カート・ヴォネガット (現代作家ガイド)

  • 彩流社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779117916

感想・レビュー・書評

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  • 「科学的真理」よりも「無害な非真実」を追求したSF作家
    「無害な非真実」?・・・彼はこれをフォーマと呼んでいますが、もちろん最近流行の「オルタナティヴ・ファクト」(代替的事実、要するにウソ)とは似て非なるフィクションの事ですからご注意を。
    現代作家ガイドなんて堅苦しいイメージだけど、本書は何よりヴォネガットのファンであるグラフィックアーティストのYOUCHANこと伊藤優子さんの編集により装丁はポップに仕上がり、愉快なイラストがあちこちにちりばめられてます。『ヴォネガットファンは新規読者獲得の夢をみる』なんて素敵なタイトルの漫画も2編、それとヴォネガット家系図/作家交遊録、ゆかりの地MAPなんてのあってUI的にも優れものです。
    そもそも本書はカート・ヴォネガットを読むための指南書でもありますから、研究者によるお硬い文章も充実。特に監修の巽孝之氏に始めとする翻訳家や大学の先生等による寄稿「ヴォネガッドを語る」は読み応えいっぱいで何度でも御代わりできる代物で、従来のファンはつい自分の本棚に手を伸ばして再読したい気持ちにさせられるだろうし、初心者でも本書の「ヴォネガット作品ガイド」を読み込めばいっぱしのヴォネガッド通になること請合い(バーナード嬢曰く『一度も読んでいないけど私の中では読破したっぽいフンイキになっている』)って具合にまさにナイス、ナイス、ヴェリ・ナイスな仕上がりになってます。ハイホー!
    1922年11月11日生まれのヴォネガットは2007年4月11日臨終を迎えました。享年84歳、「彼は今天国にいます」

  • カート・ヴォネガットという作家への愛が詰まった一冊。

    自分が読んでいるヴォネガット作品は小説のみなので、インタビューを集めた章では自分の知らなかった作家本人の姿が垣間見ることができた。

    ちょっとショックだったのが、アメリカで発売されたばかりらしい(この作家ガイドの当時)ヴォネガットの伝記のレビュー。伝記の執筆者が執筆のためにインタビューをし始め、信頼関係を築き上げようとした矢先にヴォネガット本人がなくなてしまったらしいが、膨大な手紙や知人の話を聞いて書き上げたというその人物像は、なかなかに絶望に満ちたものだったらしい。インタビューのときのユーモアを欠かさない語り口とは対照的で、ぜひともその伝記を読んでみたいと思った。

    ヴォネガットゆかりの場所をまとめた地図は素敵。
    巻末近くに国内外合わせた論文などの資料一覧があり、卒論などでこの作家にまつわる文章を書くときには大いに役立ちそう。

  • 大好きな、たぶん一番好きなヴォネガットのガイドブック

     もちろん、ヴォネガット礼賛の作品ガイドなんだけれど、その部分よりも『ハリスン・バージロン(改訳決定版)』と『魔法のランプ(オリジナル・バージョン)』の収録がたいへんすばらしい!

     両方とも初めて読む作品なんだが、大好きなローズウォーター路線のとてもいい作品だ。前者は平等を後者は金を扱う物語。特に後者は、後から読む予定の「バゴンボの嗅ぎタバコ入れ」に収録されている改訂版とは異なることに価値がある。改訂は作者自らが行ったとされているが、あまりに《気が抜けたビール》状態である。それに比べてオリジナルは、《シュワ》っとしたテイストにあふれている。これだけで価値あるムックだ。

      『魔法のランプ(オリジナル・バージョン)』はわずか9ページのショートショートだが、コピーして保存しておきたい。すばらしいショートショートだ。このムックの評価は、この作品に対してのものであることを明記しておこう。

著者プロフィール

1942年、静岡県浜松市生まれ。英米文学翻訳家。主な訳書にクラーク『2001年宇宙の旅』、オールディス『地球の長い午後』、ブラッドベリ『華氏451度』、カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』、ディレイニー『ノヴァ』ほか多数。

「2022年 『吸血鬼は夜恋をする』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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