なぜうつ病の人が増えたのか (幻冬舎ルネッサンス新書 と 1-1)

著者 :
  • 幻冬舎ルネッサンス
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779060267

作品紹介・あらすじ

厚生労働省の調べによれば、1999年から2005年までのたった6年間で、うつ病患者は2倍以上に激増。ついに日本は、うつ病患者100万人突破の時代を迎えた。本書は、現役精神科医がその増加の原因を客観的データで読み解いた、他に類を見ない「現代うつ病論」の決定版。

感想・レビュー・書評

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  • うつ病で精神科にかかろうか検討している人はその前に本書を読んで考えてほしいと思いました。製薬企業によるうつ病の啓発キャンペーンがここまでうつ病の受診者、患者を増やした。その影響力に驚いた。
    病気には製薬企業の動きがあるのではと冷静になるきっかけを与えてくれます。

  • タイトルの答えが明確に描かれている。かくいう私もutuネットから入ったのだった。WEBドラマも見たよ。完璧にやられたね。そして、SSRI。精神疾患系の学会に出るとすごいもんね、製薬会社の接待。こうしたことを初めて日本語で書いてくれた著者に感謝だ。

    ・日本の製薬会社の研究員は全社で2万人、MRは6万人。医師5人につき一人のMRがいる。
    ・米国では食品、車を抜いて製薬が一番広告費を使う業界。
    ・脳循環代謝改善薬の発売中止。
    ・「第O世代」「選択的」「新規」はプロモーション用語。
    ・処方薬の販売量は公表されていない。自動車ですら公表されているのに。
    ・DSMは論理的に奇妙。
    ・アイスランドの抗うつ薬飽和。
    ・抗うつ薬は6週間で6割改善。プラセボは6週間で5割改善。
    ・現在の対照試験はプラセボに割り当てられる可能性を十分に説明する。
    ・ジェイゾロフトは再発予防効果で認可された。
    ・米国では薬害裁判の証人になると製薬会社の内部文書を閲覧することが可能になる。
    ・「休養」「励まし」「棚上げ」の原則は急性期のみにあてはまる。

  • 文字通り、なぜうつ病の人が増えたのか、そしてそれに対してどう対応すればよいかについて書いた一冊。

    1999年以降、日本でもSSRIが認可されて、それ以降増えたこと、そしてSSRIが必ずしも特効薬でないことがよくわかった。

  • ★5
    Reserved
    Library

  • 日本では、1999年に特異的にうつ病患者が増加する。
    これは社会現象を背景としているのであろうか?
    しかしながら、バブルが弾けたのはそれより前だし、自殺者が3万人を超したのは1998年のことだ。
    つまり、社会背景は直接的には作用していないらしい。

    実は1999年と言う年はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、ジェイゾロフトなど)と呼ばれる抗うつ薬の日本における元年、つまり使用が許可された年であった。この薬は薬価が高く、製薬会社にとって儲けの大きい薬である。
    そこで製薬会社は、うつ病をなくそう、というキャンペーンを大々的に展開し、単なる日常的な落ち込みまでも"病気"とした。

    フェルナンド・メイレレス監督の『ナイロビの蜂』を思い起こさせるエピソードである。
    思うにガンも抗がん剤を売らんがためのプロバガンダなのだろうな。
    切れない電球はとっくに開発されているのに、儲からないので販売していない…という都市伝説を思い出した。

  • この本を読んでいて、たしかに昔はうつ病といえば精神科で敷居も高く、治療は精神療法(投薬というイメージはなかった)ということだったなと思いだした。先日読んだムックとはまた違ったエビデンスが多くあって、しっかり研究されているという印象があった。
    実際にうつ病に関わっている人に対しては、うつ病という悲劇のなかに沈んでいるのがおかしいと思う時期が来る、という見解に興味を持った。

  • 自殺の一番多い原因はうつ病。
    この本はうつ病の人の数が数字として増えたことの原因をある程度明らかにしてくれます。しかし、残念ながら、うつ病が“実際に”増えたかどうか、そしてその原因がどこにあるのかまでは断言していません。(推測はしていますが)

    数字の上でうつ病が増えた原因は、製薬会社のマーケティング戦略。
    これにより、精神科の受診者数が増えたことが原因。

    そして、認知させることにより、それが数字だけの問題ではなく、実際にうつ病を増やしている可能性がある、という指摘。
    抗うつ剤の効果はプラセボと比較して著しく効きがいいとはいいがたいという実験事実と、副作用などのリスク。

    例えば「抗うつ薬服用群の方がプラセボ投与群よりも、自殺者の比率が1.8倍と高かったのである。統計的な有意差はなかったが、予想外の結果だった」

    何よりも、統計的に見ると抗うつ薬がうつ病を減らせていないという事実。
    もちろん、重症化する患者の中には抗うつ薬が効く人はいるけれども、とりあえず薬を投与してしまう大勢の日本の精神化医のやり方に疑問をなげかけているわけです。

    この本がうったえようとしていることはたくさんありますが、個人的に一番重要だと思ったのは、会社や私生活の問題がうつ病の原因であるならば、それに向き合わずに薬の投与だけでうつ病が解決するわけがないという指摘。

    もちろん、バイアスはかかってると思いますが、自殺の問題についてそれが持つ側面の一つを知ることができると思います。何より、自身がそれを回避するためにも。

  • 幻冬舎MCというと自費出版ブランドのイメージがあって全く読まなかったのだが普通の書籍も出しているというのは初めて知った。。。

    本書はうつ病のDisease mongeringの先鞭をつけた本。

    今や抗うつ薬の市場は巨大なものとなっている。パキシルの売上は世界全体で年間4000億円。日本の抗うつ薬市場は1000億でそのうちパキシルが500億だが、果たして本当に必要なものなのか。効果の無い薬は害もないので抗議活動も起こりにくい。また、薬に関する議論は一人でも効果がある患者がいるのであれば継続すべきだ、という意見が通りやすい

    ・1998-99にかけ、アバン、カラン、エレン、セレポート、ホパテといった脳循環代謝改善薬が効果のないことが実証され、市場から退場していったが、最終的な売上は一兆円にのぼっていた。

    ・早期受診、早期治療というのもデータとしてはそうなのかもしれないが、早期に受診するということは罹病期間が短いということなので、それだけ軽症で回復しやすいということ。早期治療の効果なのか、選択バイアスにすぎないのかは分からない。癌やエイズのように治療しなければ必ず進行するというものであれば早期受診・早期治療の方針は有効だが、うつ病は必ず進行するものではない。

    ・ネメロフは製薬会社から数百万ドルの利益供与を受けていたと議会で追求されており、エモリー大学も辞職している

    ・うつ病学会はもともとはGSKの支援で「うつ病アカデミー」という研究会として発足したもの

  • 著者は、産業領域のメンタルヘルスを専門としている精神科医で2010年の発刊。

    なぜ1999年を境に日本でうつ病が急増したのか?
    他の先進国に於いてもある年を機会に、うつ病の急増がみとめられる。その機会が「SSRIの導入」と考えられるというもの。

    世界において、SSRIの発売開始後、鬱病患者が急増する。それに伴い、うつ病の啓発活動が盛んに行われるようになり、うつ病受診者やメンタル休職者が急増している。また、軽症うつ病にはそれほど効果がないし、自然に回復する患者も多い。イギリスにおいては軽症うつ病には、初期から抗うつ薬を使わない方針である。アメリカの精神医学会うつ病ガイドラインでは「患者が希望するならば軽症うつ病の初期の治療として抗うつ薬を使用してもよい」とされている。

    とはいえど、著者はSSRIの使用を批判するものではなく、新しいうつ病の啓発活動、情報の伝播を目指しているものと思われる。

    うつ病治療の説明とともに、リハビリテーションの重要性や家族や本人、社会のうつ病に考え方について、わかりやすく説明された良書。

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    【内容(amazonより)】
    厚生労働省の調べによれば、1999年から2005年までのたった6年間で、うつ病患者は2倍以上に激増。ついに日本は、うつ病患者100万人突破の時代を迎えた。本書は、現役精神科医がその増加の原因を客観的データで読み解いた、他に類を見ない「現代うつ病論」の決定版。
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    【目次】
    はじめに

    第一章 うつ病患者が増えている
    1 うつ病診療の変化
    2 うつ病の増加に悩む職場
    3 抗うつ薬市場の拡大

    第二章 なぜ一九九九年からうつ病患者が増えたのか
    1 ストレス仮説と一九九九年
    2 他の先進国はどうだったのか
    3 SSRI導入後の日本

    第三章 なぜ「SSRI現象」は起きるのか
    1 SSRIと薬価
    2 うつ病と受診率
     かつてうつ病の受診率は低かった/SSRI導入後、受診率が上昇
    3 製薬会社が行う病気の啓発運動
    4 SSRIの歴史
    5 うつ病の啓発活動の実際
    6 精神科バブル
    7 国や学会が予期できなかったこと
    8 病気の啓発活動の時代

    第四章 「SSRI現象によるうつ病診療への影響
    1 受診率の向上と患者層の変化
    2 啓発活動はうつ病を増やす?
    3 日本のうつ病の状況
    4 うつを病気と認識するメリット、デメリット
    5認知療法と自己治癒力

    第五章 抗うつ薬の有効性について
    1 アイスランドの憂うつ
    2 抗うつ薬と偽薬の差はどれだけあるか
    3 軽症うつ病には抗うつ薬は効果がない?
    4 再発予防や中等度以上のうつ病には抗うつ薬が有効
    5 抗うつ薬と自殺に因果関係はあるのか
    6 SSRI VS. 従来の抗うつ薬

    第六章 増え続けるメンタル休職への取り組み
    1 メンタル休職者への対策
    2 復職支援とリハビリ
    3 うつ病患者の家族の方々へ

    おわりに
    新書版おわりに
    注・参考文献
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著者プロフィール

パナソニック保険組合健康管理センター・メンタルヘルス科東京担当部長
京都大学大学院医学研究科健康増進・行動学分野客員研究員
1963年生まれ。九州大学医学部卒業。九州大学附属病院にて内科研修。東京女子医科大学病院にて精神科研修。国立精神神経センター(現・国立精神・神経医療研究センター)研究員,日本学術振興会在外特別研究員(カリフォルニア大学サンフランシスコ校),東京女子医科大学精神科講師を経て,2006年より現職。

「2022年 『なぜ抑うつは指数分布に従うのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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