ニコルの塔

著者 :
  • ビーエル出版
3.87
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本棚登録 : 249
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784776400356

作品紹介・あらすじ

寄宿舎と授業塔を往復する、単調だけど静かな生活。だがニコルは気づいてしまった。「ここは何かがおかしい、わたしはニコルではない…」"地球のマント"に隠された、修道院学校の忌まわしい秘密とは?そしてニコルは、そこから無事に脱出し、記憶をとりもどせるのか?不思議な猫に助けられ、謎の絵に導かれる、ミステリアス・ファンタジー。第5回・ちゅうでん児童文学賞大賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 灰色の背景に、「ニコルの塔」と題された物語、見事に引き(惹き)込まれました。寄宿舎と授業塔を往復するだけの単調で静かな日々、地球のマントに刺繍する12人の乙女たち。それはまるで籠の中の小鳥のよう。そんな閉じられた世界が開かれた時が、この物語の本当の入り口であり、始まりなのです。物語の真実、そこから広がる新たな世界。どこか寂しくしんと静かなこみねさんのイラストと小森さんのファンタジーによって読み手の想像もさらに広がります。バロの3枚の絵から創り出されたファンタジー。たまらなく好き。幸せな読書時間でした。

  • いわゆる、世界的にベストセラーになっている
    名作を除いて、ここ最近読んだ児童文学の中で
    断トツよかった。
    こういう作品読めるとうれしいなあ。

    作者のあとがきによると
    この作品はたった3枚の絵から
    ヒントを得て、書いたそうです。
    実際にその絵をwebで探して見てみたんだけど
    なるほどね~とその発想力に
    感動しました。
    おもしろかった!!

  • バロの絵をモチーフに描かれる、幻想的な世界に引き込まれました。とても好きな世界です。所々出てくる哲学的な思想にハッとさせられます。現実世界なのか異世界なのかわからなくなるような抒情的な描写にもうっとりしました。
    修道院の手仕事、魔女のような院長先生、地球のマント、猫…。
    わくわくするようなモチーフが織り込まれて、次々と絵画を見るように物語が展開されます。
    「.年月はいろいろなものを奪っていくけれど、けっしてうばいとれないものもある」
    と話した院長先生の言葉に深みを感じました。
    「塔」という閉鎖された空間は、人の心の内側のようなミステリアスな存在で、タイトルに惹かれて読んでみたいと思いました。子どもの頃に感じたようなわくわく感を決して裏切らない、美しい幻想世界の旅でした。
    #夏の読書感想文

  • 寄宿舎と授業塔を往復する、単調だけど静かな生活。だがニコルは気づいてしまった。「ここは何かがおかしい、わたしはニコルではない…」"地球のマント"に隠された、修道院学校の忌まわしい秘密とは?そしてニコルは、そこから無事に脱出し、記憶をとりもどせるのか?不思議な猫に助けられ、謎の絵に導かれる、ミステリアス・ファンタジー。第5回・ちゅうでん児童文学賞大賞受賞。

    『あなたもブックトーク』京都ブックトークの会にて紹介:()

  • 幻想的かつシュールなファンタジー。
    バロの絵を見たくなった。シダ猫の絵をググった。

    レメディオス・バロ・ウランガ

  • 図書館本。
    YouTubeでラジオドラマNHK青春アドベンチャー「ニコルの塔」を聞き、地球のマントに刺繍されたものが本物になるという設定に惹かれ原作を確認。刺繍の針路指定図も興味深かった。あとがきに、レメディオス・バロの『塔へ向かう』『地球のマントに刺繍して』『逃亡』の自伝的三部作からひとつの物語を思い立ったとあり、絵も確認。実に私好みの絵で、なるほどこの三部作の通りの話だと納得した。地球のマントや聖レメディオ修道院、猫のサルヴァドールなどのネーミングをはじめ、レメディオス・バロやシュールレアリズムへのオマージュ満載な話なのであった。

  •  著者の作品『さくら、ひかる。』があまりにもよかった。涙を流しながら読んだことを覚えてる。それに比べれば、少々パンチが足りない、現実世界の描写が蛇足に思えるのが残念。

     けれども、この著者の作品には、切なくて不思議な世界観がある。好きだ。

  • 女子修道院学校、ミルク色の霧の街、刺繍の授業、高い塔、地下室、お城…靄がかかった不思議な世界の物語。

    寄宿舎と授業をする塔を往復する毎日をすごすニコルは、特別授業で「地球のマント」という変わった布に刺繍をするようになる。どうやら地球のマントにした刺繍は、息を吹きかけると本物になるようで…?というお話。レメディオス・バロの絵に着想を得てかかれたファンタジー。おもしろかった。物語を通してずっと流れてる、霧のようなうす暗いしずかな雰囲気がいい。最後にそれがパキッとはれる展開は、意外なようで納得できるもの。

  • グレーばかり一色の世界は、ミルク色の濃い霧とカラスの群れ。荒れた村と厳しい規則。疑いを持つことは異端。ある絵画から着想を得た作品。児童文学として発表されたものですが、大人も心ひかれる物語です。

  • なにもかもが惜しい作品。
    『時を紡ぐ娘』同様スペインの画家が描いた『地球のマントに刺繍して』にインスパイアされて書かれた作品ですが、雰囲気そのものはこちらの方が忠実。
    最初のニコラとザザの会話にて、物語の仕組みは分かるし、その落ちは嫌いじゃないけど、物語の構成がとにかく下手。
    せっかくプロットや雰囲気はいいのに、内面を適当に書きすぎて結末も「あ、そう」くらいあっさりしているし、なぜニコラはここに来たのかというのも、弱すぎる。
    それこそほかの人物はどこから?と穴だらけ。
    雰囲気その他はいいのに、しめ方があまりにもおそまつ。
    けれど、塔の描写とか閉塞感などはうまい、それだけに構成力のなさが本当に残念でならない。

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著者プロフィール

東京都に生まれる。『ニコルの塔』でちゅうでん児童文学賞大賞、新美南吉児童文学賞を受賞。作品に「青の読み手」シリーズ、「歴史探偵アン&リック」シリーズ、『夢とき師ファナ』『時知らずの庭』『ウパーラは眠る』など、翻訳に『リスベート・ツヴェルガーの聖書物語』などがある。

「2023年 『黒の皇子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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