交渉の達人 ──ハーバード流を学ぶ (フェニックスシリーズ)

制作 : Deepak Malhotra 
  • パンローリング
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784775941638

感想・レビュー・書評

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  • (英語の本が)授業で教科書に指定されていたので、日本語で読んでみました。
    著者はハーバードのMBAの先生。

    仕事でバリバリ交渉していた時のことを思い出しながら、読みました。

    結構、「交渉」については、一通りマスターしたという実感があったのですが、
    その何となくの「感覚」をこの本はきちんと「言語化」してくれていました。
    その言語化が一番有り難かったです。

    逆に言うと、交渉が苦手な人やあまり経験のない人が、ざっと交渉の全体感を俯瞰するにはとても良い本だと思います。
    分量もそこそこあるので、決してサラサラ読めるような本ではないですが、チャレンジしがいのある本だと思います。

  • 交渉について改めて学び直すには良書。

  • 交渉というテーマで勉強したことが無かったので購入。ハーバードビジネススクールの講座をベースに、体系立ってまとめている。章構成は、基礎理論3章、心理的な話が3章、実際はそんな理論的にはいかない話が7章。交渉は人と人とのやり取りなので、この章構成は、理論先行では無く、現実踏まえて交渉というテーマ全体を扱っていると思った。

    第I部、交渉のツールキット
    1.交渉において価値を要求する
    1)自分のBANTNA(Best alternative to a negotiated agreement)を見極める
     交渉失敗時の代替策・行動(の中で最善のもの)を決めることで、心理的安全を確保して交渉に望めるようにする。これが無いと、プレッシャーにより、正常な判断・思考が行えない。
     単なるリスクと対策の羅列では無い、交渉失敗時に自分に降りかかる現実。
     何もしない、何かが起こるまで待つ、といったものもあり得る。
    2)自分の留保価値を見極める(交渉から離れる限界)
     代替案の効果やコストから、交渉撤退の判断基準を持つ。
    3)相手のBANTNAを見極める
    4)相手の留保価値を計算する
    5)ZOPA(Zone of possible agreement)を計算する
     相手とこちらの留保価値の区間、この間であれば両当事者は受け入れられる。
     これらは事前に知り得る情報が元になっている。交渉中に知った情報でアップデートする、交渉後に評価することが必要。

    ・交渉最初に自分で条件提示をするべきか: 最初に提示された条件は、アンカーと言われ、交渉相手の関心や判断の拠り所となる。アンカーの影響力の大きさから、自分から強気の条件を提示すべき、ただし十分に相手の留保価値を知っている場合に限る。大幅に逸脱すると破綻しかねないし、本来得られる価値を得られなくなる可能性がある。

    ・相手が最初に条件を提示した場合の対応: 自分がアンカーの影響を受ける、意識せず自分の戦略を見直ししかねない。そのため、振り回されないようにする。
     - アンカーを無視して応答する(隔たりありますね、と返す)
     - 具体的で妥当な根拠が提示されているか自問する(他とも取引ある、他社とも話してる、だからx円、は根拠では無い。この段階の戦略見直しは早計)
     - 相手のアンカーについてじっくり議論するのを避ける(議論するほどアンカーが強まる。軽く追加情報入手の可能性を計り、次の話題に切り替える)
     - 対案でアンカー(影響力)を打ち消し、次に条件緩和を提案する
     - 相手の面目を潰さず、条件を引き下げる時間的猶予を与える

    ・最初の条件設定の程度
     - ZOPAの上限より上の条件
     - 正当性を示せる程度(なお、双方が極端な要求を突き付け合うのが当たり前・期待される交渉もある)
     - 高めだが現実的な目標を設定
     - 相手のニーズや関係の機微を見極める

    ・相手をどれだけ攻められるか
     - 事前にあらゆる情報源にあたる
     - 事前に自分の仮定と事実を区別する
     - 交渉のはじめの段階で、自分の仮定の正否を計る質問をする
     - 間接的な質問で相手の留保価値を計る
     - 状況によって、条件付き契約(Contingency contract)で、嘘や不透明性から守ることを検討する

    ・効果的な駆け引き(haggling):
     - (自分のではなく)相手のBANTNAや留保価値を常に意識する
     - 譲歩したら、見返りを要求する(互恵の原則を活用する(reciprocity))
     - 沈黙に動じない
     - 自分が譲歩したことを明確に伝える
     - 十分な見返りを要求する(xx出来るが大きな犠牲を払うので、そちらも折れて)
     - 条件付きで譲歩する(xしたら、xする)、多用禁
     - 交渉が進むにつれて縮小する譲歩幅から留保価値への距離を計る、ただし逆手に取られる場合もある

    ・相手の満足感に働きかける: 交渉結果への満足感は、結果そのものでは無く、上手くできたと*思った*か。
     - 最初の提案が魅力的な条件であっても、すぐに承諾しない(最初の条件ですぐに承諾されると、満足度が下がる)
     - さらに譲歩も求める
     - 魅力的な提案には、さらにお返しをする

    2.交渉において価値を創造する
     交渉の論点が一つの場合はゼロサムだが、複数の場合はゼロサムでは無い可能性がある。逆に言うと、価値創造のために、論点を増やせないか考え続けることが重要。(例えば、交渉者それぞれの重要なものは手に入れ、それほどでは無いものは受け入れる など)
     複数の論点に対して、交渉者にとっての価値の非均等性から、それぞれの要望が叶うよう取引することをログローリングという。
     ビジネスでは価格のみが論点となることが多いため、次の論点を加えることを検討する。 納期・支払条件・品質・契約期間・再交渉権規定・仲裁条項・独占契約・サービスサポートのレベル・保証・将来の取引。
     論点追加でひとりも不利になることなく、最低でも一人が有利になるように取引を変更することをパレート改善(的?)という。その後、一方が不利になることなく、他方が有利になることが無くなるまで、パレート改善を進め、テーブル上に論点が残らない(失われる価値がない)状態になることを目指すべきで、この状態をパレート効率(的?)という。本書で書かれてないが、この全体最適な状態と、個々人の最適(ナッシュ均衡)は必ずしも一致しないことも気をつけるほうがいい気がした。パレート効率的な結果に到達したか確認するには、相手の利害や優先事項が分かっているか自問する。
     見解の相違がある場合、まずはお互いに根拠を検証し合う、お互いが信頼し中立な第三者に検証を依頼するなど、どちらが正しいか見極めるのが基本。次に折衷案など妥協案の模索(簡単に出来ることはメリットだが、望ましくはない)。別の解決策として、条件付き契約の交渉がある。(成功したらインセンティブ、など) 結果としての価値は創造して無いが、少なくとも予想価値は創造している。また、お互いの条件に大きな隔たりがあり、これを解決しない限り取引が成立しない場合、価値が大きくなる。条件付き契約の留意点は、相手より多くの情報を持つ場合に限る、不確実な要因が解消されたことが客観な尺度で測れる、条件に影響を行使出来るのは誰か。

    ・価値創造の準備戦略
     1.自分の複数の利害を把握する(既存の論点、最大最小にとらわれない)
     2.採点システムを作る(表、異なる論点に共通の尺度、重み付け、点数か金額)
     3.包括的な留保価値を計算(論点ごとの留保価値に縛られないよう気を付けるよ、安易なKO条件設定に注意する方が良いと思った)
     4.相手の複数の利害を把握する

    ・価値創造の実行戦略
     - 交渉が始まったら価値創造は忘れがちなので、常に意識する
     - 複数の論点を同時に交渉する(一つ一つ交渉しても、それぞれの結果の最終合意はしない)
     - まず、各論点について、双方の見方や望ましい結果を示すことからはじめる
     - 次に、各論点のうちどれを重視するか比較する
     - その上で、条件を提示する際は、包括的な提案をする
     - あらゆる種類の違いを利用して価値を創造する(互いの優先事項が異なる場合はログローリング、将来の予想が違う場合は条件付き契約、必要な時期の違いがある場合は銀行にお金を預ける例)

    ・価値創造のための交渉後の戦略
     交渉し契約がまとまったら、さらなるパレート改善を検討する。契約は、お互いに価値創造が出来ることを示す、新たなBANTNAとなり、お互いにプレッシャーから開放され情報提供しやすい状態になる。ただし、契約を覆そうとする、最後の譲歩を引き出そうとしているなどの誤解を与えないようにする必要がある。

    3.調査交渉術
    ・調査交渉術の7つの原則
     - 相手が何を求めるかだけでなく、なぜ求めるかを理解する
     - 各交渉者の直接的な要求では無く、背後の利害関係を理解し調整する
      事例の2000年米国大統領選の話は興味深い。普通は左派ゴアとネーダーの票の取り合いとなるが、ゴアの過半数を超える州が十分あること、ネーダーの全米で5%の投票率獲得、と両立可能な条件を見出し、票取り引きを行うサイトが立ち上がったらしい。
     - 考えにくい相手と共同戦線を張る
      相手を敵として見ない。2004年の大統領選では、ネーダーに敵であるはずの共和党から大口寄付が集まった。民主党ケリーが手強いから。
     - 要求をチャンスと理解する
      相手から要求を突きつけられたとき、どうしたら受け入れなくて済むか考えるだけではなく、この要求の背後のニーズや利害を読む
     - 何事も相手の問題として片付けない
      相手の課題を理解し解決することで、価値を生み出す可能性がある
     - 自分の提案が拒否されてもそこで終わらない
      拒否された理由を確認する。ZOPAが無ければ、仕方がないが、そうでない場合はお互いに不幸。
     - 売り込むと、交渉する、の違いを理解する
      交渉では、お互いの利害を満足するだけでなく、大幅な譲歩も無いことを目指せる

    ・手の内を見せない交渉者から情報を引き出す5つの戦略(順番がある)
     1.信頼を構築し、情報を共有する
      相手の言葉を理解し相手の言葉で話す、絆を強化する、交渉していない時に信頼を獲得する
     2.質問する、意外とか疑わしいと思ったときは特に
      そもそも質問しないと情報は得られない。警戒されにくい聞き方もある
     3.情報を、一部を渡す
      予め開示する情報は決めておく。留保価値は初めは言わない
     4.複数の論点を同時に交渉する
      相手がどれを優先するかはわかる
     5.複数の提案を同時に行う

    第II部、交渉の心理学
    4.認知のバイアス
    行動意思決定論より、4つの認知バイアスを理解すべき。
     - パイの大きさは一定である(Fixed pie bias)
      ゼロサム、片方が得るには他方が譲歩必要、などのバイアス
     - 目立つ情報に飛びつく(vividness bias)
      価格やコストなど。対応するには、採点システムを作る、情報と影響力を分離する。
     - 不合理なエスカレーション
      最初の戦略のまずさや間違いは認めづらい、交渉相手との競争には勝ちたい など。対応するには、予め出口戦略を持つ、他人に指摘してもらう
     - フレーミングの影響
      予想価値が同じでも言い方次第で変わる(救われる命、失われる命)。利益を考えるときはリスクを避ける、損失を考えるときはいちかばちかにかける。対応するには、複数の自分の参照点を持ち評価する(現状、目標、予想、恐れる結果 など)

    5.心理的バイアス
    ・相反する動機の問題
     こうしたい自分、こうすべき自分、のどちらも平等に評価する
    ・自己中心主義
     自分自身を正当化しようとする。自分の判断に影響があるものは過小評価、他は過大評価する。対応するには、自分がどちらの立場になるか不明な時を想像する。
    ・自信過剰、自分の運命への不合理な楽観論、優位性の幻想
    ・後悔の回避
     自分の決断で公開する可能性を避けようとする

     

    ここまでで2部5章、41%

  • 交渉とは、
    勝つか?負けるか?と思っていましたが、
    そうでないことに気付かされました。

    他者と話すに当たり、
    良い視点を手に入れることができました。

    全体を通じて例文の記載もあり、
    理解し易い構成になっていました。

    例文として記載されていた
    キューバ危機の話しは、
    とても印象的でした。

  • 全般を通じてストーリーテリング形式で進みます。
    3部構成で、第一部は「交渉のツールキット」として、交渉で価値を創造するための基本的な概念であるBATNA(Best Alternative to a negotiated agreement 現在の交渉が袋小路に陥った場合の最善の代替策)とZOPA(zone of possible agreement 合意可能領域)、アンカー、論点を増やす事で価値を創造する、などが示される。
    第二部では、「交渉の心理学」、第三部では、「実社会での交渉」と続く。この本は、内容もさることながら装丁と言うか1ページの文字数が非常に多い。

    本の中では、ケースごとと言うか、「戦略」と太字で書かれているテクニックが沢山ある。これらを常に頭に入れて、使いこなすのは相当気をつけていないと難しそうだが、本当に大事な交渉の前に流し読みをするのは悪くないかも。箇条書きにせずにストーリーテリング形式にしているのも何度も読んで頭に自分のフレームワークを作らないと達人には慣れないからなのかなと。

    個人的には、当たり前だが、事前の準備をどれくらい綿密にしておけるか、特に、自分の手札(オプション)を幾つ用意しておけるかが肝かなとも思ったし、交渉の時に、納得してしまうのでは無く、もう一歩相手の心に踏み込む努力が必要だなとも。


  • ネゴをできる能力は、生きる上で大事なスキルの一つ。
    人や物事を操るスキルといっても過言ではない。

  • 価値を多方面から見極める
    相手の問題は自分の問題になる、という意識を持つ
    まとまらなかったときの現実

  • 東2法経図・6F開架:361.3A/Ma39k//K

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