ずっと「安月給」の人の思考法

著者 :
  • アスコム
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784776207818

作品紹介・あらすじ

「年功序列は悪!」と考えている、「生産性が上がれば、給料も上がる」と期待している、「チャンスはいつまでもある」と思っている、就業規則を読んだことがない、「会社の経費で落ちるか」をいつも気にしている、「人は見かけが9割」を理解していない。いつまでも薄給の「あの人」みたいにならない思考のヒント。

感想・レビュー・書評

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  • この本は最初に、現在の多くの企業の給料は次の日も働けるようなギリギリの生活費を基準にして設計されていることを述べた上で、現在の給料額をアップさせるにはどうすべきかを具体的に13項目の質問を通して述べられています。更に、「安月給の人」の8つの思考法を紹介しています。

    世の中には何となく、能力給・業績給が徐々に広まりつつあるという雰囲気のある中で、キッパリと、現在の日本はいまだに年齢給がベースで、業績の差は給料の差に直接影響してこないと言い切っているのは見事だと思います。そんな現実を見据えた中で、更に給料を上げるにはどうすべきかという視点からこの本は書かれています。

    この本は社会人生活をある程度経験した30歳前後の人が読むのに最適だと思います、長期的な視点から、自分はどうありたいかを問いかけるために参考となる材料が多く含まれています。

    特に、私にとって目からウロコだったのは、資本論で言われるところの「使用価値」と「価値」(p50)を混同していたことでした。価値の大きい(それを達成するために多くの労力、時間を必要とする)仕事をするべきなんですね。使用価値を高めても、価値が小さくなれば給料は上がらないということも納得できました。

    以下は気になったポイントです。

    ・社食を激安にすることで、会社は社員の給料を安く抑えることができる(p1)

    ・成果を出したから給料を上げて欲しいという要求は、筋違い(p6)

    ・個々の従業員が出した成果は、わずか4.1%しかない、すると一番できる人とできない人では、8.2%しか変わらない(p7)

    ・正規雇用者の給料は一般的に、労働者の勤続年数の長さに応じて高まる、同一企業に長く働いている人のほうが給料があがる(p30)

    ・あなたの給料は、あなたの努力や成果で決まっているわけではない(p39)

    ・資本論でいわれる「価値」と「使用価値」は全く異なる意味、使用価値とは、それを使うメリット、それに対して「価値」とは、労力の大きさ=多くの労力がかかっている、それを作るのにどれだけ手間がかかったか、を測る尺度である(p50)

    ・時間をかけて作ったモノは「価値」が大きい(p52)

    ・あなたの給料を決めているのは、あなたの労働力を作るために必要な要素の合計(p65)

    ・給料は、あなたが明日も働くために必要な経費(生活費、経験で形成される基礎力)で決まる(p70、84)

    ・生産効率が高くなるとは、その商品ひとつを作るのにかかる労力が減る、つまり商品の価値が下がること、技術進歩が給料がさがる原因となる(p102,103)

    ・中世でも現代でも同じ、技術進歩は人間の生活を楽にし仕事も楽にするが、同時に労働者を苦しめる(p107)

    ・給料が上がりやすい会社、1)高くても売れるサービスを持っている、2)技術進歩が起こらない業界、3)参入障壁が高い業界(p111)

    ・会社選びとして、客観的かつ普遍性が高いポイントとして、1)社員数が増えている、2)転職者が多い(p136)

    ・学歴でチャンスを失うのは、ある意味「自然なこと」(p159)

    ・会社の経費で落ちるかどうかをいつも気にしていると、自分でお金を投資できなくなる(p161)

    ・給料を上げるうえで最も重要なのは、「労働力の価値を高めること」、自分という労働者をゼロから作り上げるときにできるだけ高いコストがかかるようにすることが最も大切、企業があなたの代わりを連れてこようとすると非常に高くつく(p172)

    ・自主レン=自分の本業に関わる勉強をつねに行うこと(p175)

    ・「こうなりたい」という目標(長期目標)だけでなく、日々の行動目標を設定する(p178)

    ・もし将来はこうなりたいという想いがあるなら、それに達成するまでは「ワークライフバランス」は考えるべきではない(p191)

    ・成功者はみんな若い時、がむしゃらに走っていた、長時間労働・睡眠不足・精神的に極限状態まで追い込まれて続けている(p195)

    ・仕事の報酬を、次の仕事(チャンス)で受け取るのが、労働の再投資をする考え方(p206)

    ・自分がこれまで打ち込んできた仕事の成果は、からなず自分の中に何等かの資産として残っている、それは自分で見つけるしかない(p229)

    ・給料よりも大切なものとして自己内利益(労働者の幸福度)=売上(給料・収入)-費用(それを得るのに費やしたもの)、がある(p231)

    ・10年かけて何かを成し遂げようとする人は少ない、だからあなたはそれをすれば「代わりがいない人材」になれる(p238)

    2013年11月10日作成

  • ・資本論で解説されている理論には、いくつか重要な柱があります。そのひとつの主張が以下です。
    ①商品には、「価値」と「使用価値」がある。
    ②受容と供給のバランスがとれている場合、商品の値段は、「価値」通りに決まる。
    「使用価値」とはそれを使うメリットという意味です。資本論の中では、「価値」は労力の大きさという意味で使われています。
    …労働の使用価値とは、「労働力を使ったときのメリット」です。日本企業に勤める労働者の給料は、「出した成果」ではなく、「生活費」「経験で形成される基礎力」が考慮されて決まります。
    「使用価値」が高い場合、それを選択する理由にはなるが、それが=値段になるわけでは無い。

    ・僕はリクルート社に転職し、ベンチャーキャピタル業務をしていました。非常にやりがいがあり、没頭できる仕事だったため、期待されている成果も出すことができました。そのため社内からは、高い評価をもらえていました。しかしそのとき、外部からは「一目おかれる人材」ではありませんでした。ある企業の経営者から、ぞんざいに扱われていることに気がつき、それを社内で冗談交じりに愚痴りました。すると、当時の上司から「小暮はアピールができてないんだよ」と厳しく諭されました。ふだんはほとんど怒らない人だったので、厳しく言われたことに正直驚いたとともに、ここで「アピール」の重要性を痛感しました。

  • 20代・30代はワークに費やし、40代以降でライフを重視すべき、と昨今の安易なワークバランスの風潮に否定的。
    そして、新たに「自己内利益」を幸福度の指標として提唱している。
    だが、既に非正規で給与が変わらない中で、費用を下げるために頑張りすぎない選択をしている労働者も大勢いる。彼らは誰から言われるまでもなく既に「自己内利益」を重視している。働くママさんだってそうだろう。無駄な拘束時間、休みがとりにくい、ハードルが高すぎる、色々細かい。そんな仕事には派遣だろうが人は集まらない。こういう人たちには10年かけて自己内利益を黒字にするとかって言われてもあまりピンと来ないだろう。やはりこの本は、若手正社員に向けて書かれた本かな。

    だが長期の目標を立てるということの重要性。「好きなこと」を起点に自分の武器を磨いていくというところは深く納得。

    価格は労力で決まるというマルクス資本論はいまだ健在である、との指摘は忘れてはならない。

  • 給料について、新しい視点を与えてくれた。

  • サラリーマンはどこかしら本に書かれている思考をしがちな点がある。そこからどう抜け出す、自分なりの答えを出すかが、大切だと再認識する。

  • ■価値と使用価値
    使用価値はそれを使うメリット
    価値は労力の大きさ(資本論)
    ⇨これを作るのにどれだけ時間がかかっているかを計る尺度。

    価値だけでも、使用価値だけでも、商品にはならない。
    ⇨お客にとってこちらがどれだけ時間をかけたかは関係なく、使うメリットがどれだけあるかを見る。
    これだけの労力がかかるから、この料金だと説明することはできる。

    労働力の使用価値は、労働力を使った時のメリット。
    使用価値が高い労働者は、能力が高く、会社に大きな利益をもたらす人。
    ⇨お客にとって依頼するだけの使用価値があれば、選んでもらえ、継続してもらえる。

    ■給料が低い5つの理由
    ①業績が悪い
    ②工場を持っている
    ③利幅の天井が決められている
    ④日本人はサービスにお金を払わない
    ⑤技術が進歩すると労働者の価値を下げる

    ■会社が給料を上げられない理由
    ①ビジネスリスクが上昇している
    ②一旦上げたら、なかなか下げられない

    ■安月給の人の思考法
    ①社員食堂が安いと喜び
    ⇨社員食堂が安い分、給料が減らされている
    ②家族を大事にする会社です、でグッとくる
    ⇨手当を増やして残業単価、ボーナスを減らす仕組み
    ③チャンスはいつまでもあると思っている
    ⇨チャンスを逃す度に、次にもらうチャンスは小さくなっている
    ④会社の経費で落ちるか、をいつも気にしている
    ⇨判断基準が経費で落ちるかどうかになってしまう。
    本当に必要だと思うもの、ことに投資できない、
    ⑤人は見かけが9割、を理解していない
    ⇨視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%
    つまり、感謝の言葉を言っても、声のトーンや態度で表現していなければ相手には何も伝わらない。

    ■給料を上げるための13の質問
    ①成長し続けているか?
    ⇨今の力を出し切って、現状維持。
    前に進むなら今の倍以上やる必要がある
    ②自主レンをしているか?
    ⇨自分の本業に関わる勉強をどれだけしているか。
    ③日々の行動目標を設定しているか?
    ⇨こうなりたいという目標しか作っていないと続かない。
    今日何をする、明日何をするという短期的な行動目標を作る。
    ④カネを稼ぐ外向きの仕事をしているか?
    ⇨労働力の使用価値とは、会社に対して利益をもたらしたかどうか。
    利益につながる仕事をしている人=使用価値が高い
    ⑤社内で目の前の仕事に集中しているか?
    ⑥社外で将来のことを考えているか?
    ⇨会社を出たら目の前の仕事を忘れ、将来のことを考える。
    ⑦ワークとライフをバランスさせていいのか?
    ⇨やりたいことがあるなら早めに準備しておいた方がいい。
    趣味も年を取ってから教わるのは大変
    ⑧成功者はみんな若いとき、がむしゃらに走っていたことを知っているか?
    ⇨ワークライフバランスは生涯で達成すべき
    20、30代はワークに費やし、40代以降はライフを重視する。
    ⑨自己アピールをしているか?
    ⇨意図、行動、結果の3つが揃った場合、納得できる結果としてアピールすべき。
    ⑩拡大再生産を取り入れているか?
    ⇨大きく稼ぎたいのであれば、仕事をして得た実りをすぐに引き出さず、次の仕事に再投資するという考え方を持つべき。
    11.見通す力を鍛えているか?
    ⇨業界の先行きを見通す力が求められる。
    経済を知って、時代の流れを見ることが重要。
    PEST分析
    政治的、経済的、社会的、技術的の視点で考える。
    12.自分が積み上げてきたものに注目しているか?
    ⇨自分がこれまでに身につけてきたものを見つけ、役立てる。
    13.自分の枠にとらわれていないか?
    ⇨お客からお金を払ってもらえそうな内容を探すのではなく、どういう商品、サービスならお金を払ってくれるか考える。

  • 自主トレーニングが必要。

  • タイトルに反して,やさしい経済入門書と自己啓発本を足して2で割ったような本.異常な読みやすさだった.

    「手当や福利厚生が充実していようが,基本給が残業代や退職金のベースになるからね」という主張が鬼の首を取ったよう現れるのだが,パンチラインとしては弱い気がする.

    サービス残業は違法だけれど,成長のためには......というように,若干言葉を濁して書かれているところもあり,最後の自己啓発の章は昭和時代のような考え方だなという感想を持つ.
    何がどうそう思わせるかわからないのだけれども,全体的に2010年代前半の考え方かなという印象も持った.今だとどういう内容になるだろうか,と気になる.

  • 13 残業代は基本給できまる(手当ではない)
    62 価格の相場を決めるのは価値(手間)、そこから価格を変動させるのが使用価値(ニーズ)
    69 食費+住宅費+衣服代+娯楽費+知識習得費=給料
    172 自分という労働者を作り出すときにできるだけ高くつくようにする。企業が自分の代わりを連れてこようとすると高くつく
    174 今の力を出し切って現状維持。前に進みたいならそれ以上の力を発揮しないといけない。自主練:本業の勉強しているか
    177 部活でレギュラーになりたかったら、回りよりも練習する。回りと同じように練習しているのにレギュラーになれないのは回りと同じくらいしか練習していないから
    180 「なりたい」は状態目標。今日何をするのか、明日何をするのか行動目標にする
    182 大きな組織になるほど内向きの仕事が増える。社内向けの資料、上司への報告資料はゼロ円。
    189 会社を出たら目の前の仕事は忘れよう。自主練したり、経営者の視点から自分の業務を考えてみたり、将来のためになることを考えたり。
    193 若ければ若いほどチャレンジ許される
    196 ワークライフバランスは生涯で達成すべき
    200 自己アピール 意図して行動して結果がでたときはアピールしよう
    207 将来につながる仕事なら割にあわなくても受けよう(報酬は次の仕事で受け取る)

    221「ハリネズミの概念」ビジョナリーカンパニー
    ハリネズミはたったひとつ肝心な点を知っている
    ①情熱を持って取り組めることは何か(好き)
    ②自分が世界一になれること(得意-どうすれば商圏で一番になれるか)
    ③経済的原動力になること(人の役に立ってお金がもらえるーどうすればお金を払ってもらえるのか)
    知識や技術を身に着けることはできるが、嫌いなことを好きになることはできない。好きなこと中心に2つの円に重なる内容を探す

    228 試行錯誤して、いろんなことがわかり、もう独立しても生きていけるとわかって会社をやめた。自分から見てうらやましいビジネスライフのひと、最初からうまくいっていたわけではない。自分に足りないものを見つけ自主練を重ね、望む場所までたどり着いた

    234 自己内利益が赤字ならやらないと判断すべき
    236 自分はどんな働き方をしたいのか?
    237 10年かけて自己内利益を黒字にしよう・今すぐ黒字化しようとすると将来大きく育たない。拡大再生産(次の仕事への投資の仕事をする)をしないといけない
    238 10年かけて何か成し遂げようとする人はいない。だから代わりのない人材になれる

    229 毎日の行動計画を立てて、自主練を行い、社内では目の前の仕事に集中、社外では将来に目を向ける。一生懸命頑張る時期は頑張り、自分で誇れる実績がでたら自己アピールする、仕事の成果の換金のタイミングは考え、報酬でなく次のチャンスをもらうことも選択肢に加える
    自分が打ち込んできた仕事は資産になってる。それは自分で見つけるしかない。安く使われないために。

  • ああ、私もしている、安月給の考え方。
    チクチクと心が痛い。

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著者プロフィール

1977年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から複雑な物事を言語化し、シンプルに表現することに異常な執着を持ち、大学在学中に『資本論』の解説書を自作し学内で大ヒットさせる。リアルな現場と経済学の両面から、個人が幸せに生きるための働き方を分析し提言している。コミュニケーション、投資、個人ビジネスの立ち上げ手法を構造化・言語化し累計5万人以上に指導。また出版コンテンツへのコンサルティングも行い、延べ1000冊以上プロデュース。著書には、『人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点』(講談社+α文庫)、『カイジ「勝つべくして勝つ! 」働き方の話』(サンマーク文庫)ほかがある。趣味はハワイ。


「2022年 『その働き方、あと何年できますか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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