力的。混血の一兵卒が軍隊エリートの家の娘と恋をするなどあるはずがない。人種や階級による差別が圧倒的に立ちはだかる中、二人はほぼ個人的執念で捜査を続け、関係者達の証言を通して事件の顛末を掴む。
しかし町の人たちからは「きっともっと大きな陰謀を隠しているに違いない」と信じてもらえない。そして軍隊の内部機密に関わったため二人も地方へ左遷される。「なんてぇこったい」
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題名に「誰が殺したか」となっているが、誰が、なぜ、というのはあっさり分かる。テーマはペルーの中に当たり前にある階級や血による差別、軍隊への批判。またリトゥーマというのはバルガス・リョサ作品ではよく出てくるキャラクターなので、彼を通して一人の人間の心身遍歴を書いているような作品。ここでのシルバとリトゥーマが実にいいコンビなのでこれきりなのが残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2013.3記。
バルガス・リョサの推理小説仕立ての中編。石ころだらけの原野で磔にされた惨殺体。被害者の空軍志願兵パロミノ・モレーロの足跡を追う若き警官リトゥーマと老練な上司シルバ警部補。
軍の厚い壁、そしてペルーの貧しい村落の閉鎖性に阻まれながら、徐々に事件の真相に迫っていく。
ペルーの白人社会と混血を中心とした地場の共同体との間には埋めがたい断絶があり、さらにその上には経済を支配する米国人と現地白人との断絶がある。近代国家の機能としての警察は、そのいずれからも受け入れられていない。推理小説だからはっきり書くわけにはいかないが、結末部分で真犯人判明のカタルシスを味わったと思いきや、最後の最後で結局より深いペルー社会の抱える闇に向き合わされるという、何ともやるせない読後感。
物語は比較的シンプルに進行していく。「チボの狂宴」「世界終末戦争」のような長大さはなく、今回は少しもの足りないかも、と読み始めたがやはり圧倒的に引っ張り込まれた。ところどころのギャグも相当笑える。断りなく場面が切り替わる手法はお約束だが、エンターテインメントに徹していて読みにくくはない。やっぱり面白い。 -
2024/1/21購入
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初リョサ。ミステリー仕立てだが純文学風でもあり、風刺的でもある。なかなか読ませる作品。「緑の家」位は読んでおかないといけないか。
この「ラテンアメリカ文学選集」、揃えたいけど薄い割に値段が高い。 -
ノーベル賞作家バルガス・リョサの推理小説。ミステリーとしては可もなく不可もなくの出来映え。
陰謀論を語る町の人々の他愛なさと、事件の真相の下世話さ、メインストーリーの脇で語られる警部補の恋の脱力的な結末。これらが描くペルー社会の、何でもない等身大の姿が、何ゆえか愛らしく思えるのは、作家の力によるのだろう。 -
FMシアター のこれを聞いて図書館から借りてきました。
面白い!に尽きる。
もっと読まれるべき!と思いましたが、単行本だし価格も高いせいか
知名度も低く絶版になってます。
著者の本を現在出してる岩波とかでなく、新潮社とかの親しみやすい文庫にしたら手ごろな厚み、値段になってくれそうな気がします。 -
¿Quién mató a Palomino Molero? Vargas Llosa
明るいミステリ仕立てながら、見えない誰か(お偉方)からの圧力を描いてます。エベリオ・ロセーロの「顔のない軍隊」ほど直接的ではないですが、最後のオチまであって楽しめました。
あらすじとしては、惨い姿で放置された死体を発見した主人公の若い警官が、男前の上司と一緒に捜査に乗り出す。少しづつ手がかりが見つかっていく中で、軍隊という大きな組織がバックにあるんじゃ解決のしようがないんじゃないか・・・と匂ってきます。
混血度(生まれ)×職業・階級の絡まりあった人間同士の関係とその結果の不幸が話の筋にあるわけですが、主人公たちの明るさがエンタメ作品にしてくれてます。★★★★ -
『緑の家』の登場人物、リトゥーマを再登場させて展開する、推理小説。
平凡、というのが第一印象。
ミステリーとしての筋立てもあまり驚くべきところがないし、優秀な上官と見習い警官という組み合わせも使い古されたもの。むしろ、リトゥーマを平平凡凡たる一見習い警官に配役しているのが、『緑の家』を読んだ時とだいぶ印象が違い違和感が甚だしかった。『緑の家』に登場した彼なら、未熟なりに活躍できたろうと思われる勢いがなかったのは残念。
結局解説でも、エンターテインメントとしての側面を取り上げるより、リョサの作品の共通する社会諷刺、二項対立といった特徴を取り上げていることからも、エンタメ小説としての質は知れている。
そして、「リョサらしい」小説が読みたければ、他にいくらでもいい小説がある。
『パンタレオン大尉と女たち』が面白かったので、彼がエンターテイメント作品全般を苦手にしているわけではないはずなので、『フリアとシナリオライター』には期待。