円周率の謎を追う 江戸の天才数学者・関孝和の挑戦

著者 :
  • くもん出版
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774325521

作品紹介・あらすじ

「しかし、だれも疑問に思わない円周率に、そこまで興味をもたれるとは、ほんとうに孝和どのはおもしろい人だ」

円周率3.14が、まだ使われていなかった江戸時代。円に魅せられ、その謎を解明しようとした数学者がいた。彼の名は、関孝和。円周率の計算や、筆算による計算の発明など、数々の偉業を残し、日本独自の数学・和算を、世界と競えるレベルにまで押し上げた彼の、少年時代からの物語。

小学校5年生の算数の教科書(円の単元)に、必ずといっていいほど登場する関孝和ですが、その業績については、ほとんど触れられていません。彼の少年時代から壮年時代にかけての物語を通して、当時の数学・和算や関の業績について、わかりやすく伝えていきます。関孝和を題材にした初めての児童書。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代の数学者関孝和を通して江戸時代の学者武士たちの生活を書いた児童文学。

    幕臣内山家の次男の孝和は、丸暗記したり形式に拘る儒学と剣術よりも、柴村塾で習っている数学に夢中になっていた。
    目黒の算額奉納をみてから円周率への疑問を持ち、それは生涯の研究の元となる。
    当時円周率は中国から伝わった「3.16」「3.162」などが採用されていた。しかしこの根拠は誰もわからなかった。

    当時の武士はお家のための御用第一。さらに次男の孝和は他の家の養子になり役職を継がなければならない。
    小説での孝和は、深く物事を考え疑問を疑問のままにしておかない性格だが、消極的で、幕臣次男としての責務と好きな数学の間で悩んだりする、現代人にも共感を得やす人物に描かれている。
    そんな孝和は、厳しいと思った兄や、数学の師匠とその娘(淡い初恋描写もあり)の後押し、そして他の数学者の情熱をみて、自分もお家のお役目と数学とを全力でやるぞ!という気持ちになってゆく姿が書かれる。

    時代は四代将軍家綱から、六代将軍家宣のころ。
    孝和は、甲斐国甲府藩の徳川綱重に仕え、綱重のあとを継いだ綱豊(のちの六代徳川家宣)の勘定吟味役となった。家宣が将軍に就任してからは、江戸詰めで納戸組頭に任じられた。


    関孝和の実像には謎が多いので、物語や心情はほぼ作者のオリジナル。資料が少ないのは、孝和の死後に家が断絶したこと、当時の数学者たちは「研究を発表して名を挙げる」がなかったため孝和の生前の記録も少ないようだ。
    この本を読むと、孝和は解くことだけでなく、解くための数式や理論を引き出そうとしていた。そして日本独自の「和算」で世界に先んじる数式を出していった。


    この時代の風習や武士の生活、数学の解き方などは児童にもわかりやすいように「現在で言えば〇〇のようなもの」など説明されている。数学についても、挿絵などを使ってわかりやすいように書かれている。小学生向けではあるが、数式が理解できる大人にも面白く読めるかもしれない。

  • ノーベル賞の報が広まると、学者や専門分野が一時的に騒がれ、受賞者が日本人であるか否かが取りざたされる。本当に貴いのは受賞したことよりも、役に立つかどうかわからないこと、世間から注目されないようなことに長い年月取り組める信念と情熱だ。関孝和は和算の巨匠として今でこそ有名だが、その生涯では学者としてはさほど得もしていない。でも一つのことに夢中になれる人生はすばらしい。誰も前を歩いていない道を見つけられることこそ幸福だ。少年少女向けの本だが、関孝和の個人エピソードも少し知ることができて楽しかった。

  • 5年教科書掲載本。

    公共図書館の高学年オススメ本でありながら、なかなか手が出せなかったけれど、予想外に読みやすく一気に読めました。
    謎も多い人だとのことですが、江戸時代の様子もさらっと思い浮かべながら読むとおもしろいでしょう。
    専門的な点では方程式、π、漢文など小学生では理解が難しいところも少なくなく、中学生で読んでもいいでしょう。

    得意と不得意があっていい、ということもわかるし、まずは「御用第一」などという考え方も為になると思います。

  • 小学校高学年向け
    江戸の数学者・関孝和の伝記風小説

    関孝和の数学への熱意が伝わってくる。
    一生かけて何かを追究し続けていくことは、とても難しいけれど、生き方として素敵だと感じる。

    中国の文献を漢文で読んだり和訳したり、出版冊数が少ないため写本したり、今のような解法が不明だったのでら算木や算盤というものを使い工夫して方程式を解いたり…。昔の人たちは、学ぶために、今の何倍もの労力が必要だったのだなぁ。
    (今でも、学者や研究者と呼ばれる人たちは、惜しみない労力を学問に捧げているのかもしれないが)

    数学の定理や公式に名前がつけられている海外の有名な数学者よりもずっと前に、和算を用いて同じものを発見していたなんて驚きだ。
    和算といえば、小学校の算数で習う植木算、つるかめ算、旅人算などが有名ですが、もっと詳しく知りたくなった。

  • 和算
    ゴメンなさい。児童書だと思ってなめてました。
    奥深く難しいです。

  • 2017/11/13

    289.1||セ (4階歴史・地理)

    円周率3.14が、まだ使われていなかった江戸時代。円に魅せられ、その謎を解明しようとした数学者関孝和。円周率の計算や、筆算による計算の発明など、数々の偉業を残し、日本独自の数学・和算を、世界と競えるレベルにまで押し上げた関孝和の、少年時代からの物語。
    和算の魅力に触れてみませんか!!

  •  201年の青少年読書感想文全国コンクールの中学生の課題図書にもなっていた本。
     関孝和が、日本独自の数学、和算にのめり込み、人生のなかで円周率の正確な値を求めようと謎に挑んだ人生。
     武家の次男坊に生まれたが、江戸時代の数学書「塵劫記」をきっかけに武芸よりも数学に興味を持った孝和。難しい問題が解けたときの喜びを味わっている。

     和算を高め、西洋の数学にも引けをとらない和算の発展に貢献した。
     ともに謎に挑んだライバルや、それを支えた人。数学に傾倒していくことを、良しと思っていなかった兄。

     そんな、侍としてははみ出しものの孝和が、無限数である円周率に魅せられた。その当時は、およそ3.16と言われていたが、それに疑問を持ち、様々な数学の書物にあたり、自分でも計算の方法を研究したりした。
     関孝和の著した「微発算法」や弟子たちの残した書物などで、彼らの和算が世界のなかでもとりわけ優れているものだと言われている。

     本を読む限り、何よりも数学が好きで、ずっと数学を続けてきた方である。
     好きこそ物の上手なれとはいうが、現代まで、その名が伝えられているというのはすごい。
    、中学生の課題図書ですが慣れた子なら小学校高学年でも読めそうです。

  • 伝記的創作物語。
    江戸時代の数学者関孝和をモデルにした物語。
    武士の次男として生まれた孝和は、武術や儒学は苦手だが数学は得意で、柴村塾へ通うのを楽しみにしていた。当時の数学は中国から伝わった学問を中心にした和算であった。そこでは円周率を3で計算するようにとなっているが何故かということは書かれていない。和孝はその謎を解くために江戸から大阪へ渡り勉強に励む。
    ところが家の都合のため勉強半ばで江戸へ帰らなくてはならなくなる。仕事としてのお役目に励みながらも孝和は円周率の謎に挑み続ける。教えられたことをそのまま覚えるのではなく何故かと考えることが大切ということがテーマ。
    数学が物語の中心なので説明的な文章が多く、すんなりストーリーに入れないことがある。江戸時代という背景のため、家のために思うように生きられないことが当たり前のように書かれていて、子どもに受入れられるか少し気になった。

  • 青少年読書感想文全国コンクール中学校の部の課題図書。

    数学が苦手で、とにかく計算ができません。
    だけど数学をはじめとした、理系のノンフィクションは好きなんです。

    和算といえば関孝和。
    そのくらいしか知りませんでしたが、実はそのくらいしか知られていないのだそうです。
    彼は幕府の役人でしたが、家を継いだ養子が不祥事を起こしてお家断絶になってしまったため、彼の遺した資料なども亡くなったのだそうで。

    名前を残そうなんて全然考えていなかった孝和は、その業績もほとんど弟子が出版したくらいでしたが、とにかくすごい!
    ゼロの概念がまだない江戸時代、縦書き漢数字で方程式という方法を考え出す。
    西洋数学より200年も早い数学的発見がある。

    算盤、天元術、算木・算盤。
    電卓もパソコンもない時代に、円に内接する正多角形の周の長さを計算することによって円周率を導き出そうとする。
    正三万二七六八角形の周の長さ…。

    なんでここまでやるのか。
    ただ数学が好きで、真理を知りたかっただけ。

    江戸時代の数学は義務教育でもなんでもないので、本当に好きな人たちが、時に頭を寄せ合って、時にひとりで解けないと言われる問題の解法を考える。
    こういう数学者たちのおかげで、明治になって西洋の数学が入ってきたときも、難なく理解できたのだそうだ。

    西洋数学を知らないはずの関孝和が、なぜ西洋の数学者とおなじように、数学の一般的な法則や真理を追究できたのか。
    その謎は今も、調査研究されている。

    それにしても内容はともあれ、この本の体裁は、本当に中学生向きでいいのでしょうか?
    小学生でも読めると思うけどなあ。

  • 中学生向け江戸の科学者歴史読み物。
    『天と地を測った男』と同じシリーズの関孝和版。

    伊能忠敬ほどドラマティックでもないし、難しい計算を文章だけで説明されても分かりにくいのだが、なかなか面白かった。
    残念なのは、関家が断絶されたせいで資料がほとんど残っていないこと。なのでこの本は鳴海氏の創作である。
    最後の方がざっくりした感じでまとめられているのが本当にもったいない。
    和算が西洋数学に先んじていたこと、江戸の人々が数学に親しんでいたことなど、もっと広く知られると良いのにな、と思う。

  • 好きならどんな難題も解ける。
    円周率の不思議に生涯をかけて取り組み、解を得る。

    香奈の孝和に向けた言葉が印象的。
    「数学の世界というのは、自分で自分の道を、
      自由な発想で切りひらいていける」


    出版される書物の題名が難しい。
    登場人物も多い。
    円周率を解いていく話がメインだけど、
    最後の1,2ページに自然数とその約数など、
    ベルヌーイ数につながる発見したことを
    簡単にまとめちゃってる。
    この辺は読後にひっかかった。

  • 数学者関孝和については、『天地明察』で得た知識のみ。こちらは小説ではなく、伝記として書かれている。理解が深まりました(読書感想文課題図書ですからね)。数学に対する熱意が十分よく伝わり『天地明察』以上に、数学者としての偉大さを感じました。新たな資料が出て、より詳しいことをわかりやすく書いて欲しいなあ。

  • 江戸時代の天才数学者・関孝和の伝記小説。
    関孝和は1708年に没しているが、その生涯はあまり知られていない。その業績が認められたのも死後200年以上たった明治時代、西洋数学が入ってきた時です。
    それまで日本では、中国をルーツとする和算(日本の数学)が学ばれていた。漢文の縦書きで数学を考えていた時代。西洋数学を知らないはずの関孝和は、数学の法則や真理といったものを追求していき、当時、世界で一番進んでいた西洋数学にも先んじるほどの研究をした。
    けれど、孝和自身の記録はほとんど残っておらず、徳川幕府や甲府藩の公式記録には、普通の侍としての仕事をこなしてきたことしかわかっていない。今で言う、ごく普通のサラリーマン(いや、公務員?)だったのだ。


    ということでこの物語。著者の想像によるところも多いとは思うけど、身長も低い、声が高い、漢文も武術も苦手だけど数学だけは好きな孝和が、成長してゆく姿がいい。思うようにならない仕事、恋愛、数学の勉強。数学に集中して没頭したい気持ちはあるけど、それでも、御用(仕事)をきちんとこなして、家族とともに生きていく選択をした孝和。

  • 実在した江戸時代の数学者関孝和の青春時代から亡くなるまでの物語。論語や剣術が苦手で、背も低くいくつもコンプレックがあるが、数学が大好きなにで、師のお嬢さんの香奈さんの助けもあって、数学の勉強に邁進する。香奈とお互いに愛情を感じているようだが、結ばれない。しかし数学を愛するもの同士、その後も友情という絆で繋がっている。
    小学生の時になぜ円の面積は、この公式で出せるのか習っただろうが、公式だけで意味を忘れている人も多いだろう。読めば納得します。それから円周率を計算するのがこんなに大変だったとは、驚きです。数学に関しては難しいところもありますが、サクサクと読めます。
    今年の中学生の読書感想文課題図書。

  • 純粋な好奇心が学問の発展にいかに貢献しているか。学生時代に数学に苦しめられた人間からすると、この「わかるまで考え抜く」という姿勢本当にすごいなと思う。自分も理屈を理解して問題を解きたかったけど、どうしてもわからなくて苦戦していたら、数学の先生に「とりあえず先に公式を覚えなさい。理屈は後からわかってくるから」と言われた。そうして問題は解けるようになったけど、結局理屈はよくわからないままだった。所詮受験勉強のためだったので、突き詰めて考えるのをやめてしまったのだ。
    数学の好きな人はよく「答えが一つで明快だから」というけど、文系人間としては「そもそも答えが一つしかないなんて面白くないんじゃい」と言いたくなる。
    そんな数学嫌いの私でも読める、親切な本でした。子どもの頃数学を勉強していて一番の疑問が、「この知識を日常で使うことあるのか?」だったのだけど、自分では直接計算していなくてもいろいろなところでその恩恵に預かっているのだなと、大人になった今では理解できる。

  • 天地明察で関孝和に興味を持ったので読んでみた。
    関孝和は、当時1番数学研究が進んでいた西洋に先んじて、西洋で色々な解法が発明される前にその方法を考えついていたすごい数学者なんだ…ということが分かった。
    数学アレルギーすぎて、どこがどういう理論かとか分からないままぬるっと読んでしまったけど、面白かった。
    常に思考を続ける姿勢が格好いい。
    「御用第一」でやるべきことを全力でやったからこそ数学も大成したのだなぁと思った。

  • 僕も数学が好きだけどたかかずほど熱心に打ち込めるのはすごいなと思った。
    ある難しい問題にすぐ諦めてしまうけどたかかずは諦めず政治のこともやって答えを出していたので頭がいいなと思った

  • 図書館で。
    わかりやすくて、面白かったです。
    関ってカンって読むんじゃなかったんだ~

    それにしてもアラビア数字ってやっぱりすごい。わかりやすいし、簡潔だし、全世界に広がったのわかるなぁという感じ。
    算盤も昔のコンピューターみたいなもんだったんだろうなぁなんて思いました。

  • 7月22日 円周率近似値の日 にちなんで選書

    ヨーロッパでは7月22日を22/7のように表記し、これを分数(7分の22)と見なすと、アルキメデスが求めた円周率の近似値となることから。

  • 2018.6.8

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著者プロフィール

鳴海 風(ナルミ フウ):1953年、新潟県生まれ。東北大学大学院、愛知工業大学大学院、名古屋商科大学大学院それぞれで工学修士、博士(経営情報科学)、MBAを取得。1992年『円周率を計算した男』で第十六
回歴史文学賞。2006年日本数学会出版賞。『円周率の謎を追う 江戸の天才数学者・関孝和の挑戦』(くもん出版)が第六十三回青少年読書感想文全国コンクール中学校の部課題図書。主な著書に『算聖伝 関孝和の生涯』(新人物往来社)、『江戸の天才数学者』(新潮社)、『美しき魔方陣』(小学館)、『ひらけ蘭学のとびら』(岩崎書店)などがある。

「2022年 『遊歴算家・山口和「奥の細道」をゆく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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