原子力ルネサンス ‾エネルギー問題の不可避の選択‾ (知りたい!サイエンス 38)
- 技術評論社 (2008年8月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784774135823
作品紹介・あらすじ
エネルギー問題はいまや人類の大問題である。われわれは、石油価格の高騰に端を発したエネルギー危機の只中に投げ込まれたかのようだ。ある人々は再生可能エネルギーが有効だと言い、ある人々は脱温暖化や人間の生き方の転換を説いている。だが地球規模で見たとき、どこに有効な解決策があるというのか。そんな中、国際社会は原発の新設計画に次々と着手し始めた。21世紀の世界に何が起こっているのだろうか。
感想・レビュー・書評
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事故の3年前に出版された、原子力礼賛の書。原発だらけなのは何も日本に限ったことではなく、世界的な趨勢である。1979年のスリーマイル島、そして1986年のチェルノブイリの事故によって、各国で反原発運動が巻き起こったけれども、世界の原子力発電量は増加の一途を辿った。原子力は、その未来は暗いと思われていた時期もあったけれども、21世紀に入ると息を吹き返し、「原子力ルネサンス」というべき状況が出現する。中国やインドの経済成長を支えられるエネルギーは原子力しかない。中国では、2008年の段階で稼働している原発は11基に過ぎないが、計画中のものは141基にのぼるという。「脱原発」で有名なドイツのエネルギー政策は迷走し、大量に建設された風車は、むしろ景観と環境を破壊している。原子炉は進化して「第3世代」となり、安全性が大幅に向上した。現在、世界でウラン資源の争奪戦が起きている。日本も、世界の潮流に乗り遅れるな──。
原発推進派の論調は、誠に勇ましい。政治家は外国と競争するのが好きだから、原発を推進したくなる気持ちも分からないでもない。技術者にとっても、次世代原子炉の設計は面白い仕事であろう。けれどもこの本では、原子力の負の側面には一切触れられていない。
事故によって、世界の流れはどう変わっていくのか、それとも変わらないのだろうか?しかし、日本は外国の真似をする必要はない。いずれにせよ、今後日本の人口は減少し、超高齢化社会を迎えることになる。日本社会は緩やかに衰退してゆく運命から逃れられないのだから、もはや成長戦略にしがみつく必要はないのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。
通常の配架場所は、3階開架 請求記号:543.5//Y67 -
タイトルから原発推進論かと思いきや、原発推進や反対運動の流れや現状、原子力発電の仕組み、各国の原子力政策までの大要が手軽にまとめて読める感じ。文章が妙に皮肉っぽいのが少しマイナス。
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タイトルからして推進者本と思いこんでいたが、そうでもない。原発やエネルギーを一歩後ろから冷静に見ましょう、的な。各国の現状、歴史、事情を紹介し推進者・反対者の意見に客観的なツッコミも入れる。原理や放射線については多く書かれてはいないが、原子炉のタイプや移り変わり、脱原発国が何をしているかなど、さらっと読めて結構良いです。
次は脱従来エネルギー本でも読んでみるかな。