ほんたにちゃん (本人本 3)

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 473
感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778311162

感想・レビュー・書評

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  • 本谷さん自伝的小説。と思いきや、どうやら自伝ではなさそう。
    主人公と同じ年頃のころにWebに掲載された文章を少々手直しして出版した模様。

    19歳の専門学校生の自意識過剰な日常。
    非常に軽やかな現代版「人間失格」という感じ。

    この前まで高校という狭い社会に生きていて、社会に出ていこうとする中の最後のモラトリアムな一人暮らし生活で、自意識だけが過大になって、自分にだけ興味がいってしまっている主人公の気持ちが、やはり小さい世界において(専門学校と実家のお母さんとの電話)展開される。

    同世代で読んだら、相当面白い小説だろう。(腹抱えて笑いながらイタさに共感)

    中年まっさかりで社会の波に翻弄されるぼろ雑巾のような私からすると、この小説に書かれているような背伸びだとか、自意識過剰さ、主人公の視野の狭さは、純粋さと薄汚れていないことにしか見えない。娘を暖かく見守る気持ちで読めてしまう。

    ストーリーやエピソードは思いつきの面白ネタを次々に足していったような印象。

    これだけどうでもよい話をきちんとスピード感を持ち、エンターテイメントとして書ける筆力が20歳頃にあったことが凄い。本谷さん自体が、主人公のようにただ自意識過剰でいるだけではなく、客観性を持ち自分のことを見れるからなのではないか。

    しかし、「本人本」というのは何を表しているのだろう
    か、コンセプトの意図がくみ取れなかった。

  • 今まで読んできた小説の中でトップクラスで“笑える”。
    小説というよりもギャグ漫画に近い感覚。
    自意識過剰と、根拠のない万能感・功名心、サブカル憧れ。
    身に覚えがありすぎて痛いよー!

  •  あああああ痛たたたたたたた!肥大した自意識のモンスター化、自己演出アンド自己演出。孤高感、絶望感、哀しみ、苦しみ、それによって得た精神性の豊かさ、思慮深さ、神秘性、洗練された感受性、哲学的思考回路、独自性、普遍性、人間としてどうしてもにじみ出る、本物の魅力。全部自分の中にインストールしたい、こういうの、『厨二病』なんて括られるんだろうね。
     だが彼女の内面世界は最高におもしろい。飲み会で文庫なんて開いてる場合ちゃうで、綾波レイのイメージで心閉ざしてる場合ちゃうで、考えてること表現したほうがいいって、おもしろすぎるもん!タイトルから察するに、これは私小説的なものなのかしら。だとすれば、小説家になってくれてありがとう、この肥大した自意識を一つの作品に閉じ込めてくれてありがとう、と言いたい。最高におもしろかったです。
     こんな風に彼女よりはマシ(笑)と余裕ぶっこいてる自分と、あかん、わかりすぎてしまう…と他人事とは思えず笑えない自分が、読んでる間絶えず交互に登場しては喧嘩する。だが結局、19歳で自意識モンスターの主人公と、30過ぎて自意識をうまく飼いならしてそれっぽくふるまってる自分、未だ何者かになれるかもしれないと思ってる自分、どっちもどっちやん…むしろ30年生きてこの状態ってうち結構やばい?と自分のやばさに気付き暗澹たる気持ちになる。
    『天然最強説』には全面的に同意します。奴らはせこい。自然に人を振り回せる人に憧れが止まらんもん。天然っぽく振る舞うことを研究した時期もあったなー。あれも周りには気付かれてたんかなー。あーー痛いよーやめてー。

  • 脱ぎたいくらい暑いですな

    ってな事で、本谷有希子の『ほんたにちゃん』

    本人本03っても書いてあるけど、本谷有希子さんの自伝なんかなぁとか思ったり

    相変わらずぶっ飛んでる!

    普通の子なのに何に対して去勢を張るって言うか、何を演じて生きているのか……

    自分の人生が生演劇で、それを自分自身で出演、編集、監督、演出しているかのよう

    この内容が自伝であって欲しい(笑)

    読み終わった後にカバーイラスト見て更に笑えた

    そんな本谷有希子さんを愛して止まないんですよ

    2020年41冊目

  • 自意識過剰の19歳の女の子。
    彼女はとにかく他の人と同じが嫌で
    他の人と違うことを特別だと思っている。

    ある日専門学校の飲み会で出会った有名なカリスマにモデルやらない?って言われて引き受けたら春画、裸体モデルでびびって適当な嘘ついて一応服着てるモデルやってでも最終的に「あんた、本気で俺に相手にされると思ってんの?」って結局プライドへし折られて。
    じゃあそのカリスマにどうやったら認められる?って考えて考えてセックスしてもらえたら、あの男が勃ったらそれはもう馬鹿な私を相手にした時点で負けで私もカリスマだよね????って意味わかんない思考になってヤッてもらいにいく。結果一応ヤッてもらえて少し己を取り戻す。「大丈夫。痛々しさで死んだ人間なんていないよ。」って。

  • いやー気分悪いわ!笑笑。テレビで観て、おっ美人!タイプ!と下心から読み始めたが。最高に気持ち悪いね、こんな美人がこんな小説書くんだな、それがいい。イヤミスに近い。読んでもなんの得にもならんが、今本谷週間。

  • 3

  • 帯にある。「オロカわいい!!!!」。言い得て妙。
    自意識肥大のためにキャラ設定を間違えてしまった。
    ここまではよくある話だが、内面の声が自分を裏切る裏切る。
    地の文をここまで面白く書けるのはひとつの発明だ。
    敵になるのか救い主になるのか、野次マサムネにどうあっても認められよう(キャラはそのままで)という執念。
    まさかそんなことまで申し出るとは。

    カバーイラストが素晴らしく的確だと思ったら、なんとokama氏。角川つばさ文庫「ふしぎの国のアリス」の。

    追記。
    庵野秀明や松尾スズキがモデルなんだとか。
    というか本人本というコンセプト。

  • イタイイタイわーーでも分かるわー(笑)

  •  個性的で独創的でサブカル通でミステリアスである風に世間から思われたい主人公が痛くて痛くて大変なことに。私は自尊心を人に悟られたくないがために、普通さ、凡庸さを強調しがちなタイプであるので、主人公とはベクトルが違う、けれど共通するものは強すぎる自意識であると思う。他人の目が気になって気になって仕方がなくて、多少の演出なしには生きられない主人公の唱える「天然最強説」は事実、でも、『痛々しさで死んだ人間なんていない』のも事実で、勇気が湧いたようなそうでもないような。面白い本だった。

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著者プロフィール

小説家・劇作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

本谷有希子の作品

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