立川談志の正体: 愛憎相克的落語家師弟論

  • 彩流社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779117572

作品紹介・あらすじ

談志が死んだ!
落語への想い。師への入門。師のスゴイところ、セコイところ。師の取り巻き連中。師とお金等、「落語家・立川談志」の核心をブラックが切っ先スルドク突く。
立川談志、2011年11月21日死去。版元各社は早速追悼本の準備を始めたという。漏れ聞くところでは、最大手K社は立川流の弟子で小説も書ける落語家Dが書くらしい。間違いなく大半は礼讃本になるだろう。しかし、それでは落語家にとってシャレにならない。様々な事情で立川流を「除籍」となり、その後はフリーで落語家を続ける快楽亭ブラック。本書では、師弟のあいだであったことのほとんどを開陳し、さらに「談志論」にまで至る。

感想・レビュー・書評

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  • これはむちゃくちゃ面白かった。談志に対する悪口雑言の数々。でも、これこそが「もし談志が同じ立場だったらするだろう」対応なので、一番分かった弟子の態度であろう。談志も「小さん師匠の話はしないよ」と師匠の逝去まもなく言ってましたねえ。

  • 曰く「立川談志は富士山に似ている」と。つまり、遠くで見る分には華やかで立派であるが、近くで見ればゴミが散乱していて見られたモンじゃないと。

    たぶんカリスマを帯びた人は往々にしてそうなのだ。
    それは見る方の憧れが強すぎてしまうこともあるだろう。

    家元でもなく、芸人でもない、ひとりの人間立川談志への愛憎をこめた一冊。

  • 立川談志の正体を「誰よりも落語を愛し、誰よりも落語に誇りを持ち、その道を極めようとした究極の落語馬鹿だと答えよう。そして誰よりも金に執着した男でもある」とする弟子であり大ファンであり被害者?でもある著者が、どこまで本当か分からない談志のスキャンダラススクープを赤裸々に実名批判し卑猥で不謹慎ネタたっぷりに料理している。ただ最後、サゲの後のつぶやきで談志師匠への本当に深い愛を知ることができる。このしみじみとしたさりげなさが落語家としての著者を信頼できるところだと言えよう。

  • ちょっと自分に甘い感じだけど面白い。

  • 文体が噺ことばみたいで読みにくいところもあるけど、とても面白い。
    ブラック師匠は談志師匠が好きだったのか嫌いだったのかよくわからん(。・w・。 )
    でも読み終わったら私は談志師匠がますます嫌いになりましたよ~

  • ブラック師匠ならではの視点――カネに汚く、自分に甘い立川談志の姿が見られる。というだけでなく、「家元の落語」という一節がすばらしい。「談志師匠って何が良かったんですか『芝浜』ですか?」と聞かれて「よくねェよ、あんなもの。家元の『芝浜』がいいって奴はよっぽどの田舎者だよ」と説明する。たしかに、談志の「落語は業の肯定」だという落語論と、『芝浜』は合わない。なのになぜやるのか? 〈名も無い落語好きの少年が、志ん朝師のようなサラブレッドとライバル視され、努力して遂には落語会のカリスマと呼ばれるようになった。そんな自分を投影できる「芝浜」とか「鼠穴」とか、コツコツと努力した人間が最後に報われるって話が、実は大好きだったんじゃなかろうか〉
     続いて「何が良かったんですか?」と問われて「『黄金餅』『富久』『鼠穴』金に執着する人物を描かしたら天下一品」「『らくだ』のように自分の中に屈折した恨みを持っている人間も凄かったね」。
     ここだけでも1冊の値打ちがある、と思う。
     

  • 快楽亭 ブラックによる談志本。
    人が亡くなると、どんな人でもあたかもすごくいい人だったかのように
    書かれることが多いが、この本はそういったことがないのは良かった。
    本の内容がどの程度まで本当か知らないが。

  • 立川流応援団(必ずしも熱狂的な談志ファンではない)としては、一応目を通しておくべき本と思い、読了。真実かそうでないかは別として、色々面白いエピソードが満載。ブラック師匠の一門内でのかつての位置づけがわかって面白かった。さくさく読めます。

  • 人間だれしも富士山みたいなのかもしれないなー。文章は軽快で読みやすい。ただ誤字脱字が多いけどね。

  • 立川談志は偉大な落語家である。ただ、そのことと談志の人間性とは別問題だろう。その区別がはっきりしない手放しの礼讃が氾濫しているのには、はっきりいって食傷している。
    それに異を唱え、神輿に矢を射掛けたのが、談志の弟子でありながら立川流を除籍になった快楽亭ブラック師。本書は、談志の死の直後、独演会でかけた「談志が死んだ」やマクラでふっていた談志ネタをまとめた内容となっている。金に汚い落語馬鹿・談志の姿が浮き彫りにされる。
    でも、突き放すようにしながらも、ブラック師は談志への愛を捨てていない。塚越孝さんの「談志はしか論」(ムック『日本一の落語家』)のとおり、ブラック師も「はしか」にかかった一人なのだ。
    塚越さんの書くように、談志のことは「神格化せず、いい距離で付き合って行きたい」と感じる今日この頃である。

  • 愛憎と照れとシャレが入り混じった愛すべき追悼。晩年の声も出ない体調でも落語を続けた全身ドキュメンタリー落語家の追悼には、野暮な神格化よりこういう俗世臭い文のが相応しいのではないか。

  • 談志さんが亡くなってから、所謂、礼讃やちょうちん記事が多くて、正直うんざりしていた。
    本著は、変に褒めちぎる事もなく、良い事も嫌な事もすべて、等身大の立川談志が語られている気がする。
    ある意味、偉人伝だと思う。

  • 談志がケチなのは有名ですが、いろいろと面倒くさい人だったわけです。「悪口」という意味では談志へのオマージュとも言えるわけで、こういう愛され方もいい。故人のことは美化されがちですが、談志が死んだ後のコメントでは柳家小三治のそれがかっこよかったなぁ。参考までにhttp://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/800/102201.html

  • 立川談志から唯一破門された(破門と言っても実際に判決を下したのは立川流顧問の吉川潮だが)落語家、快楽亭ブラックの「素顔」の立川談志評、と銘打った追悼作品?およそ、落語家は死ぬと名人で良い人、となるのだが、「あれじゃ、まるで談志がいい人みたいじゃないか」ということでペンを取ったのがブラック師匠。

    ブラックの毒舌は満載で談志が如何に弟子に対してヒドい師匠であったか、特に金に汚いのか、と声を大にして罵っている。が、しかしそれは既にあちこちで立川流の弟子達が語っている談志像であり、決して新ネタではない。新ネタと言えば破門された後も浅草のとんかつ屋とかで会ったりしたという懐かしい思い出を語るもので、却って弟子想いの談志像が浮かび上がってくるのだから皮肉なもんだ。

    弟子の頃のブラックは外ではメチャクチャをやっても談志の前ではおどおどしていた、と自ら書くように流石のブラックをしても談志には頭が上がらないのかもしれない。ブラックを持ってしても悪人に描けないのなら「本当に談志は良い落語家だった」となってしまいそうだ。

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著者プロフィール

1952年町田市生まれ。父は米国人、母は日本人。落語家。映画監督、脚本家、俳優、映画評論家、風俗体験リポーター等をこなす多才な芸人。元妻は女優の川口朱里。立川談志の命により「二代目快楽亭ブラック」襲名するまで16回改名。しかし借金がもとで落語立川流を除籍となる。古典落語に加え、艶話や放送コードに抵触するネタを盛り込んだ新作でファンを魅了。主な著書に『日本映画に愛の鞭とロウソクを―さらば愛しの名画座たち』『快楽亭ブラックの放送禁止落語大全(1)』『快楽亭ブラックの放送禁止落語大全(2)』(洋泉社)。『歌舞伎はこう観ろ!』(彩流社)。現在、自主製作CDシリーズの「借金男」が10巻、「ふたたび借金男」が3巻まで、そしてDVDが多数出ている。

「2012年 『立川談志の正体 愛憎相克的落語家師弟論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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