ユークリッド原論を読み解く ~数学の大ロングセラーになったわけ~ (数学への招待)

著者 :
  • 技術評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774165363

作品紹介・あらすじ

人類の至宝、歴史的数学書「原論」には何が書かれているか?特徴的な部分を現代語に翻訳し、丁寧に解説!幾何・素数・完全数など、豊富な話題を収録、数学を語り合う古代ギリシャの世界を現代に再現します。

感想・レビュー・書評

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  •  ユークリッド原論はユークリッドによる古代ギリシャ数学の集成で最初の公式集ともいうべきもの。定義の積み重ねで公理・公準を導き、そこから命題を証明し、また、その命題や定義、公理・公準を使用してさらに別の命題を証明するという形式となっている。しかし、代数が発明される前なので、命題などは文章で示され、証明も作図によって行われているため非常にわかりづらいのが特徴である。これが、タイトルの「読み解く」につながっている。
     本書では三平方の定理やユークリッドの互除法などの証明を実際に作図しながら解説している。現代の感覚では非常に回りくどい印象を受けるが見事に証明されていた。また、ユークリッドの互除法では何が起きているのかが視覚的に示されてむしろ分かりやすくなっていた。途中、原論の公理が当てはまらない例として非ユークリッド幾何学にも触れている。非ユークリッド平面である楕円幾何と総局幾何での三角形の面積の公式とその証明が示されているのだが、美しい結果が導かれ、幾何学の面白さを示していた。
     このほか素数の個数や完全数、円柱・円錐の体積など高度な数学分野なども証明していることが紹介され、ユークリッド原論はただ単に古い数学書ではなく、数学の基礎を凝縮したすごい書物であることが分かった。

  • 公理に基づく幾何学の体系の雛型である『原論』は,言い回しが今流ではないので読みにくい。翻訳上の問題もあるし,そもそも原典が失われてしまっている。私はしばらく前に「対頂角は等しい」という命題が何を言いたいのか(仮定と結論は何なのか)がわからなくなったこともあり,この本を手に取った。表現を咀嚼しながら公理的構成の一端を紹介してくれている。『原論』が扱っているのは実は幾何だけではなく,比や整数,体積についての言及もあり,この辺りについてもそのスタイルを誤魔化さずに見せている。完全数(自身を除く約数の和がその数自身に等しい自然数。6,28など)の条件を古代ギリシア人はすでに見抜いていたというのに驚かされた。なお,対頂角云々については現在の定義を訂正するべきなのだろうと考えています。

  • サイエンス
    数学

  • 2017/1/9宝塚西図書館から借りた。

  • 今なら代数的に解ける問題を、当時は幾何学的に解く。すっかり幾何学の知識が抜け落ちてしまうと、その精密さがかえってびっくりである。

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著者プロフィール

1977年 広島で生まれる
1999年 大阪大学理学部数学科卒業
2001年 大阪大学大学院理学研究科数学専攻修士課程修了
 2001年より研伸館にて、2022年からはお茶の水ゼミナール(お茶ゼミ√+)にて、主に東大・京大・医学部などを志望する中高生の大学受験数学を担当する。研伸館では、灘校の生徒を多数指導してきた。
そのかたわら、「大学への数学」などの雑誌での執筆活動も精力的に行う。
 著書『複素解析の神秘性』(現代数学社 2011)、『ユークリッド原論を読み解く』(技術評論社 2014)『超有名進学校生の数学的発想力』(技術評論社 2018)など多数。

「2023年 『敢えて計算も辞さない思考力・判断力・表現力トレーニング 数学BC』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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