劇画家畜人ヤプー【復刻版】

  • ポット出版
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784780801439

作品紹介・あらすじ

1971年に「都市出版社」、1983年に改訂を加えて「辰巳出版」から刊行された『劇画家畜人ヤプー』を復刻。

三島由紀夫、澁澤龍彦らが絶賛した戦後最大の奇書『家畜人ヤプー』を石ノ森章太郎がコミック化。
復刻に際し、丸尾末広(漫画家)による解説文を収録。

●あらすじ
 196×年、西ドイツに一挺の空飛ぶ円盤が墜落。それは二人の関係が結婚を控えた「恋人」から「飼主」と「家畜」に変容していくことを告げる報せでもあった─。
 翌春に挙式を控えた日本人留学生・瀬部麟一郎(リン)と東独の名家の娘・クララは墜落した円盤から謎の女性・ポーリーンを救ける。人間に似た奇怪な生物を飼い慣らす彼女は2000年後の未来世界イース(EHS=The Empire of Hundred Suns)から航時艇(タイム・ヨット)に乗って過去世界を遊歩中に墜落したという。麟はポーリーンの飼う畜人犬に咬まれ動けなくなってしまうが、彼女は自分の別荘にある緩解薬を打てば治るとすまして言う。さらにはクララが麟と婚約していると聞くと、「時代の罪」であり「病的な病」であると断じる。白人女性がすべてを支配するイースでは、黄色人種は「家畜」であり、「人間」ではないからだ。ポーリーンの言葉に反発しつつも、クララは愛する麟を治すため、薬を求めて2000年後の未来へ行くことになる。「麟を一生愛し、離れない」ことを誓って。
 ポーリーンはクララの「誤った考え」を矯正するために、妹ドリスや、兄セシル、義弟ウィリアムらを紹介し、歓待する。女権社会であり、白人のみが「人間」とされるイースにおいて、まさに最高の地位にあるクララは霊液、矮人、扉魂といったヤプーを利用した高度な文化・文明に触れ、戸惑いながらも少しずつイースに馴染んでいく。一方、麟は皮膚の色からヤプーであるとされ、虫を呑まされ、浣腸をされ、挙句に皮膚を改造されてしまう。「人間」と「家畜」。二人の立場はこの世界では全く違うものであった。
 クララはようやく緩解薬で動けるようになった麟と二人での会話を求める。イースで最高の立場にあってこの世界を理解しつつあり、さらにはウィリアムに愛情を感じ始めていたクララ。対極に「家畜」として扱われ、イースをおかしな異世界と捉え続ける麟。結婚を誓い合った二人の気持ちはとうにすれ違っていた。逆上した麟はクララと心中をはかるも失敗。その結果、麟は去勢され、クララはついに麟を「人間」ではなく、「家畜」であると認識する。
 クララはイースに帰化し、麟を自らのヤプーとして飼うことを決意する。「麟を一生愛し、離れない」という、未来に来る前に自らに課した誓いを守るために。
 しかし、クララの気持ちの中で、麟との関係性はイースに来る前とはすでに変わっていた。「恋人」から「家畜」へと─。

感想・レビュー・書評

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  • 高校生当時にたぶん幻冬舎アウトロー文庫が展開され、その中にあったので1巻だけ買ったが、挫折していた。
    その後5巻まで買い積読にしている。
    なんと石ノ森章太郎が漫画化していたのか。
    ポット出版による復刻版。
    丸尾末広が解説文を寄せているのが嬉しい。
    造本も美麗。

    巻末の、当時の刊行年度を見ると、まさに原作の都市出版社版が出版された翌年には漫画化されているので、石ノ森先生もとからファンだったんだろうな。
    思えば1970年、三島は雑誌「奇譚クラブ」連載を愛読していたが、単行本では読ま(め)なかったんだな。
    三島と同じく石ノ森先生も雑誌で追いかけていたのかも。
    いや、石ノ森の漫画も都市出版社から出ているということは、メディアミックスみたいな形だったのかな。

    ざっと見比べる限り、文庫5巻のうち2巻くらいまで、この1巻で漫画化されている。
    なんでもこの復刻版は全4巻。

    シュガー佐藤に作画を託した2巻以降を買い求めるか、電子で積んでいる江川達也を読むか……。もちろん原作も読みたいけど。

    なんでもこの後、アンナ・テラス→アマテラス、スーザン→スサノオ、エンマ・ダイオン→閻魔大王、竹取物語、
    のように神話や伝承や古典が、本来はEHSがタイムスリップして観測されたものだったのだ、と読み替えられていくらしい。
    歴史ジャックの本ということか。
    wikipediaの記事が面白い。百科全書的小説だから、wikipediaとの相性がいいんだろうな。

    ところで初めて聞いたのでポット出版について調べてみたら、結構その筋の出版も多い。
    田亀源五郎、伏見憲明、松沢呉一……知らなんだ。

  • 日本人、黒人、白人、男女間の差別が生々しく描かれている。生々しいという表現より、変態とかそういった類の表現が近いだろう。

    読み進めて行く中での見所は主人公とヒロインの関係性と思考、言動の変化である。

  •  30分程度でパラパラ読んだので正当な評価を下さる自信はないが、なんというか「下品」という一言に尽きる。内容に関してはマゾヒズム色が非常に強く、ここで書くのも憚られる内容である。筆者がこの本を書く経緯や時代背景を詳しく知らないのだが、今なら完全にアウトであろう。なんなら、現代のポリコレの対義語はこの「家畜人ヤプー」といっても良いと思う。 
     まあこのように悪い評価を投稿しているが、かくいう私もこの本の内容がヤバいという評判に惹かれて読んでしまったので、一定の魅力がある点は認めざるを得ない。しかし、読了後の評価はまぁ読んでも読まなくてもいいかなという感じである。
     さて、この本の構成に関してだが、ストーリーと並行して、それを補足する形で途中に様々な日本人を改造した説明文や日本人が奴隷化するに至る人類学的証拠の論文のようなものが散在している。それらのいずれも衒学的で説得力に欠けると言いたいところだが、まぁその適当さを愉しむのも一つである。
     内容であるが、まぁ違和感を多分に感じるが、一番は発展した文明であるはずの登場人物達があまり譲歩を使わずに、一方的な決めつけや押し付けの言葉を使う所が引っかかった。一つの答えがあると信じて疑わない人達が登場人物なので、もしこの場に自分がいたら喋ってても話通じないだろうからイライラがたまるだろうなという想像が膨らむ。
     だが、もしそのような態度をとる人物をわざと登場させることで、実は読者の白人社会や人種差別に対するある種のアンチテーゼを煽ることを裏テーマに筆者が考えていたのならば、なかなか風刺が効いていて面白い。

  • 途中途中に用語説明を載せてくれているけど、その説明文が毎回長すぎたので飛ばしながら読んでました。
    がっつり人種差別の内容だけど、面白かったです。最後の結末は、「そうなっちゃうんだ」と驚きました。
    絵のタッチがいい味出してますね。

  • やっちゃったなー感がたまらない。
    石ノ森章太郎の描く、高圧的な女の人が好きなのです。

  • 江川達也verだとなかった高天原編もあるので驚天動地の域に達している。完結していないことが残念であるが解説が丸尾末広・・・豪華である。沼正三氏よ永遠なれっ!SFとSMは不滅である。

  • 特に何てこと無いSFマンガである。特筆すべきはこれが40年前に描かれていること。

  • 石ノ森章太郎もマンガ化していたんだね。

  • 江川達也版を読んでずっと続きが気になっていたので。
    …ってこれも途中で終わるんかい!!な終わり方。
    劇画版2も復刻されてるようなので、いつか読みたい。

  • 熊野寮に転がっていたものを拾って読んだ。
    日本人が人の扱いを受けない未来の世界に主人公らが連れられるというSF。
    日本人が白人の玩具として扱われる世界で、我々の価値観を凌辱します。

    かなりキツい本です。
    読書中は悪夢を見ている気分だし、読み終わっても尾をひきます。
    さすがはドグラ・マグラと並べられて奇書と言われるだけある。
    また読みたいとは思わない。小説の方も読みたくない。
    だが、衝撃的という意味ではこの上なく衝撃的だったので評価は星5つで。

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著者プロフィール

石ノ森章太郎

一九三八年(昭和一三)、宮城県生まれ。高校在学中に『二級天使』でデビュー後、一貫して日本漫画界の第一人者として活躍。代表作に『サイボーグ009』(講談社児童まんが賞)、『佐武と市捕物控』(小学館漫画賞)、『マンガ日本経済入門』、『マンガ日本の歴史』全五五巻(アジア漫画大会漫画アカデミー賞大賞)、『マンガ日本の古典1 古事記』など多数。一九九八年(平成一○)一月死去。

「2022年 『文庫 新装版 マンガ日本の歴史 全27巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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