- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778315313
感想・レビュー・書評
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資本主義の欠陥は過剰を止められないこと=マルクス
利子を取ることは神の所有物である時間を奪うことを意味するため、当初はキリスト教でも認められなかった。
アメリカでは、大手銀行のうち4つが破綻してGSだけが残った。
3年に一度、バブルが起きる
20世紀は極端な時代、人口爆発、化石燃料の消費など。
年間で、企業の資金余剰が23兆円、家計部門と合わせて48兆円。これが国債購入の原資。
ケインズ的な大きな政府も、グローバル資本主義では焼け石に水、かつてのような乗数効果がないから。
世代間の価値観が収れんしている。(見田宗介)
石油価格の交易条件が改善しても、国内に投資機会がないから景気は良くならない。
より速くより遠く、は世界全体が豊かにはならない。
日本の過剰資本はチェーンストアにあらわれ、世界の過剰資本は粗鋼生産に現れる。
東大物価指数=スーパーのPOSに基づく日々の物価指数。
極端な格差は文明の一つの条件(ピケティ)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010年からの5年間で、上位62名の資産は44%上昇し、貧しい半分の人々の総資産は44%減少した。
安倍政権誕生直前の2012年には320万円の負債超から、2015年には434万円の負債超となり、全勤労者世帯の半分は負債が増えた。
成長戦略が予算に反映された2002年と比較すると、当時は20万円の貯蓄超過なので、政府が成長戦略に力を入れれば入れるほど中間層の家計は困窮していった。一方で、2001年度末には1,417兆円だった個人金融資産は、2016年末には1,741兆円に増加している。
資本の成長戦略を破棄し、企業の最終利益を抑制し、人件費を増やす政策に転換すべき。企業の最終利益は、最終的には新規設備投資の為にある。
資本主義を活用して豊かになれるのは、世界総人口の15%まで。
12世紀のスペインでは、デフレ状態を回避する為に、半年でマイナス2%のマイナス金利を適用した。事実上の金融税。この収入で、領主は教会などの礼拝施設の充実や巡礼に来る信者達が宿泊する施設を建設、領内経済が活性化した。
資本の概念が生まれた13世紀のイタリアフィレンツェでは、「商業についての助言」という小冊子が出回り、そこには「貧乏人とは付き合うな。なぜなら彼らに期待すべきものは何もないからだ」と書かれていた。資本主義は元来、貧しい人を豊かにするという発想は持ち合わせていない。
消費者がより多くのモノ・サービスをより速くと要求していれば、それは金利に現れるが、20世紀末から日本、ドイツ、欧州の2/3は2%を下回っている。ゼロ金利は消費者が新規の投資は不要と言っているサイン。
預金者がゼロ金利を受け入れているのであれば、配当はゼロでよい事になり、家計は新規の工場、店舗をもやは要求していなければ、利潤もゼロでよい。
リスクの観点から、会社の配当は預金利息より低くていいのだから、配当はゼロでよく、代わりに株主には現物給付すればよい。
1215年、ローマ教会によって金利が認められて以来、800年の歴史の中で、最低金利を経験した国は7カ国のみ。まずスペイン、ついでイタリアジェノバ、そしてオランダ、イギリス、米国、日本、ドイツ。超低金利国の交代はシステムの終焉を意味するか、あるいは同じシステムの中での中心の移動を意味する。2015年の日本からドイツへの交代は前者を意味している可能性が高い。前者は世界の枠組みを一変させてしまうので、それだけ衝撃が大きく、その吸収に時間を要する。中世・帝国の時代から近代・主権国家の時代へと変わるのには約二世紀を要した。(1453年ビザンチン帝国滅亡から1648年ウェストファリア条約でオランダ共和国の独立が認められるまで。)
同じシステムの中での中心の移動の場合は、移行期は数十年。
金利から見れば、明らかに近代システムは終わり。統治システムから見れば、国民国家時代の終わりであり、経済的には資本主義システムの終わりを意味している。
国民国家の成熟と、近代デモクラシー制度は、歴史的役割をもう十分に果たした。第四の帝国はEU。
主権国家システムとは、1.多数の主権国家が存在し、2.相互作用が主権国家間である事、3.共通規範と共通制度の承認という3つの基本的属性から成り、これらの条件を外していく事でこのシステムを超えていく。
21世紀前半は、単一通貨時代から複数の地域基軸通貨時代への移行期。
企業は、過剰資本と化した段階で出資者のものではなく、社会的存在となった。
事実上ゼロ金利になった1990年半ば以降、人件費はエネルギー高騰に伴って売上高変動費率が上昇する程度に売上高人件費率が低下した。一方、売上高に占める企業利潤と固定資本減耗の比率は24%で安定している。人件費が最終調整項目となっている。
原油価格急落は、先進国にとって交易条件を改善させ、計算上の付加価値は増加するが、製造業の売上減によって人件費削減が行われる為、家計の所得は減少する。
国内チェーンストアについて、2013年の店舗調整後の総販売額は0.7%減となり、1997年以来17年連続で減少している。消費税引き上げ前の駆け込み需要で0.2%増大した1996年を特殊要因とすれば、1993年以来21年連続で減少している事になる。一方、店舗面積は増え続けており、総販売額がピークをつけた1996年と比して1.47倍に増える一方、総販売額は24.6%減少した。この結果、1997年には99.3万円だった1㎡当たりの販売額は2013年には50.8万円へと、この間48.8%減少した。
資本の利潤率は国債利回りで代替できるので、資本の生産性と10年国債利回りは正の相関関係がある。日本の歴史的超低金利は資本過剰が原因であり、ベースライン予想の世界が現実化すればさらに20年続く事が予想される。
国内の食品ロスは2009年で21%。
人口当たりのイノベーション件数は1873年以降減少している。これは、電気と自動車の時代への移行期とほぼ一致する。
1980年以降、富の集中と格差の拡大は、フランス革命前の身分社会のレベルに戻っている。
国内役員報酬について、2011年から2014年にかけて3.3%増となり、同期間の従業員一人当たり賃金は0.3%減と格差が広がっている。日本の格差上昇幅はドイツやフランスよりも上回っている。
日本の個人資産はもはや相続を通じてでしか増えない。
21世紀は資本主義対民主主義の戦いとなる。資本主義を終わらせる事ができるのは民主主義だけ。
今が近代ではないというのが正しければ、近代の延長線上の政策を採る事(より速く、より遠く、より合理的に)が一番やってはいけない事。次にどういう社会が来るかを考える事。(よりゆっくり、より近く、より寛容に) -
著者の「資本主義の終焉と歴史の危機」という新書の続編みたいな本。
続編と感じるのは、新書を読んだ直後に読んだからそう感じやすいのかもしれない。
この本でも一貫して主張していたのは、暗黒の中世のような時代がやってきて、資本主義にとって代わるような制度が生まれるのではないかということ。
日本は今の経済状況を20年先取りしていて、先進国は今の日本の経済を追随しているかのよう。
日本から変わる、世界に類を見ない制度が作れるはずなのに、実際に行われている政策はこれまでにとられた政策と変わらない。
一体どこへ向かうのでしょうか。 -
水野さんの新刊。
日本では経済に関してかなり深い洞察力を持っている人だと思う。ちょっとこじつけて格差を煽ってる部分もあるのは玉にきず。
それでも色々な考え方や見方の発見があり、自分の考えと照らす面白さもある。
この水野さんとじっくり対話できると考えればこの本は(高いけど)安い。