- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778313944
感想・レビュー・書評
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風俗というのが、日常の裏にある未知の世界で面白かった。本書はルポルタージュ形式で、この時をこういう人が生きていたことを記録する、ってスタンス。
風俗に関する社会学の本とか読んでからまた読み直したら抱く感想や本書から読み取れる世界が広がる気がする。本書でも書かれてる通り、風俗嬢が担うことはセックスワークだけでなく、「癒し」という精神的ケアの提供。実際利用してる男性も多い。だけど、その割に世間では風俗嬢という仕事はおおっぴらには言えないものだし、風俗を利用して恩恵を被ってるはずの男も風俗嬢のことを風俗に「堕ちた」って馬鹿にする風潮がある。本書ではそこらへんの社会的な矛盾には触れてないし、そういう趣旨の本でもないんだけど、それだけに尚更自分でちゃんと勉強したいな、と思った。
作者が風俗嬢の女の子たち(と言っても年齢は19〜42まで様々。女の子、は業界用語らしい)に真摯に向き合ってるから、被災地で生きる女の子たちの人間としての姿が浮かび上がってきてて面白かった。特に、5年に渡って取材した子は、震災2年後と5年後で人生観が変わってて、震災が色んな人の人生に与えた影響の片鱗が見えた。
インタビュー通じて特に印象的だったのが、風俗嬢が社会の中で担う、精神的なケア労働という役割。
震災で辛い目にあったお客さんの話を聞いたり人肌で癒してあげる中で「自分も励まされて前を向くキッカケになり逆に癒しをもらった」という女の子もいれば、「自分も震災から立ち直ってないのにお客さんの辛かった話を聞くのは重くてしんどい」という女の子もいたのが興味深い。感じ方は本当に人それぞれで違うんだな。
あと、「震災を経験して人肌が恋しいからつまりとセックスしたいけど、避難所の壁は薄いし子供もいるし、出来そうにない。とはいえ自分から妻をラブホに誘うのは恥ずかしいから風俗に来た」というお客さんの話にびっくりしたんだけどどういう心理なんだ…心細い時にヤれたら誰でも良かったのか…?
心理的ケア労働としての風俗嬢、という側面から考えると、「男は弱いところを見せられないから辛いんだ」とか言いながらも、性風俗という男の弱さを受け入れて心理的なケアをしてくれる受け皿が用意されてるの、世の男性諸君は甘やかされてんなー、と思わなくもない。インタビューを受けた女の子に、地震後PTSDになって生活に支障をきたした子がいた。その子はその後、精神状況が良くならず、だんだん風俗にも出れなくなっていったとか。そういう弱い、男性のケア労働を担わされていた風俗嬢の心は誰がケアするんだろう。勿論風俗嬢の皆がそういうタイプの人間じゃないし、さっきも書いた通り、お客さんに励まされて力をもらったって女の子もいるから一元的に語れない問題だけれども。
筆者によって語られる、被災地を取材する罪悪感や、被災地の風俗産業を取材する罪悪感…というのもなるほどなと思う。けれど罪悪感を忘れないあたり作者は誠実な人間そうだし、なによりやはり現場を伝えるのには大きな意味があると思う。
震災を機に命の儚さや当たり前と思っていた日常、周囲の人への有り難みが増した、という被災者の話はよく聞くし、実際、インタビューをうけた女の子にも、そういう風に人生観が変わったという子が多い。
うまく言えないけれど、改めてあの地震は物凄い出来事だったんだなと感じる… -
癒しを求める男性たちってのは分かるけど、だったら当然癒しを求めたり人肌を恋しく思う女性たちもいたと思うんだけど、そういう人たちはどうしてたんだろう。
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被災地で食うに困って、風俗に「堕ちた」話ではない。
元々、風俗があって、いろんな事情があって、震災後も実のところ早々にというか、状況が許し次第、営業を開始しているのだ。
それは、普通に、様々な仕事が再開してくのと変わらない。
そこで生きていく、数人の当事者へのインタビューをまとめた内容。
そう、まとまったものではないが、やはり、風俗という内容から、いろいろなものが見えてくる。
主体的に描かれているのは、「風俗」の側にいる人たちが、もちろん、そこを利用する人たちがいる。
癒されるんだ。
やはり、人の肌というのは大事なんだと思った次第。
それが、家庭の中にあるのかどうか、そことは違うのか、勿論、状況からして、「単身」で来ている男たちもいるだろうが。
色々考える。
あまり描かれては来なかった分、考えさせられる。 -
東日本大震災の被災地において、日常生活を取り戻すべく務める風俗嬢。利用するのは進駐軍が如き、復興支援者や除染作業者だけではなく、同じく被災した人々。妻や子供を津波で亡くし、絶望の淵に何を糧にすれば良いかも分からず人肌を求めたのだと。性を賤しいものだと捉えずにその世界を覗く。究極的な包容力と癒し、生きる目的へのリアルが感情と肉体を重ね合わせ交雑する。
被災者の絶望を垣間見て悲しくなる。だけど、何か根底に突き抜けた前向きさを感じ、不思議と平和な気持ちになる。生まれ、生み、死に、循環していく。性への希求は退廃ではなく、生きることへの前向きさかも知れない。ただの欲望の処理という側面が、排泄に等しい野生の下劣さを想起させても、歩みが無いわけではない。自らを傷つけるのは、自身の基準に照らした意識だ。どんなアプローチであれ共感を得る事によりそれが和らぐならば、救いはあるのだろう。 -
なんというかな。
震災のリアルな現状も、、風俗嬢のリアルな現状もどちらも大した伝わらない本でした。
震災の本何冊か読ませてもらって、お母さんの気持ちやら、家族を思って、、っていうそういういろんな方の話に一つ一つどうにもならないその現状から立ちあがろうとする人々のナマの声を聞いてなぜかわたしが元気をもらう、、、そんな本が多い中。
どっちもなんかようわからん。そんな本でした。
風俗が人々を癒すために震災後一週間後には復活したという話。
それはすごいいいことだろうし、人々を癒すために必要だったのも認めるけども。
そんな中、世のお母さんたちは子どもたちを背負って探して、、、と。思うと。なんかなぁ。とやりきれなくなる思いです。
食わなきゃ死ぬし、寒くて死ぬこともあるけど、性欲で死ぬことないよね。っていうね。
その力ほかに使ってくれよ。と思わないでもないよね。
義援金が入って、しかもやることなくて時間もあったから風俗混んでたんだってさ。
それはそれでいいのかもしれないけど。
なんか、やるせなくないか? -
2021年3月読了。
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他の方も感想に書かれているが、当時の客側の心境も知りたい。
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2018/03/31 14:48:52