世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑

著者 :
  • 皓星社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774406022

作品紹介・あらすじ

世の中には、いろんな人がいるなあ!

海女、牛飼い、落語家、プロ野球の監督、オリンピック選手……
88人の達人たちの素顔に、フムフム!ニヤニヤ!してみませんか?

スタッズ・ターケル著『仕事!』に憧れてインタビュアーになった著者が、あふれる好奇心で達人たちを突撃取材!
88人の達人たちに会って88回キュンとした話を、ノンキな絵と文でおおくりします!

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 達人たちの言葉 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「何万もの言葉を拾い集めて気づいたのは、
まちがっている言葉なんてないということです。
どの言葉も望まれて生まれてきた」
――辞書編纂者

「私の仕事は、ものの延命措置です。
ゴミになるか商品になるかギリギリの中古品を拾ってきて、誰かに売る。
買ってもらえれば、とりあえず延命できる......」
――古書店主

「クレジットカードなんてただのプラスチックや。
いざというときに、なんの役にも立たん。
人の上に立つもんは現金をもたにゃ」
―― 土建業の親方

「あるとき、リュックの容量は決まってる、と思ったんです。
何かを捨てないと、新しいものは入らない。
本当にプロになりたいなら、はじめにバイトを辞めてみよう、と決断した」
――ロッククライマー


自分の持ち場を丁寧に照らしている達 人に会うと、うっとりする。
腹立たしい こと、嘆かわしいことの多いこの世界だけど、捨てたもんじゃないぜという気 持ちになる。
本書におさめた八十八の 断片は、そのささやかな記録である。
(「あとがき」より)

感想・レビュー・書評

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  • いろんな職業の達人に話を聞いている。
    全く知らなかった職業のフムフムと思うようなことがコンパクトにまとめられている。
    いくつか気になったものを以下にあげる。

    海女…ここで生まれたかとついてきた人以外なれない。生命を預ける仕事だから。

    工事現場監督…はいだけ言ってやらないやつには、絶対に反論できない先輩や仲間にあなたから言っといてと頼むこと。

    木こり…すごくきつくて毎日やめたいと思ってたのに無能すぎてやめられなかった。
    自分しか気づかないレベルで進化していくのがよかった。そうして数年後一人前になっていた。

    インタビュアー…インタビューの前に自己暗示。私はこれから会う人が大好きだ。抱きつきたいくらいだと本気で考えてから会うとうまくいく。

    塗装工…下積み期間が長くても、達人になれたのは、親方に「失敗したら一つ前に戻ればいい」と言われたから、全部がダメなわけじゃない、一つ前の工程まではいけたじゃないか。

    振付師…踊れないのはリズム感がないせいじゃない、うまく踊れなかったら恥ずかしいという自尊心のせい。それをとりはらって。

    漫画雑誌の編集者…自分が出したアイデアは拾ってくれないから、そういえば昔見た映画に…とひとりごとをいう。そしたら使えるかもと乗ってくる。作り話だけどね。

  • 金井真紀さん、ますます好きになってしまう。この本で4冊目、イラストレーターが書くエッセイと思っていたが、この最初の出世作ともいえるこの本を読むと、いかに文才に長けているかがよくわかる。

    この本、色んな仕事に就いた88人の方へのインタビューをもとにした言葉の断片。その切り口のすばらしいこと。思わず短歌の時の刺激にと書き留めました。

    ・自分しか気づかないちょっぴりの進化。・「調子のいいときのあなただったら、こうするでしょうね」・「まちがっている言葉なんてないということです」・硯には浜風が吹く・「うん、あたし、好きだからやってる。それってすごく幸せなことなんだね」・「音と音のあいだの空白の表現が下手でバレちゃう」・湿った南風、とんびの旋回、イライラしないという才能。・「失敗したら、ひとつ前に戻ればいい」・美意識のないやつに、ぜったいおいしいケーキはつくれない」・「邪魔にならない」って調律師にとって最高の褒め言葉だよね・泣きながら人を斬る侍。そのフレーズがすでに物語なのである。才能ってそういうことかぁ。・「字ぃを書くとき、十を目指しちゃだめ。九で寸止めするの。粋になりすぎると、野暮になんだよ」

    色んな職種の方の自然に出たことば・・のほほんとしていながら、おもわずふむふむとしてしまう。

  • インタビュアーの「首尾よくインタビューできる秘訣」をお守りのように大事にしている著者。「インタビューの前に自己暗示をかける。私はこれから会う〇〇さんが大好きだ、目の前にいたら抱きつきたいくらいだ、実際に抱きついちゃったらどうしよう…って本気で考える。そしてから相手に会うとインタビューはきっとうまくいく」…これは、日常生活にも使えるわ!

    ロッククライマーの「リュックの容量は決まっている。何かを捨てないと、新しいものは入らない。」に、ハッとした。

  • だらっとした表紙のイラストそのまま

    肩ひじ張らず素直にフムフムと読みました

    この著者 興味あるなあ

    それにしても職業のなんと多様なことよ

    フムフム
    ふーむふむ

    寝そべって読みました

    ≪ ランダムに 並んだ仕事 ふむふむと ≫

  • 88の職業のスペシャリストにインタビュー。
    見開き2ページの短文で、その人の特徴を切り取る。

    写真のスナップでその人の特徴を表現してしまっているような、素敵なフレーズの表現。

    職業もバラエティーに富んでいる。
    オリンピック選手 など 超メジャーな方から
    コンビニの店長 など 普通に近くに居そうな方々
    映画の背景画家 など 特殊な職人的な職業
    緊縛師 など そんな職業もあるのね
    というものまで、

    色々な職業があり、人それぞれコツや人生哲学があるということ。

  • 素敵な仕事人がいっぱい♫
    勇気、希望が湧いてくる
    私も頑張りたい

  • (2023/04/08読了分)再読。再読。今回目にとまったのは。◆こつこつとお金をためて年に一度上京しこの薄暗い部屋で師に縛ってもらうことで残り三六四日のつらさを乗り越えている人もいる(緊縛師)◆舐められたあと、どうすっか。それが腕の見せどころ。(工事現場監督)◆「何万もの言葉を拾い集めて気づいたのは、まちがっている言葉なんてないということです」「どの言葉も望まれて生まれてきた。だから言葉を差別してはいけないんです」(国語辞書編纂者)◆「演奏技術ではもう津軽の人に負けないです。でも音と音のあいだの空白の表現が下手で津軽の人間じゃないことがバレちゃう」(津軽三味線奏者)◆「どういうとき平常心が失われるのか」結果ふたつの条件が重なったときだということがわかった①欲が出てしまう場面②不安がある場面(ボウリング選手)◆こつこつと年に一度…というのは何かしら自分で自分を救うためのことを人は持っているよね、そうせざるを得ない一面があるよねと思い、工事現場監督の話には激しくうなずき、国語辞書編纂者の言葉への深い思いにうたれ、津軽三味線奏者の空白でバレるの、著者も書いてたけど本当になんて世界だ。犬はフェイントに引っかからない。てイラストが壮絶にキュートでした。◆この本を書こうと思うきっかけになったというスタッズ・ターケル「仕事!」(1983年刊)も手を出したいと思ったが、ハードカバーで700頁超かあ…。(2016/03/21読了分)音羽館で見かけて。各界の達人にインタビューしたもの。相手の名前は明かされないので、わからない人は本当にわからないけれど、その言葉には重みがある。「スポーツをやってていいのは、二度死ねること」と青年は言った。 競技人生が終わる時が一度目の死。そのあと始まる二度目の人生は「一度死を経験した者として生きられると思う」(オリンピック選手)/「仲間は大事だ。それもほんと。でも。大人になったら、抜け駆けしてもいいんだよナ」(お笑い芸人)/「歌人の条件はまず、ナルシストであること。そうして同時に、嘆き人であること。その両方がないと歌は詠めない。ほら、晶子なんかもそうでしょう」(歌人)/子供のころ架空の天気予想図を書いていた気象予報士。架空の映画館の看守をしていたディレクター。架空の時刻表をつくっていた乗り物雑誌記者。/「調子がいいときのあなただったら、こうするでしょうね」(キャディー)/「私の仕事はものの延命措置です。ゴミになるか商品になるかギリギリの中古品を拾ってきて、誰かに売る。買ってもらえれば、とりあえず延命できる....。」(古書店主)/「決めてることはいっこだけ。それっぽいことをしないってことです」(出版社の社長)/「顔を見たら、有罪か無罪かわかるようになっちゃいましてね」(法廷画家)/「そういえば...むかし見た映画に...こういうシーンがあったなぁ…」ってひとりごとをいうの。「あ、それ使えるかも」と乗ってくる(漫画雑誌の編集者)/「字ぃ書くとき、十を目指しちゃだめ。九で寸止めすんの。粋になりすぎると、野暮になんだよ」(寄席文字書家)

  • ゆるい感じで展開されているけれど、一個一個は良い事書いてある感じの本。気楽に読めるから本が苦手な人におすすめかも。

  • 88人の職業人にインタビューしたもの。
    これは癒される。個人個人のこういうものが積み重なって世界はまわっているんだなあ。

    コンビニ店長さんのくちびるをみる話が好き。

  • 著者自らが,88の達人たちの仕事の世界を取材し,絵と文で紹介します。達人たちのプロフェッショナルで,奮闘する姿に,驚いたり,感心したり,クスッと笑えます。まずは気になる仕事のページから,フムフムとお楽しみください!

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著者プロフィール

1974年千葉県生まれ。文筆家・イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を任務とする。著書に『はたらく動物と』(ころから)、『パリのすてきなおじさん』(柏書房)、『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)、『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)、『日本に住んでる世界のひと』(大和書房)、『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界ことわざ紀行』(岩波書店)など。難民・移民フェス実行委員。

「2024年 『それはわたしが外国人だから?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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