水底の棺 (くもんの児童文学)

著者 :
  • くもん出版
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本棚登録 : 80
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774306483

作品紹介・あらすじ

村の水源であるはずの狭山池は、今や泥沼に変わりはてた。農作物が育たず飢える者、池の修理中に命を落とす者…。苦しみ、悲しみの源のような池から逃れ、京へのぼった小松だが、そこで彼が見たものは、生まれ故郷に負けず劣らず悲惨な人々の暮らしであった。平安末期から鎌倉という不安定な時代、時に悩み、弱さを見せながらも、池の修復に命をかける小松と、凄まじい執念で、東大寺再興という偉業を成しとげた重源。二人の人生を軸に織りあげた一大歴史物語。

感想・レビュー・書評

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  • 源平の争乱で荒廃した時代。
    幼くして一人で生きることを余儀無くされた
    小松の成長物語。
    事ある毎に何が正しく、何が間違いなのか、
    葛藤し苦悩する姿に考えさせられました。

  • 家の近くにある池の見方が変わりました。
    水がある、必要なときに必要なだけ使えるのは本当に恵まれたこと。当たり前すぎて考えたこともなかった。
    小松のように奮闘してくれた人がいたから、今の生活があるのだろう。
    池の底に眠る記憶をいただいた気分です。

  • 人は、どう生きるべきか? どう生きるのが幸せか?
    決して恵まれた生まれではなく、母は亡く、父も京で姿をくらまし、父の友人である松に引き取られて育つ小松。その後、松をも池の普請で亡くして、京へ売られていってから、さまざまな人との出会いと経験を経て、出身の河内の狭山池へ戻っていく。

    人が何を求めて生きるのか、本当に望むものについて、小松とともに考えることができるのは貴重な体験だったが、最後に小松が狭山池へ戻ることがわかっていただけに、そこに至るまでの経験が大事、とわかっていても、そこへ辿り着くまでが長く感じられた。それと、いくつかの出会いや出来事が、少し偶然が過ぎるのが気にはなった。
    タイトルから、少し深読みし過ぎてしまったかも。

  • 美、別れ、自分の中の炎。良き。
    小松の成長に、引き寄せられて行く。

    中川なをみ「水底の棺」2002年の本。

    村の人々、サスケ、老婆、重源上人、陶器売りの女将。
    子供である小松にとっては憎き相手。
    しかし次第に、許していく。それが、すっ、とわかる。

    ゆうがそばにいてくれることが心強い。
    そして、消える寂しさと、実感が、ぐっ、と伝わる。
    それは必要なことなのだ。

    恵海と蓮空のその後に癒されて、物語は幕を閉じる。

    狭山池。
    羽曳野。

    ここからは、現実にいま生きている僕らが、求める番だ。

  • 私の生きている時代は幸せだ。腹を空かせると言っても、昼ごはんしっかり食べて、確実にありつけるであろう夕食までの間に腹を空かせて、身近にある駄菓子に手を出してしまっている。主人公の小松のように腹を空かせた経験もないし、狭山池改修などという偉業もなせぬまま、定年目前だ。このままでいいのか。

  • ★★★★★
    恋すてふ狭山の池の三稜草(みくり)こそ引けば絶えすれ我は根絶ゆる
    古今和歌集に詠まれ、古事記・日本書紀にもその名前が見られる狭山池。日本最古のダム式ため池でもあります。
    しかし平安時代はよく水を枯らし、近辺の村人たちの水争いが絶え間なくありました。人は飢え、子どもは売られました。
    一人の男の子が、物騒な世を生き抜き、やがて狭山池をゆうゆうと水をたたえる美しい池へと変えていきます。
    (まっきー)

  • 以前読んだ児童書「龍の腹」と同作者。力強く土臭さが好きだったので、こちらも読んでみた。
    水と火。幼くしてひとりで生きていかねばならなくなった主人公「小松」が、火に魅了され水と闘う姿は、どんどん逞しくなり頼もしい。やはり、生きる力に溢れた、優しく力強いお話しは、好きだ。

  • 児童書だけどそうとは思えないほど読みごたえがあった。貧しい若者が狭山池の治水工事にかかわっていき力強く成長していく様が良かった。
    東大寺再興に執念を燃やす重源上人のしたたかさも面白かった。

  • 時代は平安末期から鎌倉。大阪狭山の狭山池の治水をめぐるお話。とてもいい物語でした。

  • 大阪南東部に位置する河内にある狭山池が舞台になる物語。平安末期から鎌倉というう不安定な時代,時に悩み弱さを見せながらも,池の修復に命をかける主人公の小松と,凄まじい執念で,東大寺再興という偉業を成し遂げた重源。二人の人生に軸を織り上げた歴史物語。主人公の少年の8歳から30歳になるまでの人生とともに見ていく歴史の舞台裏,庶民の暮らしぶりがよくわかり,学校の授業だけでは分かり得なかったかたこともたくさん,大人になる前の子どもたちに読ませてあげたい本ですね。そしてこの物語に登場する,焼き物(須恵器・景徳鎮・龍泉窯)が,以前読んだ「焼き物師モギ」や「龍の腹」を思い出させてくれた。

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著者プロフィール

山梨県生まれ。日本児童文学者協会理事。『水底の棺』で日本児童文学者協会賞受賞、『天游』、『龍の腹』(くもん出版)。『水底の棺』『有松の庄九郎』(新日本出版社)、『茶畑のジャヤ』(鈴木出版)で全国課題図書作品に選定。19年11月に初のノンフィクション『よみがえった奇跡の紅型』(あすなろ出版)刊行。

「2021年 『バトン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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