少年は残酷な弓を射る 下

  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781607832

作品紹介・あらすじ

16歳の誕生日の3日前、"事件"は起こった。異常なまでに母に執着する息子と、息子を愛せない母。二人が迎える衝撃の結末とは-?100万人が戦慄した傑作エモーショナル・サスペンス。2005年英オレンジ賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • エヴァが手紙で語りかけるフランクリンがどこにいるのか、バカな私は最後まで想像できなかった。

    上巻は、先が知りたくてたまらないのに、身につまされるエピソードの羅列が苦しくて、数ページ、時には数行ごとに本を閉じて、気持ちを落ち着けないといられなかった。なぜおっぱいを飲んでくれないのか、どうして泣きやまないのか・・・子育てに四苦八苦していたあの頃の気持ちがよみがえって、その晩はよく眠れなかった。
    逆に下巻は本を置くことが出来ず、一気に最後まで読み、しばらく放心してしまった。

    第一子の子育ては、お互い意地の張り合いでうまくいかないということは良くあることだと自分の経験からも想像できるけれど、こんなにこじれてしまう2人だったら、ここまで頑張らずに離れてしまえば良かったのにと思った。でも、この本の中での二人の最後の会話を読むと、むしろ決着は早くついたほうで、離れていればいるほどケヴィンが母を求める力は強くなり、この世で2人っきりになってしまうまで、親子の葛藤は続いたのかもしれないとも思った。確かにエヴァは息子を愛するのが下手だったけれど、誰がどんなにうまくやったとしてもケヴィンを満足させることはできなかったのではないだろうか。エヴァの愛し方の下手さが責められるのなら、ケヴィンの愛され方の下手さも同等に責められるべきだ。

    それよりも、エヴァとフランクリンの夫婦関係。これだけ違う方向を見ている夫婦でありながら、修正をしようとしなかったことが、この家族の一番の問題だったのではないだろうか。

    先日、結婚式のスピーチで聞いたヘルマン・ヘッセの言葉が思い出される。「夫婦とは、お互いに見つめ合う存在でなく、ひとつの星を二人で眺めるものである。」

    この星は遠ければ遠いほどいいのではないかと私は思う。目標は同じくし、近くを並走しながらも、最後の一点までは交わらない、お互いに自立した道を行くこと・・・。

  • 物語とは、不思議なもので、読んでいる間どんな感情の渦に巻き込まれても、最後には静けさが訪れる。

    だから、今読んでいるのが苦しくても最後までがんばって読んで欲しい。


    あの、鈍感で自分の価値観を全面に出して、真実をみようとしなかった愚鈍で馬鹿な夫をまだ愛していると言える主人公が、こんなに愛してと叫んでいる息子を愛せなかった事が、リアルだなと感じた。

    読んで痛感できたのは、出版までこぎつけるのに大変な作品だったし、文化が違うから理解できない事が多々あるのに、「何故そうしたか今になってみたら分からない。」という虚無感を共有する為に必要な通過点を通った人だけが見える世界があったという事。

  • 「母と息子」の話。
    映画よりも原作のほうがいいと思う。

    すべては母親のためにやっていたことなのだろうか。
    母親がああだからこういう子になったのか、すべてが先天的な性格か。同族嫌悪、好敵手、歪んだ愛情……なんとでもいえるけれど、結論は出ない。
    父親と妹の立ち位置が、すごく興味深い。でも、この父親は別に、馬鹿な男だったわけじゃないと思う。ただ普通で、善良だっただけ。そして、その普通さを愛したエヴァの気持ちもすごくわかる。

  • 上巻で、ケヴィンがあまりにも可愛くない子供で、可愛くないどころか、憎たらしい子供で、まったく好意が持てなかった。

    だけど、下巻に入って少しづつケヴィンに対する感情が揺らぐ。

    ケヴィンが高熱を出したとき、それまでのケヴィンとは思えないほど可愛い普通の子供になった。その時になってエヴァは、ケヴィンが今まで、物凄いエネルギーを持って、憎たらしい子供を演じていた事に気付く。
    そんな可愛らしさを持っているのに、どうしてあんな結果に終わってしまったのかと、切なくて涙した。

    でも、ケヴィンのした事はやはり酷くて、妹にした行為は、(おそらくケヴィンが悪意を持って行ったのだと思うが)絶対に許せない。
    だけど、全て、母親エヴァの想像でしかない。確たる証拠はない。

    もしかしたら全て、エヴァがケヴィンを嫌うが故、憎むが故の思いこみなのかもしれない。だけどたぶん、そうじゃないんだと思う。

    ケヴィンは、エヴァに愛されたかったんだろうか。
    愛されたくてあんなことをしたんだろうか。
    ツンデレにもほどがある。

    罪を償って出てきたケヴィンとエヴァは、今度は普通の親子関係を築けるんだろうか。

  • 学校にて凶行を起こした少年の母親、彼女は何を想うのか。
    あくまで主観だが、この母親は息子の事にも無関心だったように見える。文章のスタイルがそうだったように見えるだけかもしれないが……。
    我が子は生まれながらの「悪」なのか、それとも育った環境でどこかで道を誤ったのか。
    霧の中を進んでも結局、霧しか掴めないような読後感だが、読み応えがあった。

  • 原題は、"We Need to Talk About Kevin"。”Kevin”は、犯罪を犯す子供の名前。

    子の犯した犯罪に対する、親の責任をテーマとした小説。破局後の人生における回想の形で物語られる惨劇。

    メディアの暴走なども扱っている。

    2011年に映画化された。

  • 映画を観てからの小説。
    エヴァが好き。夫にイライラ。
    続きがないのに、すごく続きが気になる。

  • (上巻より)

    たしかに母親は自己中心的な感じだし、
    暴力こそないが息子を虐待しているといえるかもしれない。
    しかし、息子が事件を起こしたのは母親の愛を得るため、
    という見方にも説得力がない。

    なにが残酷だったのか、なにが恐怖なのか。
    子育ての経験がないせいか、共感することができなかった。

    知り合いの母親の集団が、
    「自分の子どもでも、かわいい子どもとそれほどかわいくない子どもがいる」と
    あっさり言い合っていた時の方が、戦慄を感じだ。

  • タイトルはそういう意味だったのか、と腑に落ちた。
    主人公が夫を愛する一方で息子との冷たい距離を自覚していた上巻と異なり、手紙で語られる主人公と夫との関係が悪化するのに伴い、なぜか主人公と息子との間にどうしようもない絆があるように見えてくる不思議。
    きっちりミスリードに引っかかっていたので、「木曜日」の出来事のラストは自分には見事にどんでん返し。その後から見ると、むしろ息子がおかしくなった原因は父親にあったのでは?母親と息子の間には根源的な相互理解が存在していたのでは?と思えてくる。

  • 読了。
    上巻で、モヤモヤした状態で終わっていたので、シーリアの存在に希望を見出して、下巻スタート。

    エヴァ、フランクリン、シーリア、そしてケヴィン。みんなの気持ちは、考えれば考えるほど痛いくらいにわかる。
    ただ…やっぱり読みにくいw

    作者あとがきに自分が思ったことを要約してくれてあった。

    自分の語彙では説明できないけど
    「一歩踏み込んだ」作品って感じ。

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