深い川 (ラテンアメリカ文学選集 8)

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制作 : Jose Maria Arguedas  杉山 晃 
  • 現代企画室 (1993年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773893106

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深い川 (ラテンアメリカ文学選集 8)の感想・レビュー・書評

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  • クスコの石壁の描写[p10]が魅力的だったので手にとった。また、解説によれば、作者ホセ・マリア・アルゲダスは57歳のときにこめかみをピストルで撃ち、4日間苦しんで死んだ。そのことにも興味を持った。物語全体が、彼の幼少期の体験と深く結びついている。ペルー南部の都市アバンカイが舞台。

    アバンカイにたどり着くまでに主人公エルネストは、弁護士である父親と各地を転々とした。節々でみられるように、彼の繊細な感受性が豊かに育くまれたであろう。だが、それも狂う寸前の危うさがある。例えば、物語の終わりでチフスが流行って「白痴の少女はどうなっているだろう」と彼女のもとに行き、傍で祈る[p346]。暴動にまぎれたり、チフスが入ってきているかもしれない街を歩いたりする。友人には「うつ病」[p124]「センチメンタルなやつ」[p126]「人とあまり付き合わない」[p166]などと評価されている。しかし、当時のインディオや黒人などに対する偏見が強い中で、自分は「インディオに育てられた」[p382]というような認識を持っている。これは作者の体験に根ざすだろう。そして、そういった偏見に満ち、子供を信用しない(「白痴の少女と寝たのか」と校長に詰問される場面など[p358])大人たちへの違和感(「神父様も変わってるよ」[p187]など)が通底している。

    また、主人公の名前がわかるのは、父親と別れ、アバンカイの寄宿舎に入り「スンバイユ」をきっかけに周りにとけこみはじめ、友人からその名前を呼ばれるときである。彼が暴動に参加したり、チチャ酒場に出入りしたりすることでその描写ができるわけだが(「ぼくは」と一人称の記述で貫かれている)、完全にエルネストの目線に限定されないフットワークがある。書いている作者がこの少年と同じ年齢ではないから、その位置であり、作者自身も彼を観察しているのだろう。

    尚、同じペルー生まれの訳者の解説も素晴らしい。

  • ベナレスなどを舞台とした作品です。

  • ペルーの作家。白人でありながらインディオに親しみ、数々のトラウマを抱え、最期は自殺した。

    ★★★
    南米カトリックの寄宿舎に入った白人の少年。インディオに育てられた少年は、彼らの苦難に親しみ、自然に慕情を凝らし、ふとした身近に死を感じる。摂取されるインディオ、神のように町に君臨する神父、生徒たちに性的共有物とされる白痴の少女、塩の専売から始まった暴動と鎮圧にきた政府軍、そしてチフスの流行。
    「深い川」とは、作中で少年が心の支えとしている雄大なパチャチャカ川、そして白人とインディオ、支配者と被支配者、神と俗、対する二つのものを隔てる存在を意味する。
    ★★★

  • スペイン人に征服されてからしばらく経った時代、インディヘナが白人に抑圧されていた時代のペルーを舞台にした作品だ。
    エルネストという、見た目は白人だが、インディヘナに育てられ、精神的には彼らに近い少年が、根無し草の父との放浪を経て、アバンカイの寄宿学校に入学し、さまざまな少年たちと交流を持ちながら成長していく様を描いている。
    詩的で繊細な、潔癖さを持った少年の眼を通して、当時のペルーの生活、インディヘナの哀しみが描かれている。
    土の匂いがするような、実感を伴う力強さと、美しい言葉の連なりが対極であるのに不思議なほど違和感なく絡み合って、綺麗だった。

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深い川 (ラテンアメリカ文学選集 8)の作品紹介

アンデス山中で、白人に生まれながらインディオの間で育った少年の目に、先住民差別の現実はどう映ったか。待望久しいインディへニスモ文学の最高峰。

深い川 (ラテンアメリカ文学選集 8)はこんな本です

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