奴隷のしつけ方

  • 太田出版
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778314750

作品紹介・あらすじ

古代ローマ貴族が教える、究極の"人を使う技術"

感想・レビュー・書評

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  • 風変わりなスゴ本。

    奴隷のしつけ方というマネジメント本というよりは、古代ローマ時代の奴隷制度について生々しく語ったという仕立てで読み易い。奴隷を資産、物として扱い、時に足の骨を折り、目を潰し、ウツボの生き餌にしようとし、女奴隷には我が子を生ませようと好き勝手に振る舞いながらも、一部で感情移入して金品を与えたり、奴隷身分を解放してあげたり、師弟愛のような奴隷との家族感情を育む一面もあって、この辺りは現代人の感覚では容易に理解し難い。もっと理解に苦しむのは、奴隷に生ませた子も奴隷だという事。まさに、唯我独尊、欲望の真骨頂、ファミリアという独裁国家だ。

    現代人も欲望の奴隷だとか、資本主義の奴隷などという揶揄、自嘲がある。しかし、やはり決定的に違うのは、現代はおよそ暴力や制度に縛り付けられてはおらず、解放の如何は自律心の一点で叶う。ただ、古代ローマのようなファミリアを形成したければ、奴隷なんてしつけなくとも、ネットで購入したトーガを纏い、良く教育されたハウスメイドと、パパ活の相手を侍らせ、農作業は知らぬ誰かに任せて一流コックが調理された物を食せば良い。制度や時代が変わっても、欲望の指向は変わらず、これらを実現する為には、多少の金銭があれば良いという事だ。少し違うのは、古代ローマの奴隷の数や質はステータスシンボルでもあったために過剰になってしまったが、現代は、催す都度、即席で満たせば良い。当時、奴隷一人の購入に一千万円。ポリコレや何やで欲望を綺麗に飾り付けた現代と、大して変わりが無い。反乱の度に制度変更で抑えても、人間の本質は、変わっていない。

  • 現代の労働と、ギリシャローマ時代の奴隷と何が違うのだろう?
    そういう単純な疑問が書いてあるのかと思って、図書館で借りました。

    表紙がヤマザキマリさんの絵だとピンとわかったのは、テルマエロマエを読んだからです。

    • やまさん
      masakiさん
      おはようございます
      やま
      masakiさん
      おはようございます
      やま
      2019/11/10
  • 代々奴隷を扱ってきて奴隷の扱いはお手のものという架空の人物・マルクスが語る奴隷管理方法の本。ケンブリッジの教授さんこんな遊び心のある本だしちゃえるんだなぁ。

    これを読んだ誰もが思うでしょうが、現代の会社と似ている。勿論ここまではしないよってこともあるけど奴隷の方がマシじゃないのこれってこともある。

    奴隷を不当に傷つけたり殺したりが禁止されていたり、自殺未遂歴を開示しなきゃいけなかったりしたのは知らなかった。また開放された後も主人のために働くのが当たり前だと思われてたことも。この辺りもプライペートの時間って何それな会社に通じるところがあって微妙な気分になった。

  • ローマの奴隷制度についてローマ時代に書かれたという体で書かれた本。
    奴隷に対する主人のあり方は、翻って現代の会社組織にも当てはまることが多々ある。
    焼きごてとかされないだけましか。

  • 古代ローマの貴族が、奴隷の所有、管理等について、自分の意見を開陳するという体裁で書かれた本。
    語り手が教養ありすぎで、一般的な意見のように見えない。普通に書いた方が良かったんちゃうかな。

  • 古代ローマ帝国市民であり貴族である、架空の人物に、
    当時の奴隷について、扱いのノウハウ等を語らせた本。
    実際は、解説のトナー氏が多くの文献を基に書いている。
    古代ローマの奴隷制について、ここまで詳しく書かれた本は、
    なかなか興味深いものでした。それも、使う側という架空の人物に
    語らせたことがユニークでわかりやすかったです。
    奴隷の買い方、しつけ方、罰し方、奴隷の楽しみとは・・・。
    マルクス氏、尊大な上から目線で語っています。
    しかし、長い慣例とはいえ、奴隷の身はしんどい。
    解放されてもファミリアという制約に縛られる。
    更に・・・“交配”ですか!男女の営みは家畜も同然とは~!
    あぁ奴隷にならなくって良かった。
    でも、かつては日本にだって奴隷はいたし、現在でも奴隷はいる。
    その事実にも考えさせられました。

  • 古代ローマの「架空の」貴族に語らせた、奴隷の扱い方ハウツー本です。面白いです。
    古代ローマの庶民の生活も分かりますし、とにかく奴隷制度が当たり前に定着している様子が分かりますね。
    最後に触れられていたように、時代的に、キリスト教は奴隷に支持されて広まってきたのかと思ってましたが、どうやら違うようですね。
    本書を、組織の管理方法論と見るか、古代の大衆歴史書と見るか、なかなか興味深いです。

  • 2016/01/09【新】

    奴隷側にならないよう生きていこう。

  • ローマの貴族マルクス・シドニウス・ファルクスが書いた奴隷管理法、という体裁をとって、
    古典研究者ジェリー・トナーが書いたギリシア・ローマ時代の奴隷についての解説書。

    訳者あとがきにあるように「こんな本が欲しかった! 古代ローマ人が奴隷管理法を語るタイムトリップガイド。生身のローマが見えてくる!」という、ローマ時代の生活には、切っても切れないというか当然のように存在した奴隷について、様々な文献の記述から、いまそこに見えるように生々しく平易に解説した本。
    奴隷の立ち位置、奴隷との付き合い方の基本、奴隷の買い方、奴隷への罰の与え方、奴隷の解放について等々、記述は詳細かつ多岐にわたる。

    そこには、貶められた獣のように扱われ使役される奴隷ではなく、主人の所有物という法的な立場はもちながらも、存在を認められ、働き、生きた、奴隷という存在が見えてくる。

    著者は、「しかし、いくら存在を認められとはいえ、今の時代にはマルクスのように奴隷制を容認し、それを正当化する人はいない。しかし、現代はどの国でも奴隷制は違法であるといっても、奴隷状態に置かれているひとはたくさんいる。Free The Slave というNGO団体の統計によれば、暴力で脅されて労働を強要され、給料ももらえず、逃げる希望さえない人が2700万人いる。現代社会には、古代ローマのどの時代より多くの奴隷がいるのです。」と、本書を締めくくる。

    さらに、現代社会には、消費を煽られることによって精神をコントロールされ、給料をもらい自由に生活しているという形をとりつつも、自分の精神は縛られ、稼いだというお金は搾り取られ、老後はクズのように捨てられる、より多くの奴隷的立場にある国民が多くいる。それに強く矛盾を感じた。

  • 【選書者コメント】ヤマザキマリ推薦!
    [請求記号]2320:63

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