クラゲのふしぎ (知りたい★サイエンス)

著者 :
  • 技術評論社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774128573

作品紹介・あらすじ

クラゲの揺らめきを見るとなんだか気分が癒される。クラゲの傘の拍動は6億年もの間、止まることなく動いていた。イルカやクジラが波を切り魚やイカが忙しく泳ぎ回っていてもクラゲはいつでも同じ動き。海中で鮮やかな傘を広げてゆらり揺らめくクラゲ。その揺らぎには未知なる不思議が詰まっている。クラゲの神秘のベールをはいでみると…。

感想・レビュー・書評

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  • 夏休み、子どもと水族館に行ったらクラゲがいた。
    大水槽のクラゲもなかなか見応えがあったが、その陰にひっそり展示された発生段階ごとの幼生→ポリプ→若いクラゲの変遷に目を惹かれた。ポリプくらいはかろうじて覚えていたが、そうか、クラゲってこんなに変化していくものだったか・・・。
    夏からは少し時間が空いてしまったが、クラゲ本、探してみました。

    写真や図も多く親しみやすい一方、相当突っ込んだ話もあり、ディープな本でもある。クラゲにちょっと興味がある人からクラゲ・フリークまで、幅広い人が楽しめる本だと思われる。
    クラゲはコアなファンも多いようだが、意外なくらい謎も多い生きものであるようだ。体構造のために標本にしにくいことから、種の同定も困難だという。いまだ知られぬ深海性のクラゲの種類もかなり多いと言われている。

    クラゲの内、刺胞動物門に属するものは、サンゴやイソギンチャクと同じ仲間である。形態的にはかなり違うように見えるが、実はサンゴやイソギンチャクを逆さまにして水中を漂わせ、浮きやすくしたらクラゲ、というくらい似ているのだという。

    クラゲの増え方は3種。有性生殖・無性生殖(出芽)・分裂である。どの戦略を(多くの場合は組み合わせて)取るかは種によりけりで、生活環もさまざまである。プラヌラ幼生・ポリプ・群体・クラゲ型と形態をさまざま変えるものもあれば、形を変えずに一生漂って暮らすものもある。

    さまざまな色のクラゲがいるし、発光するクラゲもいる(2008年度にノーベル賞を受賞した下村博士はオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)を単離した)。墨を吐くものもいるという。

    クラゲといえば「刺されると痛い」というイメージだが、刺胞についての話や対処法もある。
    また近年大量に発生したエチゼンクラゲにも簡単に触れられている。
    とにかくクラゲのトリビア満載である。

    クラゲって何考えているかわからない感を強く抱かせる生物だよなぁ・・・と思う。まぁそもそも脳がないわけで、何も考えていないといえばいないのだろうが。
    でも水を漂うクラゲを見ていると、不思議と哲学的な気分になる。
    クラゲとともに漂いながら、思索の海を浮遊してみる。


    *アカクラゲは俗にハクションクラゲという。真田幸村がアカクラゲを粉にして敵に撒き、くしゃみを連発させて困らせたという故事による。くしゃみを起こさせるクラゲもすごいが、信州の武将なのにそんなことを知っていた幸村もすごい(@o@)。

    *自分が学生の頃は、クラゲは腔腸動物と習ったような気がするが、この本では刺胞動物門と有櫛動物門と言っている。ちょっとググったら、この2つの門はかなり違うので、一括して腔腸動物(門)という言い方は現在はあまりしないらしい。
    分類学ってもう確立された静かな分野なのかと思っていたけど、そうでもないんだなぁ。

    *クラゲ。ヘッケルの絵(『生物の驚異的な形』)を思い出す。http://algorithmic-worlds.net/Haeckel/haeckel.php

  • 興味のあった話題をいくつか。/際限なく分裂できる、不老不死のベニクラゲ。アカクラゲは、真田幸村が粉末を敵にかけてくしゃみをおこさせたことから、ハクションクラゲの別名があること。/死滅回避(無効分散):ある生物が本来生息しない場所へ海流で運ばれ、季節変化などによって生息条件が合わなくなり、そこで死んでしまう現象。日本では、夏場に、熱帯・亜熱帯から黒潮にのってギンカクラゲ、タコクラゲなどがいるが大部分は冬に死ぬ、一見無駄に見えるけど、このくりかえしで、一部が低体温に適応するなどしてゆっくりと分布を広げる "地球上の生物の分布は、死滅回避を繰り返しながら、長い年月を経て形成されたものなのです"/サカサクラゲなど、粘液で海水を浄化、粘液でからめられた塊のうち、大きなものはマリンスノーとなって沈んでいく。タコクラゲは褐虫藻と共生、光合成し、海水を浄化、海水に酸素を供給。

  • 淡い光の中をゆったりと泳ぐクラゲの幻想的な姿に癒される人も多いはず。近年、水族館で人気が高まっている一方、大量発生で被害が出ると言ったニュースがたびたび報じられることも。そんな多種多様なクラゲが生息している世界有数な日本の海。
    謎に包まれた生態やかかわり合い方など、不思議なクラゲの魅力を日本クラゲ愛好家たちが分かりやすく解説・紹介する。


    クラゲってプランクトンだったんだ!さらにプランクトンの定義が、体の大きさには一切関係なく遊泳能力の有無だということに驚く。しかもクラゲはサンゴやイソギンチャクと同じ刺胞動物門で、体のつくりはそっくりなのだとか。
    この本を通して読んで、一番分かったことは、クラゲのことはまだまだよく分からないことが多いということ。大体章の終りはそれが書いてあります。あ、ちなみに著者『ジェーフィッシュ』とはクラゲに関するプロとアマチュアやアーティストの垣根を越えた集まりだそうです。
    近年エチゼンクラゲが大量に網にかかり漁業関係者を困らせると言うニュースを見るたびに、何かに利用できないものかと思わずにはいられなかったんだけど、なんとクラゲのコラーゲンは非常に優秀らしいじゃないですか。研究も進んでいるようですが、商品化には安定供給が不可欠。異常発生には頼れないという問題が。中々都合よくはいかないものですね。まあクラゲはいるだけでも水質浄化につながるそうなんで、意外と多才な奴だったんですね。
    一般人にとってクラゲの最大の魅力は何と言ってもあの姿でしょうか。透明の丸いフォルムで中には発光するものもいる。水中を漂っているようでありながら、ゆっくりとしたリズムを刻む拍動。それらがせわしない日常を一時忘れさせ、悠久の時感じさせる安心感と安らぎをもたらしてくれるのではないでしょうか。
    ちなみに漢字で書くと『海月』。このセンス良いですよね。

  • クラゲって変な生き物だ。動物か植物かといえば動物だけれど、卵がポリプになって、そこから複数のクラゲになるになるというのは動物らしくない。ふわふわ泳ぐから食われそうだから逃げようとか、ごはん食べようとか思うのだろうけれど、一体どこで考えているんだろう? 
    基礎知識から生態、種類や見かけ、毒や視覚や聴覚について。不老不死とされるベニクラゲについて。水族館の楽しみ方や飼育員の裏話。幅広く、バランス良い。索引やアンケート、参考文献もしっかりしていて、思いがけぬ良書だった。
    著者名「ジェーフィッシュ」(jfish)は人名ではなく、クラゲ愛好会の名前らしい。実際の著者の一覧を見たら、大学に所属するプロの研究者と、アマチュアの研究者やマニアが半々。普段の仕事はエンジニアだったりピアノ調律師だったり住職だったり。このバランスってたぶん正解。ここにまぜてもらったら楽しそうだ。

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