たいふうがくる

  • ビーエル出版
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本棚登録 : 386
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784776403791

感想・レビュー・書評

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  •  『第25回ニッサン童話と絵本のグランプリ絵本大賞』受賞作品のこの絵本は、「みやこしあきこ」さんのデビュー作(2009年)にして、今の彼女の作品に通じるものを感じさせられたのが印象的で、それは、一部の色以外、全てモノクロで描いている、木炭や鉛筆による細密さや、ブクログの画面では分からなかったが、実際に見てみるとリトグラフであることも分かり、この頃から、既に彼女の変わらぬ拘りがあったことを実感させられる。

     まずは、絵本に興味を持たせる意味合いとして、重要な表紙だが、そこに描かれた、揺れるカーテンと、窓から浮き輪を抱えながら、とても気になる様子で外を眺めている少年を見るだけで、何が起ころうとしているのか、一目瞭然な絵は、充分にストーリーを語っているように思われて良いと思い、それに続く扉絵も少年が見ているのは一緒ながら、今度は、場面も視点も彼の内心の思いも異なっている点に、彼女の巧さを感じさせられたし、最初と最後の見返しそれぞれの絵の、通過前と通過後の驚くほどの雲の違いには、そこで飛んでいる鳥たちの心理描写まで雄弁に語っているように感じられた、不安感と開放感の対照性が、また印象に残る。

     また、本編に於いても、ホームルームでの先生の話に、思わず顔を見合わせて難しい表情をする子どもたちや、後ろから、がっかりした様子の少年の肩に、そっと手を添えるお父さんと、その横で尻尾を逆立てて緊張感を顕わにする猫など、彼女の絵で表現された、丁寧で繊細な心理描写に惹き付けられ、ストーリーは進行していく。

     そして、これは絵本作家の杉田豊さんの解説からの引用になるが、目線のアングルの秀逸さに、なるほどと思い、それは台風が近付いてくるにつれて現れる、下から煽るような視点に、如何にもな不安感があることと、その後の台風上陸での魚眼レンズで見たような湾曲した絵は、フニャフニャと歪んで見える道路からも感じさせる不安の極みであり、よくよく見ると、それぞれの家の窓には人影があり、この同じタイミングで動く関係性に、来るものが来たのだということを、さり気なく読み手に教えてくれているのが、また素晴らしい。

     とは書きつつも、その不安を抱いたままでは終わらない想像力が、少年の負けん気の強さを表しているようで、私には好印象に思われて、ここからの展開には、それに怯みそうになっても前を見続ける、そんな躍動感溢れるタッチに、読み手も思わず高揚感漲るような気分となり、そのモノクロの果てに待っていたのは、色の爽やかな開放感と、最後の、どこか達観しながらも落ち着きを見せた、猫の絵による穏やかなひと時で、どこか印象に残る終わり方だった。

  • ずっと白黒で進んでいく。
    台風が去った後カーテンを開けた時のあの青空はハッとさせられる。
    男の子の台風を正しく恐れている感じもとてもいい。

  •  ページに触れた手が黒くなるような錯覚を覚えるほどの、鉛筆?墨色?一色の世界。からの、台風一過の青空!

    • たださん
      akikobbさん、こんにちは♪

      木炭と鉛筆だと思います。
      ネットの、みやこしさんのインタビューで知りまして、この本、デビュー作なんですよ...
      akikobbさん、こんにちは♪

      木炭と鉛筆だと思います。
      ネットの、みやこしさんのインタビューで知りまして、この本、デビュー作なんですよね。
      私も読みたいです。
      2023/09/24
    • akikobbさん
      たださん、コメントありがとうございます。

      木炭!なるほど。
      絵本のコーナーにみやこしさんの本が何冊かあったのですが、適当に取った本の著者紹...
      たださん、コメントありがとうございます。

      木炭!なるほど。
      絵本のコーナーにみやこしさんの本が何冊かあったのですが、適当に取った本の著者紹介に、これがデビュー作とあったので、選びました。
      動物は、ペットの猫以外出てきません。
      2023/09/24
  • 〝今日は金曜日。明日は家族で海に行くんだ。でも・・・さっきホームル-ムで先生が言ったんだ。これから台風がくるから、今日はもう下校するようにって。・・・空はどんどん暗くなり、雨も強くなってきた。 寝る前にぼくは、考えた。台風を追い払う機械があるといいのにな・・・〟原子爆弾で地球を破壊する呪われた人間の能力をもってして、自然の脅威に立ち向かえる日が来るのだろうか? ふと、そんな世迷い言が浮かんだ。

  • 台風シーズンに備えて、図書館に台風コーナーが出来ています。白黒で台風の不気味さを感じさせて、そして最後の青が突き抜けるように爽やかに感じる絵本。娘も今年は台風の怖さを感じるのかなぁ。来たらイヤだけど。(4歳3か月)

  • こどもの目線で、子供の機微を詳細に描いている。
    台風の日、こんな風に感じてたのかなと
    自分の思いへも振り返ることができる。

    風が怖くて、雨が不安な子供へ読み聞かせすると
    少しほっとするかも。

    君だけじゃないよ。

  • 子どもの頃、台風が近づくのに妙にワクワク感があったことを思い出した。
    みやこしあきこさんの出世作。
    ニッサン絵本大賞グランプリ作品。

  • >金曜日、ぼくは悲しい。
    明日は家族そろって海へ行くのに、台風が近づいているから。
    空はどんどん暗くなり、雨も強くなってきて……。
    少年の不安を表すようなモノクロの絵の中で、ただ1色使われた青色が印象的な絵本。
    第25回ニッサン童話と絵本のグランプリ絵本大賞受賞作。

    みやこしあきこさん最初の絵本。
    モノクロの絵だけど、色の濃淡であったり、目線の工夫などでそれぞれの絵がとても表情豊かでした。
    台風が来る前の不安感や、夜にかけて雨風が強くなってきて布団にもぐり込んだ経験は子どもの頃何度もあったので懐かしい気がしました。
    夢の中の冒険も素敵でした。

    翌朝目覚めると台風が通り過ぎていて・・・モノクロの中で唯一の青空!
    予定通り家族で海に行けたかな?

  • みにぴ ミク氏 2011.04.23

  • 最後の青空がきれい。
    実際には明日休みになるかと思ったら〜!パターンが多い気がする。

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著者プロフィール

1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒業。在学中から絵本を描きはじめ、2009年に『たいふうがくる』で「ニッサン童話と絵本のグランプリ」大賞を受賞しデビュー。2012年『もりのおくのおちゃかいへ』で日本絵本賞大賞を受賞。数々の言語に翻訳出版されている『よるのかえりみち』はボローニャ・ラガッツィ賞(2016年フィクション部門Special Mention)受賞後、ニューヨークタイムズ&ニューヨーク公共図書館The Best Illustrated Children’s Books of 2017、ミュンヘン国際児童図書館The White Ravens 2016に選ばれるなど、海外からの評価も高い。その他の作品に『のはらのおへや』『ピアノはっぴょうかい』『これだれの?』『ぼくのたび』『かいちゅうでんとう』などがある。

「2022年 『ちいさなトガリネズミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

みやこしあきこの作品

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