ベンジャミン・バトン 数奇な人生

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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781600413

感想・レビュー・書評

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  • 映画を見て原作も読んでみたくなり読んでみた。映画は逆に年を取る、というそれだけを拝借して、監督独自の映画世界を作っているのが分かった。本は斜に構えているような、あっけらかん感もある。

    映画では外見を受け入れられない父親はベンジャミンを捨て子するが、本では驚きながらも赤ん坊として受け入れようとする。そして一番の違いは結婚相手に対する感情。映画では相手との間に互いに深い愛情があったが、本ではベンジャミンはだんだん年取ってくる妻に飽きてきて、若い女の子たちと遊びほうけるのである。しかし共通点はあり、壮年期には映画では船乗りで、本では家業の金物卸売り会社で一生懸命働いている。

    そして臨終。これは映画も本も同じ境地かな、と感じた。本でも外見も頭も赤ん坊になり、ついには光も体温も香りも認識できなくなる。これはストンと産み落とされた状態なのだと思う。そして普通の老人としての臨終もきっとこんな感じなのではないか? という気がした。

    この本は年齢ごとの14の挿絵つき。表紙は実年齢20歳、みかけ50歳で結婚した時のもの。・・なんかブッシュ大統領に似ている気がするのだが・・

    1922発表なので、1860年生まれで、生まれた時から老人の大きさで白い髭が生えている、ということになっている。映画では第一次世界大戦が終わった年1918年の生まれという設定だが、本でも戦争は出てきて、1898年に米西戦争に行き、陸軍少佐になった、とある。


    初出:雑誌「コリアーズ」1922.5月号掲載。同年「ジャズ・エイジの物語」に収録された。
    日本では映画の公開に合わせて初めて訳された。日本版「ジャズ・エイジの物語」(荒地出版社)には載っていない。日本版のジャズ~は日本独自編集で原本のジャズ~からは2編のみ。またフィッツジェラルドの短編には良悪あるということで、名作と定評のあるもの以外は読む必要がない、というのが日米双方の研究者の共通了解となっている。と訳者あとがきにあった。

    2009.1.30第1刷 図書館

  • 生まれたときに老人で、年を経るにつれて、どんどん若返っていく。そんな男の物語。
    挿絵が変わっていくのが面白かった。
    年をとっても、子供のころでも、最後は同じ。何もわからなくなって死んでいく。何のために生きてきたのだろうか?
    価値を見出そうとすることが愚かなのだろうか。
    もがくのが自分なんだなと感じた。

  •  ブラピ主演、『ベンジャミン・バトンの数奇な人生』という邦題で何年か前に映画化されていた作品。映画は見てないが、話題にもなっていたのでストーリーだけは知っていた。が、スコット・フィッツジェラルドの原作だとはつゆ知らず。
     フィッツジェラルドと言えば『グレート・ギャツビー』。アメリカ文学の古典と言っても過言ではないほど評価されている印象だけど、意外にも金のために駄作を大量に書き殴っていたらしい(訳者あとがきより)。本作も単純かつちょっと無理やりな設定ではあるが、児童文学と思えばよくできた作品だと思う。人生は儚い。

  • 映画未見。
    この本を手に取るまで、ギャッツビーのフィッツジェラルドの作品だって知らなかったー!
    生まれた時がおじいさん、だんだんと若くなって行く男の話。
    ユーモラスに書かれる中にも哀愁が滲む。
    ギャッツビーもそうだけど、フィッツジェラルドは人生の儚さを感じていたのだろうなと思う。
    けれど、美しさを信じてもいたのだろうなと。
    強い印象を残す作品ではないけれど、ころんとまとまった小説。
    装丁も良かった。

  • 「それでも人生は素晴らしい」

    老人の姿で生まれ、歳とともに若返っていくという現実にはありえない設定の物語。だれとも同じ時間を共有することができない哀しい男、ベンジャミン・バトンの人生が、実に完結に綺麗な文章で描かれている。

    読み終わって一番感じた事は、ベンジャミンが自分の境遇、人生をそのまま受け入れているということ。だれを恨む訳でもなく、孤独な人生をありのままに受け入れている。
    人は常に変化しながら、衰え、死に向かって生きていく。変化することの悲しさを受け入れる事ができれば、人生は素晴らしいものになるのだろうか?
    設定のために児童書のような雰囲気の作品だが、それ故逆に、色々な感じ方ができる作品なのかなと思う。

  • この作品で"curious"という単語が「数奇な」「変な」という意味もあることを知った。覚えた用法を使おうと大学の英語のレポートで使用すると、「なんかこの"curious"は不自然だよ」と言われ、悲しい思いをした。

  • ベンジャミン・バトンという70歳の姿で生まれ、最期は赤ん坊の姿でその一生を終える人間のお話。
    生まれた姿老人の姿ということで、親にも医者にも看護師にも誕生を祝福されない。
    彼の人生の始まりはそんな悲しい、寂しいスタートだった。
    「ベンジャミンの傷つきやすい心に向けて、心ない言葉が次から次へと浴びせかけられた。」という一文がある。
    彼は一時周りからチヤホヤされる瞬間があったが人生のほとんどはその数奇な生まれのせいで心無い言葉を掛けられることが多かったように思う。
    傷付きやすい心の持ち主である彼にとっては本当に辛い日々だったと思う。

    「人間は歳を取っていくに連れて赤ちゃん返りしていってその一生を終える」というが、この物語はそんな簡単な話では無い様に思う。
    長い人生について改めて考えさせられた。

    短いお話なので気軽に読むことが出来た。
    映画化もされていたようで、いつかみたいと思っている。

  • 本の装丁がおしゃれで素敵です.

  • この本は映画化されたらしく、ところがその内容が、原作と全然違うらしい(^^;
    ベンジャミン・バトンの理解者、愛してくれる人が出てきて、「愛することのすばらしさ」がテーマみたいになってるとか。
    もし、ベンジャミン・バトンに理解者がいれば、そういう展開もありだったのかもしれない。
    ただ、原作の中では、現れなかった。
    その救いのなさが、大きな無力感を漂わせます。

  • 映画を見て素敵な物語だと思い、原作を読みたくなったが、映画とは全く違う内容で驚いた。
    この本を読み終わったあと、ふと、「他の人と違う人は他の人の何倍も苦労しなければならない」という言葉を思い出した。

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著者プロフィール

1896~1940  1920年、処女長篇『楽園のこちら側』がベストセラーとなり、妻のゼルダと共に時代の寵児ともてはやされるが、華やかな社交と奔放な生活の果てにアルコールに溺れ、失意のうちに死去。『グレート・ギャツビー』『夜はやさし』等長篇数作と数多くの短篇を残した。

「2022年 『最後の大君』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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