完全なる投資家の頭の中──マンガーとバフェットの議事録 (ウィザードブックシリーズ)

  • パンローリング
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784775972021

感想・レビュー・書評

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  • マンガーが彼の憧れのベンジャミン・フランクリンをまねたいと思っているように、私たちもマンガーの資質や特性や体系や人生に対する取り組み

    人ができる最高のことは、ほかの人がより多くを知る手助けをすることです。 ――チャーリー・マンガー(二〇一〇年のバークシャー・ハサウェイ株主総会)  

    普通の投資家がマーケット指標を上回るパフォーマンスを上げるための最高の方法は、ベンジャミン・グレアムが考案し、マンガーが実践しているバリュー投資のシステムだと思う。

     マンガーの投資に関する考えや手法をよりよく理解するために、私は三つの要素――原則、不可欠な資質、変数――から成る枠組みを考えた。ただ、この三部制の枠組みは、マンガーの投資に関する考えや手法を理解するための唯一のモデルではない。ほかにも、彼を理解するための有益な方法はあると思う。私がこの枠組みを考えたもうひとつの理由は、投資に使えるチェックリストを作るためだ。マンガーは、人生の課題に立ち向かうときに、チェックリストの利用を強く支持している。難題は、チェックリストを使うことで解決すると信じています。まずは、見込みがある答えと見込みのない答えをすべて書き出します。そうしなければ、大事なことをつい忘れてしまうからです。 ――チャーリー・マンガー(二〇〇七年のウェスコ株主総会)

    一.株は会社の一部分を所有しているつもりで保有する。
    二.安全域を確保するために、本質的価値よりもかなり安く買う。
    三.躁鬱病患者のミスター・マーケットを、主人ではなく、しもべとする。
    四.合理的に、客観的に、個人的な感情を排する。  

    成功している投資家は「ずっと学び続ける」ことをやめないと言っている。
    学び続ける必要があるということは、投資家が常に本を読み、考え続けていなければならないということでもある。

    ベベリンは、「複雑な問題を単純にするには、問題を部分ごとに分解したうえで、全体として見る」ことを勧めている。物事をできるだけ単純に保ち、やりすぎないことは、常にマンガーの講演のテーマになっている。彼は、バフェットと共同執筆した株主への手紙のなかで、「単純にすれば、自分のしていることがより良く理解できるようになり、それがパフォーマンスを向上させることになります」(ジャネット・ロウ著『投資参謀マンガー――世界一の投資家バフェットを陰で支えた男』[パンローリング])と書いている。 

    ブル相場でマーケットを下回ることは、この投資スタイルの重要な部分なのである。ブル相場の上げ幅の一部を放棄することで、マーケットが横ばいや下落しているときにマーケットを上回るパフォーマンスを上げることができるからだ。

    私たちのような投資家は、賢く立ち回ろうとするよりも、愚かなことをしないように常に気をつけることで、長期的に見れば驚くほどの優位を得ています。「河童の川流れ」ということわざには知恵が込められているようです。 ――チャーリー・マンガー(一九八九年のウェスコ株主総会)

    投資は野球と違って見逃しの三振はないのだから、毎回スイングする必要はない。しかし、明らかに大きな利益が狙えるチャンスがあれば、そのときは大きく賭けろとも言っている。

    成功している投資家……は、そのプロセスに関心を持っている。それは大工でも、園芸師でも、育児中の親でも同じことだ。もし資金管理を楽しめないならば、つまらない仕事の結果は決まっている。残念なことに、ほとんどの人が金融の分野に虫歯治療と同じくらいの楽しみしか見いだしていない。

    投資は正味現在価値がプラスになる活動なのである(潜在的な期待利益の正味現在価値から潜在的な期待損失の正味現在価値を引いた値がプラスになる)。一方、ギャンブルは、現時点で消費して、その活動の長期的な正味現在価値はマイナスになる。ただ、自分では投資をしているつもりで、実際にはギャンブルになっている人もかなりいる。  

    マンガーは、会社を買うときはまず足元、つまり事業のファンダメンタルズを調べ、そこからボトムアップで調べるべきだと考えている。

    優秀なグレアム式バリュー投資家は、優れた探偵に似ている。彼らは常に、過去に起こったことと、現在起こっていること(こちらのほうが大事)のヒントをボトムアップで探している。マンガーのようなグレアム式バリュー投資家は、予測や予想に基づいて将来のキャッシュフローの変化を予想することはない。

    第一の原則を理解するカギは、株とその会社のファンダメンタルズを切り離すことはできないというマンガーの考えを理解することにある。
    バフェットは、次のように言っている。「見通しや予想は何の役にも立ちません。これらが正確に見えるのは幻想です。予想は詳細であるほど疑うべきです。私たちは予想には目もくれませんが、実績は関心をもって深く掘り下げます。もし実績が悪くて、素晴らしい未来があるという会社に投資するチャンスがあったとしても、私たちは見送ります」

    安全域とは何なのだろうか。グレアムはこれを「価格と、評価額(または本質的価格)の有意な差」
    複雑で、予想がつかず、急速に変化している世界では、証券を本質的価値よりも十分安く買って人為的なミスや、不運や、極端なボラティリティに耐えられるようにすることで、安全域は手に入る。 ――セス・クラーマン(『マージン・オブ・セーフティー』)  
    マンガーも、同じ考えだ。「投資の第一のルールは、大きな損をしないこと、第二のルールは、第一のルールを忘れないこと」なのである。  

    グレアム式バリュー投資システムにおいて、リスク(損失の可能性)は資産を買う価格によって決まる。資産を高く買えば、資本を失うリスクは高くなる。

    マンガーは投資家として成功するために最も重要な資質は合理的な思考と判断だと、長年繰り返し言ってきた。

    ロバート・ハグストロームは、智慧に関して書いた『インベスティング――ザ・ラスト・リベラル・アート』( Investing : The Last Liberal Art)という素晴らしい本のなかで、「さまざまな知識分野が絡み合うと、その過程でそれぞれが強力になる。思慮深い人は、それぞれの知識分野からカギとなる重要なメンタルモデルを引き出し、それらを組み合わせ、すべてが融合した理解を生み出すことができる。幅広い見方をするための研鑽を積んでいけば、智慧は自然に身についていく」

    生物学や、心理学、化学、物理学、歴史学、哲学、工学などの分野を理解することで、より良い投資家になることができるのだ。  マンガーはこう言っている。

    長い人生でも、継続的な学び以上に役立ったことはありません。
    ほかの人よりも間違いを減らすことができるし、もし犯しても、みんなよりも速く修正できるようになります。
    マンガーもバフェットも間違いを犯した理由を理解し、その経験から学びたいと思っている。
    間違いには二つのタイプがあります。 ①何もしないこと(バフェットはこれを「指しゃぶり」と呼んでいます)、 ②たくさん買うべきところを少ししか買わないこと――です。

    経験とは、人生で何回かしかないチャンスが訪れたときに、単純で合理的な行動を素早く大胆にとるべきだという長年培ってきた考えを確認するもので、それはたいてい経済的にも人生を劇的に改善してくれます。好奇心を持ち、広い視野で分析するのが好きで、常にチャンスを探し、待ち続ける人のところに、いくつかの大きなチャンスが訪れることは明らかです。そして、もしそのチャンスが極めて有利ならば、過去の慎重さと忍耐によって手に入れた資源を大きく賭けるしかありません。

    一部の投資家は、巧みな説明の裏付けとなる事実が少ないほど、より信憑性が高いと感じてしまうのである。

    人はある程度のストレスを受けるだけなら、実はパフォーマンスが上がる。しかし、ストレスが大きすぎると、ひどい判断を下すようになる。

    人を破滅させる三つとは、薬物と酒とレバレッジです。 ――チャーリー・マンガー

    第 5章  必要不可欠な資質  ロジャー・ローウェンスタインは、ウォーレン・バフェットの伝記のなかで、「バフェットの天才性は、性格、つまり忍耐、規律、合理性の天才であるところが大きい……彼の才能は、だれよりも強い独立心と仕事への集中力と、世界を遮断できることから来ている」と指摘している。

    一.忍耐成功とは、忍耐強く待ち、時が来たら、積極的に行動するということです。 ――チャーリー・マンガー(二〇〇四年のバークシャー株主総会)
    いつでも素晴らしい投資先が見つかればいいのですが、残念ながらそうはいきません。 ――チャーリー・マンガー(二〇〇五年のバークシャー株主総会)


    二.規律私たちには、良い球が来るまで待つという投資の規律があります。もし私がベンチマークで評価され、全額投資しなければならず、常に監視されているような仕事に就くことになれば、きっといやになるでしょう。それでは手足を拘束されているのと同じです。 ――チャーリー・マンガー(二〇〇三年のバークシャー株主総会)
    私たち二人は、ほぼ毎日ただ座って考えるだけの時間をたっぷり確保しています。これはアメリカの会社としては非常に珍しいことです。私たちはただ読み、考えているのです。つまり、ウォーレンと私はほとんどのビジネスマンよりもたくさん読み、考えていますが、彼らほど行動はしていません。 ――チャーリー・マンガー(二〇〇五年のキプリンガー誌)

    知識と謙虚さには強い相関性がある」と的確に言い表している。謙虚さは、コアコンピタンス領域などの概念の核となるもので、自分や他人が主張することに反証がないかを常に探すことでもある。ずぶとさは黒帯級でも、自分の間違いに恥ずかしい思いをすることはある。本当に謙虚な人は、あまり間違いを犯さないものだ。

    人生の成功者として知られた人で、信用して話ができる相手がいないという人には出会ったことがありません。アインシュタイン

    最高の投資家とは、冷静で合理的な気質を持っている人たちなのである。  

    プア・チャーリーズ・アルマナック[ Poor Charlie' s Almanack]』一七三二年)という言葉に加えて、「富への道はマーケットへの道と同じくらい平坦だ。頼りになるのは、勤勉と倹約という二つの言葉だ。時間もお金も無駄にせず、どちらも最大限活用してほしい。勤勉と倹約がなければ何もうまくいかないが、それがあればすべてうまくいく」(ベンジャミン・フランクリン著『フランクリン自伝』)という言葉を残している。

    マンガーとバフェットが会社を評価するときは、まず彼らがオーナー利益と呼んでいる値を見る。オーナー利益は、「純利益 +減価償却費(有形固定資産) +減耗償却費 +償却費(無形固定資産)-設備投資-追加運転資金」と定義することができる。バークシャーでは、オーナー利益を算出するなかで、自己資本利益率を維持するのに必要な設備投資の額を考慮する。

    バフェットは、会社を評価するときは成長力を重視しており、マンガーも同様のことを言っている。

    コアコンピタンス領域の境界線が決まったら、あとはそのなかにとどまる必要がある。この領域のなかで投資をすることが、理論的にロケット工学ほど難しくないことは明らかだが、ほとんどの人はそれを実行できない。投資家の小さな過ちは、巧妙な凄腕セールスマンの話を聞いてしまったときに起こることが多い。これは、知性を測る知能指数とはまったく別の、心の知能指数( E Q)が効いてくるケースだ。

    本当のところはバフェット本人にしか分からない。いずれにしても、彼が純粋なグレアム式手法から距離を置くようになったのにはマンガーの影響があった。シーズ・キャンディースへの投資は、バークシャーが質の高い会社は高くても買うことにした初期の例だった。マンガーとバフェットは、シーズが他社にはない価格力を持つことで、利益を大きく増やすことができることに気がついたのだ。二人はシーズを買ったあと、この会社が定期的に価格を引き上げても顧客が離れていかないことを目の当たりにした。マンガーは、値上げをしても売り上げが大きく下がらないことを「価格支配力」と呼んでいる。かつてバフェットも、「五〇年以上前に、チャーリーが素晴らしい会社を適切な価格で買うほうが、そこそこの会社を素晴らしい価格で買うよりもはるかに良いと教えてくれました」(ウォーレン・バフェット『二〇一二年版株主への手紙』)と語っている。マンガーは、非常に質が高い会社を適正価格で買うことは、グレアム式バリュー投資システムの割安で買うという原則に沿っていると言っているのである。  

    バークシャーでは、本質的価値の算出に使う割引率にアメリカの長期国債(三〇年物)の利率を使っている。しかし、バークシャーがこの普通とは違う方法で計算している理由を十分理解していない人も多い。バフェットはこう説明している。無リスクレートは計算のために便宜上使っているだけです。私たちは最も魅力的な投資先を探しています。どのようなものでも、現在価値を推測するためには、何かの数字が必要です。そして、国債はいつでも購入できます。そこで、これを基準として、……すべての投資チャンスを単純に比較しているのです。

    マンガーの、ほかとは異なるリスクの考え方は、詳しく見ていく価値がある。リスクとは、損失を被る可能性を意味している(価格の変動ではない)。バークシャーは、控えめに評価しても価値がある資産を、リスクのない割引価格で買うことによってリスクに対処している。

    バークシャーでマンガーとバフェットが使っている計算方法は単純だ(計算と聞いて読むのをやめないでほしい)。
    まず、対象の会社の過去と現在の「オーナー利益」を計算する。
    次に、その値と控えめだが妥当な成長率を使って、将来のオーナー利益を計算する。
    そして、その値を三〇年物米国債の利率で割り引いて、現在価値を計算する。バークシャーがこの過程で注目しているのは、一株当たり利益( EPS)ではなく、自己資本利益率( ROE)である。ちなみにマンガーは、経営者が資本配分の判断を下すときは必ず本質的価値について考えるべきだと思っている。また、バークシャーでは価値の判断に株価収益率( PER)の倍率を使わない。

    マンガーは、本質的価値を判断するとき、 EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に関する長い解説や、 GAAP(一般に認められた会計原則)外の「収益」をうのみにはしない。彼は、純粋なフリーキャッシュフローを望んでいる。「現金に溺れる」くらいの状態が良いと思っているのだ。 GAAP外の収益について、マンガーはこう言っている。


  • マンガーにとってフランクリンが師であるように、私にとってもやはりマンガーが師と思わせてくれる本。彼の智慧の束という知的欲求からくる能力と判断能力、ずば抜けた感性と脳のキレはバフェットも一目置く人財。投資家としても経営者としても、そして人間としても尊敬される存在である理由が分かる。そんな内容がこの本には書いてある。

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