- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784776201328
感想・レビュー・書評
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戦場カメラマンである橋田伸介氏が戦場で見たイラク戦争。当時61歳だった橋田氏は、過去に数多くの戦場に実際に足を運んでカメラにおさめたベテランの戦場ジャーナリストである。イラクへ入るために合法、非合法な手をつくす姿、バグダッドでの空爆中も必要以上に恐れることなく戦場をカメラにおさめようとする姿勢には正直、なぜそこまで、と思う反面、このような人の努力によってイラク戦争の情報は日本に届けられていたのかと思ったら頭が下がる思いだった。メディアの裏側のそのまた裏側を見た気分だった。平和ボケしている日本人に対し言われている、命の尊さを知るために「若者を戦場に送ろう」というのは、多くの戦場で凄惨な場面を見て、平和であるにも関わらず、一日80人もの人が自殺するという日本社会の現実を嘆かわしく思っている、橋田氏からの{命を大切にしてほしい}というメッセージであると思った。作中で何度も用いられている、「命なんぞ使うべきときに使わなければ意味がない」「死ぬと思った瞬間、いつも自分はまだ生きられると思う」といった言葉は、その後、イラクで糾弾に倒れるという橋田氏の最期を知っているためか、余計に重みを感じた。
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戦場カメラマンとして活躍していた橋田さんの記録。戦場ルポにありがちな血生臭さや一方的な正義感を振りかざす訳ではなく、何が何でも、どんな手段を使っても戦場最前線へ潜入するぞという戦場カメラマンとしての悲しい性を、橋田さん独特のやわらかさとユーモアに溢れた文章で、まるでエッセイのような感覚で面白おかしく読むことが出来ます。しかし、根底にある人が殺し合いの無意味さを伝ねばという信念はその柔らかい文章の中にも強く感じることが出来るのです。本当に本当に残念なことなのですが、3年前に橋田さんはイラクにて銃弾に倒れました。そのニュースを聞いたときの深い喪失感をいまでも強く覚えています。
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「戦争」と「戦場」をごちゃまぜに論じてはならない。
悲惨で怖い「戦場」に反対するのはバカでもできる。問題は「戦争」(国家と国家の衝突。国際舞台のうえで政治的利害の衝突であり、経済や資源をめぐる争いである。)に反対することなのだ。それはすぐれて政治を語ることに尽きる。
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病院のベッドで読んだ本です。
イラクという国の現実がリアルに浮かぶようでした。
やはり戦争は世界では続いているんですね。
それに気づいていない日本人に、
戦争の一部を垣間見せてくれました。
彼独自の文章表現も飽きさせずに読ませて頂いた作品です。
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面白かった。
ずいぶん前に読んだのだけれど・・・忘れてないって事は。心に残ったってことなんだろうと思ってレビュー書きに来ました。
<<戦場と戦況はちがう。>>
その意味を言葉にして語る人に初めて会った気がしました!!
戦争をヘタに俯瞰しているところが無いのです。
ありそうで、なかなか出会えないんです。こういう表現できる人は。
最近の「戦争」をテレビで見て、それを視聴者の感想できくとき、この橋田さんのいろんな言葉が私の頭に浮かぶ・・・。私にとってそんな本かもしれません。
変な平和主義は無かったです。
だからある意味安心して読めました。
(安心な戦争という意味ではなくて、です;)
橋田さんは亡くなってしまい、その時から橋田さんの戦場カメラマンという肩書きをステレオタイプに聖人化したような評価をする場面を良く見るけど、その表現は違う、決してそうじゃない気がします・・・。
戦場カメラマンとして、とてもしたたかなところもあり。
私はだからこそこの橋田さんの言葉を聞きたかったのかもしれないから。
本人同様、飄々とした文体でこんなに読みやすいとは思わなかったです。 -
最期はイラクで襲撃されて亡くなった、戦場報道の鑑のような人。主張していることはかなり「ゴーマニズム」な気もするけれど、本当に命を賭している人の言葉にはただ敬服を感じるばかり。この人の死を忘れてはいけない。忘れた時は日本が魂を本当に売り飛ばしてしまう気のような気がする。
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イラクで無くなった戦場カメラマン橋田信介氏の遺作。イラクの戦場がリアルに脳裏によぎってきます。
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何を思って戦地に赴いたのかしってください。
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『戦場の悲惨さはどんなに語っても犯してしまった罪の結果でしかない』
≒『「戦争」は、けして地雷を踏む心配などしない連中がソファに座り命令を下して始める政治行為なのだ』
……そしてその命令を下す首謀者をその地位に据えたのは わたしたち 私 であり あなた なのだ ―――という常々の私の考えに響くものなのではないかと思う。 -
今の自分の悩みがちっぽけだな…って思ってしまう。