拉致対論

  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778311810

作品紹介・あらすじ

北朝鮮制裁策に代えて、対話を進めよ。なぜ、前・家族会事務局長が強硬派から変身したのか。かつて対極の立場にいた二人が、政府・救う会・家族会・メディア・革新派の閉塞を解き明かし、新しい知恵と方策について率直に語り合う画期的な対論。

感想・レビュー・書評

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  • この対談本が出版されて3年半が経過するが、問題は一向に解決されていないばかりか、ミサイル発射等の状況は、かえって悪化している。
    蓮池透氏の表情の変化から、その心情の変遷を知りたいと思っていた。
    案の定制裁のみを声高に叫ぶ「救う会」やスーパー右翼政治家達に利用された苦悩がそこにはあった。
    植民地化から100年を迎える時期になってもなお、北の共和国とは国交正常化が行なわれていないという信じがたい状況下で、「歴史的な関係が深かった他国に突きつける事は自らにも突きつけるようにせねば問題は解決しない」との太田氏の提言が重たい。

  • 蓮池透さんの『拉致 左右の垣根を超えた闘いへ』のあと、この対談集も読んでみたいと思って借りてきた。

    蓮池さんは、発言が「変わってきた」と言われているらしい。「家族会」のなかでそれで批判されたりもあったらしい。

    そのことについて、ご本人はこう述べている。
    ▼蓮池 私は最近、変節者だとか、立場を変えたとか言われます。変わったということを大きくクローズアップさせるのは私としては嬉しくありません。突然変化したというわけではなくて、徐々に、時間が経つにつれていろいろなことを深く考えながら現在にいたっており、結果として、周りから見ると変わっている。同じことを言っているのかもしれませんが、そういう風に捉えていただければと思います。(p.22)

    ここを読んでいて、原田正治さんのことを思った(原田さんのお話は『We』163号に掲載している)。弟さんを保険金殺人で亡くした原田さんは、裁判の初めの頃には報道陣にこたえて「極刑しかない」と話していた(このときの映像は、12月に龍谷大のシンポへ行ったときに私も見た)。そして、時が経ち、原田さん自身が「弟を殺した長谷川君」と面会し、手紙をやりとりするなかで、変わっていった。いま死刑は廃止だという原田さんも、かつて極刑しかないと言った原田さんも、どちらも原田さんなのだ。

    蓮池透さんのことも、そんな風に思う。
    変わったら悪いのか?と思う。

    「変わった」ということについては太田もこう述べている。
    ▼太田 …異なった意見を持っていた、あるいは持つ者同士が、お互いの意見を語り合い、その中でお互いが場合によっては異なる意見を受け入れたりして相互浸透がなされていくというのは、人の考え方が変わっていく、また問題認識が深まっていく時の基本的なあり方だと思います。拉致問題をめぐる事態が一ミリも動かずに硬直していて、来年植民地化から100年を迎える時期になってもなお北の共和国とは国交正常化が行なわれていないという信じがたい状況を渡したちは前にしています。個人の力が小さいとは誰もが痛感することですが、かつては対話など成り立たないだろうと頭から決めつけていたような二人が拉致問題をめぐって思うところを話し合うというところに、もう少し広い社会的な意味を持たせることができないかなという思いが、私にはあります。(p.21)

    交渉が全く進展しないことは、ご家族にはたまらないことだと思う。どんな手段を使ってでも取り戻したいだろうと思う。だが、ある時期から家族会の方たちは「北朝鮮に経済制裁を」という主張ばかりになったように見える。経済制裁が被害者全員の帰還につながるのか、というと、私は本を読んだくらいだけれど、そういう交渉がうまくいくようには思えない。

    私はさいしょ、二人の名前を見て、へー蓮池さんと、この太田って沖縄の県知事をした人やったっけ?とボケナスな勘違いをしていた(それは大田昌秀、テンないし)。だいぶ年も違うやろうに、どういう縁かなあと思っていたら、太田昌国さんというのはゲバラの本をいくつか出してるほか、この本でもときどき言及される『拉致「異」論』や『暴力批判論』という本を書いてる人だった。この本もそのうち読んでみたいと思っている。

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著者プロフィール

「拉致被害者家族会」元事務局長

「2010年 『拉致問題を考えなおす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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