テロの文学史

著者 :
  • 太田出版
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778314965

作品紹介・あらすじ

「日本を変えるにはテロしかない」として三島は自決した。それはテロに被われる21世紀を正しく予見していた。村上春樹、村上龍、町田康、阿部和重…、文学者たちはなぜテロを描いてきたのか。

感想・レビュー・書評

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  • 一言でいうと「愛すべき極論」といった感じか。著者は、三島への思い入れ&思い込みが強すぎて、あらゆる作家のあらゆる作品の端々が「三島からの引用」であり「三島の割腹自殺のメタファー」に見えてしまうようだ。自分の好きなものどうしがつながっていることを密かに見つけるのは愉しい。その愉しさがビンビン伝わってくる。だけど、一冊の書物として出版されていることを考えると、ちょっと断定しすぎかなあ。私は引いた。あと「春樹VS龍」とかやたらと作家どうしをたたかわせたがるのも、どうかと思う。本人たちは三島を引用したとも、別の作家とたたかっているとも思ってないかもしれないよねえ。
    とはいえ、三島はもちろん、村上龍、町田康、阿部和重…と、これだけ自分の日ごろ愛読する作家たちが1冊の本の中に登場するのは嬉しいものだし、三島の裏話もいろいろ知ることができてよかった。自衛隊のバルコニーで檄を飛ばした後、切腹のため部屋に入るときに「あんまり聞いてもらえなかったな」というようなことをつぶやいたとか、せつなすぎる。また、「一人称小説のヒーローは死なない(生き残って語っているから)」など、面白い発見もいくつかあった。ランボーの荒野と『豊饒の海』のイメージの重なりもうなずける。
    あとがきによれば、著者は本書を執筆する際、三島の生首の写真(当時はふつうに雑誌に掲載されたらしい!)を拡大コピーしたものを机上に置いていたとか。それじゃあ、こういう論調になるのもしかたないよなあ、と思ってしまった。
    あと、プロローグにウェルベックも登場するが、ちょうどこのあと『服従』を読む予定なので、「ウェルベック面白そう!なんか龍さんみたい?」とテンションあがった。そこはよかった。

  • 嶋中事件絡みでテロ標的の危険にさらされて警護がつく状況下、あろうことかスリルに酔い、でもってエッセイにその昂りを書き散らす三島。不謹慎を通り越して、もはや税金泥棒ってなもんじゃなかろうか。
    とまれ、三島だ村上だで80年代に思いを馳せていたら、元生徒会長から同窓会の連絡があり。現実の方がずっとシュールだ。

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著者プロフィール

評論家、詩人。ランボー、村上春樹論等で活躍。2009年『ランボーとアフリカの8枚の写真』など一連の紀行により藤村記念歴程賞受賞。
『ゆるゆる人生の歩き方 金子光晴の名言から』(言視舎) 『テロの文学史』(太田出版)ほか著書多数。

「2020年 『笑う桐野夏生 悪を書く作家群』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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