ユークリッド原論を読み解く ~数学の大ロングセラーになったわけ~ (数学への招待)
- 技術評論社 (2014年6月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784774165363
作品紹介・あらすじ
人類の至宝、歴史的数学書「原論」には何が書かれているか?特徴的な部分を現代語に翻訳し、丁寧に解説!幾何・素数・完全数など、豊富な話題を収録、数学を語り合う古代ギリシャの世界を現代に再現します。
感想・レビュー・書評
-
ユークリッド原論はユークリッドによる古代ギリシャ数学の集成で最初の公式集ともいうべきもの。定義の積み重ねで公理・公準を導き、そこから命題を証明し、また、その命題や定義、公理・公準を使用してさらに別の命題を証明するという形式となっている。しかし、代数が発明される前なので、命題などは文章で示され、証明も作図によって行われているため非常にわかりづらいのが特徴である。これが、タイトルの「読み解く」につながっている。
本書では三平方の定理やユークリッドの互除法などの証明を実際に作図しながら解説している。現代の感覚では非常に回りくどい印象を受けるが見事に証明されていた。また、ユークリッドの互除法では何が起きているのかが視覚的に示されてむしろ分かりやすくなっていた。途中、原論の公理が当てはまらない例として非ユークリッド幾何学にも触れている。非ユークリッド平面である楕円幾何と総局幾何での三角形の面積の公式とその証明が示されているのだが、美しい結果が導かれ、幾何学の面白さを示していた。
このほか素数の個数や完全数、円柱・円錐の体積など高度な数学分野なども証明していることが紹介され、ユークリッド原論はただ単に古い数学書ではなく、数学の基礎を凝縮したすごい書物であることが分かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
公理に基づく幾何学の体系の雛型である『原論』は,言い回しが今流ではないので読みにくい。翻訳上の問題もあるし,そもそも原典が失われてしまっている。私はしばらく前に「対頂角は等しい」という命題が何を言いたいのか(仮定と結論は何なのか)がわからなくなったこともあり,この本を手に取った。表現を咀嚼しながら公理的構成の一端を紹介してくれている。『原論』が扱っているのは実は幾何だけではなく,比や整数,体積についての言及もあり,この辺りについてもそのスタイルを誤魔化さずに見せている。完全数(自身を除く約数の和がその数自身に等しい自然数。6,28など)の条件を古代ギリシア人はすでに見抜いていたというのに驚かされた。なお,対頂角云々については現在の定義を訂正するべきなのだろうと考えています。
-
サイエンス
数学 -
2017/1/9宝塚西図書館から借りた。
-
今なら代数的に解ける問題を、当時は幾何学的に解く。すっかり幾何学の知識が抜け落ちてしまうと、その精密さがかえってびっくりである。