- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784779009358
作品紹介・あらすじ
東京・高円寺。同じ夜に起きた医学部教授の自殺と女子高生の突然死。しかし、女子高生の姉・桜井礼子は妹の死に疑問を抱き、仲間達と原因究明をはかる。鍵を握るのは、もう一人の医学部教授と都市伝説カクシワラシ、そして謎の言葉"カジュアル"。人間の心に宿る究極の恐怖の謎に迫る書き下ろし長編ミステリ。
感想・レビュー・書評
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はじめは偶然だったかも知れない。だが奇妙とも思えるタイトルにいざなわれ、私は本棚に手を伸ばした。開いた瞬間に背中を何かが走った。
決して大袈裟な表現ではない。文章の持つ稀なセンスが、それだけのインパクトを持つ時があるのだ。ぐいぐい引き込まれるのとは少し違う。だが抑え切れない食欲にも似たものが、確実に先へ先へとページをめくらせていった。
かなり久し振りだが、一気読みをやってしまった。そして最悪の週明けを迎えている。でも何故だろう。仕上がっていない企画書を前に、不気味で満足げな顔を浮かべているのは。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
四十のオバサンには、確かにこの会話文はきつかった。だいたい息子と友人達の会話だって部屋から聴こえると、イライラと不快だもの。テレビで若いタレントが出てきて仲間うちと話し始めると、スイッチを切る事もしばしば。
まぁでもそれはそれで置いておいて、娘が面白がっていたこの小説、読んでみたらお話はよかった。作りも意外に重厚で、よく出来たストーリーだと思います。
玉にきずの、学生達の会話文を平易なものに置き換えたら、なんて考えたけれどそれって東北や関西の登場人物の会話文を標準語にして、読み易くしているのと変わらないのかもしれませんね。 -
何だか色々な事があった小説です。はっきり言って読むのに三日かかりました。こんな事は初めてでした。でもすっごい満足です。お腹いっぱいになりました。ご馳走様をして、しばらくは他の小説は読まないと思います。頭と心がオーバーヒートしていて読めないという事もありますが、他の小説をしばらく読む必要がないくらい充実しています。面白かったあぁぁぁぁ。
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その昔、カットバックを多用した翻訳小説が世に流通し始めた頃、かの村上春樹氏が同形態の小説を書き始めた頃、読者はなかなかついていけず、「読みづらい」「前後のつながりが分からなくなってしまった」と酷評を受けたそうだ。
長らく日本文学は、ひとつないしは一人の視点で描かれるものと定義されてきた。しかしエンタテインメントの先進、欧米でその根幹を任され続ける小説は、常に新しい血を必要とし、先進的な技法は今年も発表されている。
話をこの小説に戻そう。この作品で使われるものは、通常のカットバックどころではない。常に4〜5場面が同時に進行する。トリックの一つとして、時間軸が操作されている箇所まである。ストレートに言って読み易い小説ではないだろう。だが、それでこその叙述系推理小説。恐らく数年後はこれがスタンダードになっている気さえしてくる。
全てを理解出来た読者にだけ伝えられる、恐るべきメッセージといい、何ともうすら寒い作品の登場である。 -
分かる人には分かる。読みやすくはないけれど、そこもいい。あんまりみんなで騒いでほしくない、宝箱みたいな小説だ。
でも、少なくとも一人には既に勧めてしまった。だっておさえられない。面白いんだから。