波紋と螺旋とフィボナッチ

著者 :
  • 学研メディカル秀潤社
4.13
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本棚登録 : 393
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784780908695

作品紹介・あらすじ

『細胞工学』の人気連載「こんどうしげるの生命科学の明日はどっちだ!?」の単行本化.著者ならではの面白く分かり易い文章で,生物の形や模様が決まる精妙なメカニズムが直感的に理解できる内容.指紋のパターンが決まる仕組みに迫った書き下ろし作も収録.

感想・レビュー・書評

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  • 本著も面白いが、続編の『いきもののカタチ』を先に読み、内容が重複していた事や、寧ろ続編の方が面白いというか、説明が上手くなっている気がする。それと、タイトルが小難しい感じがするが、内容は努めてくだけた口調で分かりやすくされているので、そのギャップは勿体ない。もっと、手に取りやすいタイトルにすれば良いのに。

    波紋や螺旋。規則性のある生き物の模様や造形の話が本著の中身ではある。その規則の一つにフィボナッチ数列が使われているのだと。フィボナッチ数列とは、1.1.2.3.5…のように一つ前の数字を足していく数列。巻貝の螺旋やひまわりの花、松ぼっくりなどに、その数列が見出される。難しい話のようだが、著者の語り口はあくまでも素人向けで分かりやすく、合コンの話やドラクエの話や、まあ、そういう雰囲気の本である。しかし、自然界の法則を見抜く神秘もあり、胸熱な中身であり、つまり、科学者にしき許されぬような楽しみを一般人に道案内してくれるような良書。

    一つだけ残念なのは、何故か、が曖昧な事。事実を見て、法則がある事を解明したのは良いが、何故、その法則があるのか。植物の葉は、フィボナッチにより均等にバラけて光合成に有利だから。でも、作者が言う通り、本当にそれが一番有利?太陽光が真上からなら当てはまるが、そうではないよね、と。隙間なく、効率を求めて配列すると、自ずとそうなるというのが答え。しかも、厳密には完全にフィボナッチではないらしい。

    生き物は人間の都合で成り立っていない。数学の美しさなど、人間の自己満足でしかないのかも知れない。

  • ブクログ仲間さんの本棚で拝見し、なんともおもしろそうだとわくわくしながら手に取った1冊。

    アンモナイトの巻き方、シマウマの模様、指紋のでき方…などなど、生物の形や模様の裏に隠された法則を近藤先生が解説してくださいます。
    模様や形の生成なんてとても複雑そうなのに、「実はシンプルな原理なんです!」と説明されると、驚きとともに爽快感がわきあがってきます。

    特に近藤先生の「ユリイカ!」の瞬間を追体験できる、9章・10章が最高でした。
    シミュレーションの予測通りに魚の模様が変化したときの喜びがひしひしと伝わってきて、科学者の特権をおすそ分けしてもらえたような気持ちです。

    理系ではない私でも楽しく読み進められたのは、豊富なイラストや写真と、近藤先生の軽妙な文章のおかげだと思います。
    数式や物理がわからずとも、科学の魅力を存分に味わえて大満足でした。
    これから自然科学を学んでいく学生さんにも、ぜひぜひおすすめしたい本です。

  • ぽんきちさんのレビューを見て、本屋に注文する。

    貝殻や動物の角の螺旋構造、シマウマや魚の模様がどうしてできるのか解明していく。何故、数学的現象が発生するのか、生物学的意味を洞察していく辺りがモノスゴク面白い。
    シマウマなどの模様や人間の指紋は「波」であるという。この理論を発見したのはコンピュータ理論の生みの親、天才数学者チューリング。解説図の幾つかはチョット理解が足りなかったが、大雑把ながら理解したその理論は驚きの連続で、面白くて堪らない。

    そして、生物に見られるフィボナッチ数、黄金律、螺旋の関係は更に驚き。何故数学的にそうなるのか、僕には理解が出来ないのが残念。ところが、近藤先生は生物学的にはダメ、と更に説得力ある理論を出してくる。只々感服。

    全体的に冗談っぽいくだけた文章で、最後は宝を探してインディー・ジョーンズしようという文章。おふざけで終わるのかなと思ったら、近藤先生がたった一人でチューリング理論を立証していく研究史。よもや、これが本題で、ここまでは壮大なる序章ではあるまいか。
    メンデルは答えが判って実験をしたはずというコラムもこの隠れ実験の伏線だったようだ。近藤先生。ふざけてばかりだけど、その実はかなりの手練れと拝察する。

    自然の摂理を表すと云われるフラクタル幾何学の話は出てこないかなと思いつつ読み進めると、アブラナ科ロマネスコのフラクタル構造がチラッと出てくる。だけど、この本読んでるとフラクタルは生物学的に成立しないと思い知らされた。フラクタルっぽく見える現象も部分が全体を写像し続けているんじゃなくて、全体にも部分にも同じ原理が働いているだけ。近藤先生が明かにしたような生物が螺旋を生み出していく営みなんて、フラクタル理論にはあり得ないよ。

    また良い本に会うために、近藤先生の名前は忘れないでいよう。

  • 語呂のよいタイトルである。
    しかし意味のわからないタイトルとも言える。
    なんだこの無闇と画数の多い漢字の羅列と「ふぃぼなっち」って・・・?
    そう思う人も機会があったら手に取ってみてほしい。
    本書は、とても楽しい、数理と生物の本だ。

    生物の形はどうやってきまり、模様はどのようにしてできるのだろうか?というのがこの本の主題である。
    おとうさん、おかあさん、シマウマはなぜ縞があるか?とお子さんに聞かれて困ったことはありませんか?
    通常、シマウマの模様はサバンナで迷彩色の役目をする、と言われる。でもそれって本当だろうか? 鮮明な白黒は、実際にサバンナで目にすると、相当目立つという証言もある。
    ではなぜ、シマウマはシマシマなのか? この本を読めば、答えがわかる、とまでは言わないが、少なくとも1つの仮説が提示され、その仮説はかなり説得力がある。

    全般にくだけた口調だが(そしてこれが鼻につく人は多分、ある程度いるだろうな、というのが少々心配なのだが)、解説される内容はかなり高度だ。高度だけれどもわかりやすいのが本書の美点である。

    シマウマの縞は、本書タイトルの最初の「波紋」の一例である。生物の模様にある、縞も、斑点も、できる原理は同じであり、簡単にいえば、活性化因子と抑制因子のせめぎ合いである。元々これを考え出したのは、人工頭脳の父と言われるチューリングであり、この現象は、彼の名を冠して「チューリング波」と呼ばれる。長年実在が疑問視されてきたチューリング波の働きを、タテジマキンチャクダイで示したのが本書の著者なのだ(Science 10 February 2012: Vol. 335 no. 6069 p. 677)。

    「螺旋」の例は、貝やアンモナイトの渦巻き、亀の甲羅、そして細胞性粘菌の移動体。著者の手に掛かると、一見まったく違うものが、同じ原理が少しだけ形を変えたものだということが見えてくる。
    異常巻アンモナイトの話は非常におもしろい。

    「フィボナッチ」は、フィボナッチ数列(1つ前と2つ前の数字を足していく数列:例えば1、1、2、3、5、8、13・・・)である。植物の葉の付き方やらヒマワリのタネの並び方など、実は自然界に多いといわれる。
    黄金比とも深い関わりがあるこの数列は、いささか神秘的な感じがするところから、フィボナッチ投資やらフィボナッチ馬券学(「学」・・・?)やら、怪しげなものまで存在する。さて、その真実は・・・?

    挿入されるコラムも、チューリングが悲劇の天才であったことや、偉大だったのになかなか注目されなかったメンデルの業績の秘密など、これまでとは違う視点が提示されて興味深い。
    著者が数理生物学にたどり着くまでの若き日の武勇伝もまた楽しい。

    こんなに笑えるのにこんなに感心させられる生物の本はそうそうない。
    借りて読んだが、買おうと思っている。


    http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/skondo/
    著者研究室HP
    本書に関連するページもあり、おもしろいです。

    *個人的には(いくつか漫画ネタがわからなかったことを除き)、とてもツボにはまった。万人に5つ星の本ではないと思うが、これに5つ星をつけずどうするか!?というくらいおもしろかった。「自然が創り出す美しいパターン」三部作にもう一度トライしようかと思うほど。
    『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』を楽しく読めた人も、『かたち: 自然が創り出す美しいパターン』にいまいち挫折してしまった人も(どちらも自分だったり(^^;))、お薦めです。

    • bokemaruさん
      ぽんきちさん、こんにちは。
      うわっ、これめちゃくちゃ面白そうです!
      ご紹介のHPもちょっと覗いてみましたが、ここもおもしろい!
      数学は...
      ぽんきちさん、こんにちは。
      うわっ、これめちゃくちゃ面白そうです!
      ご紹介のHPもちょっと覗いてみましたが、ここもおもしろい!
      数学はからきし駄目ですが、フィボナッチ数列とか聞くとどうも反応してしまいます。
      読んでみます~。
      2014/01/16
    • ぽんきちさん
      bokemaruさん

      ありがとうございます。
      軽快な説明で楽しい1冊です(^^)。
      お気に召しますように☆
      bokemaruさん

      ありがとうございます。
      軽快な説明で楽しい1冊です(^^)。
      お気に召しますように☆
      2014/01/16
  • 数理生物学は門外漢の分野でしたが、ユーモア溢れる筆致で楽しく学べました。「お宝への旅編」は、著者の実体験が情緒豊かに語られており胸熱です。

    学問のみならず、常識に捉われずに信念を持って取り組むことの力強さは勇気づけられますね。

  • いつも本棚を参考にさせていただいている方のレビューで俄然興味を持った本書。
    う~む、タイトルからしていかにも私の好きそうな分野!いやいや、理系は全く駄目なのだけれど(汗)いわゆる「非線形科学」というやつが大好き。そこへ、またまた知識不足なくせに興味大いにアリの生命科学が絡んでくるとなれば、これは読まずしてどうする!と期待に胸ふくらませて読んだ。

    期待にたがわず、おお~なるほど、いや~面白い!というワクワクの連続。
    らせんのなぞ解き(ここでもまた例の粘菌が登場!いやはや、あっちでもこっちでも取り上げられる粘菌てやっぱりすごいな~と変なところに感心)、亀の甲羅の成長、シマウマなど皮膚模様のある生物のその模様の形成の仕組み(Turing波)、フィボナッチ数についてなどなど、どれもこれも面白くて面白くて一気に読了。

    少し長めの4つのコラムも、生物学に絶大な影響を与えたメンデルの秘密、著者の専門分野であるチューリング波を提唱したチューリングについて、ジンクピリチオン効果(メリットシャンプーといえばコレ!何のことかよくわかってなかったよね~、ジンクピリチオン配合って)、みのもんたと科学の客観性など、非常に興味深いネタ満載で、著者自身も気にかけていたやや過剰とも思える(!)軽いノリの文章も、無視できるくらい楽しめた。

    ただ何しろ数学がダメなので、途中理論の説明のために若干数学的内容が数式を伴って出てきて、どうにもそのあたり私の数学力では少々手こずったのだけれど。
    でもそれを差し引いても、非常に楽しく、わくわくと楽しみながら読める本。
    数学が苦手でも生き物好きならぜひお試しを。

    • ぽんきちさん
      わぁ、お楽しみになれたようでよかったです(^^)。
      続編も出てほしいですね♪
      わぁ、お楽しみになれたようでよかったです(^^)。
      続編も出てほしいですね♪
      2014/01/30
    • bokemaruさん
      ぽんきちさん、コメントありがとうございます。
      これ本当に面白かったです!
      ぽんきちさんのおかげで、また楽しい本に出会えました(^o^)。...
      ぽんきちさん、コメントありがとうございます。
      これ本当に面白かったです!
      ぽんきちさんのおかげで、また楽しい本に出会えました(^o^)。
      続編!!いいですね~、出てほしいなあ。
      2014/01/30
  • 自然界の繰り返しパターンが、数学で解かれていくその発見過程がとても面白い。こんな所で天才チューリングに出会えるとは思いませんでした。ただ私はこの著者のユーモアセンスが鼻について邪魔で、半分以上読み飛ばしてしまいました。余計な飾りを捨てて、シンプルに読みたかった。

  • 反応拡散って面白いですね。世の中にいろいろありそう。

    著者のスタンスは日頃のビジネスにも通じる話であり、とても知的な刺激を受けた

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼
    https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000021225

  • 数理生物学に興味を持ち、この本を手に取りました。
    数式に頼らずイラストや写真を使用して分かりやすく書かれており、入門にぴったりの内容でした。

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著者プロフィール

京都大学医学博士、大阪大学大学院生命機能研究科教授。
世界で最初に生物の縞模様がチューリング・パターンであることを実証。
主な著書に『いきもののカタチ 続・波紋と螺旋とフィボナッチ- 多彩なデザインを創り出すシンプルな法則』(学研プラス)など。

「2022年 『動物の体色がわかる図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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