欲望問題: 人は差別をなくすためだけに生きるのではない

著者 :
  • スタジオポット
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784780800005

作品紹介・あらすじ

『魔女の息子』で第40回文藝賞を受賞した作家であり、ゲイ・ムーブメントの先駆的役割を果たしてきた著者・伏見憲明が、「人間学アカデミー」(小浜逸郎氏主宰)で語りおろした講義録をもとに大幅に加筆・訂正し書き下ろした渾身の一冊が、この『欲望問題』です。



「痛み」を「正義」とする「差別問題」を、「痛み」も「楽しみ」も等価な「欲望問題」だと読み解き直す<1章──「差別問題」から「欲望問題」へ>。

伏見憲明自身の個人的な体験から生まれた「性別二元制」という捉え方を、15年を経てあらためて自身がその意味を問い、既存のジェンダー論に痛烈な違和を投げかける<2章──ジェンダーフリーの不可解>。



共同性からの自由を目指すのではなく、多様な「欲望問題」を抱える共同性を認め合い、個人の「痛み」を社会に問いかけていくことを不断に繰り返していくという<3章──アイデンティティからの自由 アイデンティティへの自由>。



副題は、「人は差別をなくすためだけに生きるのではない」。「差別がないということ以外にそれを「幸福な状態」と考えうる根拠は何なのか」と著者は問います。実存に根ざした極めて平易な文章でつづられていますが、著者があとがきで書いているようにシンプルな文章で根源的な問いをつきつけた、まさに「パンクロック」な本です。

感想・レビュー・書評

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  • うーん。若いころだともう少しいろいろ考えたし、言えただろうけれど。どうありたいかを考えること自体がかなり意識的なことだけに今となるとぐるぐる回るばかり。差異をどう受け入れるかが自分ごとになってないと言われたらその通りだし。
    特権化と差異の話。生活実感と言上げの行きつ戻りつ。

  • 予想より興味深く読めた。差別問題ではなく欲望問題というところや、正義があると思っていても社会に許容されることとのバランスというか取り組みが必要という点は面白かった

  • 筆者はゲイである。だからこの本を書いた。そしてこうも書いている。
    「命がけで書いたから、命がけで読んでほしい」
    同時に読んだ「THE NEW JOY OF GAY SEX」で、権力は自分たちの地位、富を守るためにゲイ・レスビアンを弾圧すると書いてある。
    社会は常に戦争を内在させている、戦争になれば彼の恐れは事実となるかもしれない。つまり、命がけで社会に対峙する気構えが必要だということだ。難しいが。

  • 朝日講座 課題文献

  • フェミニズムやジェンダーフリー派の人たちに抱いてたもやもやが少し晴れた。

  • 概要
    本書は,「差別問題」を「欲望問題」と捉えることが適切であると至った過程を,著者の経験にもとづいて語る『第1章「差別問題」から「欲望問題」へ』,著者自ら提出した<性別二元制>という図式や,ジェンダーフリー論に対する批判的(再)検討を加えた「第2章 ジェンダーフリーの不可解」,X-MENを題材にある特定の共同性やアイデンティティについて論じた「アイデンティティからの自由 アイデンティティへの自由」の3章構成。

    2010年6月11日発行の.book版 Ver.1.1

    感想
    ジェンダーやセクシュアリティ,差別の問題は,私自身にとって「痛み」を伴うような切実な問題ではないので,著者があとがきで望んでいるように「命がけで読」むことはできなかった。しかし,ジェンダーやセクシュアリティの問題は,やはり興味深く,これからもいろいろと勉強し続けたいと思った。

    私は,20代のころから,これらの問題に興味があり,伏見憲明さんの著書をはじめとする内外の専門書などを読んだり,シンポジウムやパレードにも参加したりしていた。もっとも,ここ数年は法律家になるための勉強に専念していたので,その手の勉強はご無沙汰だった。今回久しぶりに,伏見憲明さんの著書を読んで,以前の気持ち―弁護士としてこれらの問題に関わりたい―は失われていないことがわかった。

    勇気を出して,著者がママをしている新宿二丁目のバー「エフメゾ」に行くぞ……そのうち。

  • 「欲望問題」についてもっと読みたかった。「ジェンダーフリー」に関する議論が結構長い。つながってはいるとしても。

  • 評論と言うよりはレポート。今何に対してどう行動しているのか、どう行動していきたいと思っているか。

  • 平等とか地域開発とか、

    掲げている側がやってあげるというスタンスがある気がして、sごく気持ちが悪かったけど、
    このほんのいう、みんながしたいっていうことのせめぎあいの調整の問題なんじゃないのかな、って思った。

    むずかしい

  • 問題提起の本なのだと思う。
    「いやいやそれは」と語りたくさせることを意図しているような。
    だからか、わざと論点をずらされているような具合でイライラした。
    「差別」ではなく「欲望」というのはわかるけれど、「欲望したくない/されたくない」という消極的な欲望しか持てないAセクとしてはピンとこない。

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著者プロフィール

1963年生。作家、ゲイバーのママ。慶応義塾大学法学部政治学科卒。1991 年に『プライベート・ゲイ・ライフ』にてゲイであることをカミングアウトし、90 年代のゲイ・ムーブメントに大きな影響を与える。2003年に『魔女の息子』で第40回文藝賞を受賞して小説家としてもデビュー。2013年、新宿二丁目にゲイ・ミックス・バー「A DayIn The Life」を開店。2017年、ウェブマガジン「アデイonline」を開始。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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