- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781610061
作品紹介・あらすじ
ナニモノでもなかった21歳の青年が、世界でもっとも生命の起源に肉迫する科学者になるまで。
感想・レビュー・書評
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いやもう熱い。と言うより、熱いを通り越して暑苦しい。
生命の起源を解き明かそうと深海の微生物探しに全力を傾ける研究者の青春記。と、こうまとめてしまうとこの本の破天荒さは伝わらないだろう。これは高野秀行さんが2013年ノンフィクションのベスト1に選んでいて、そのうち読まねばと思っていたのだけれど、想像を超えた突き抜け方だった。
高野さん曰く-
「世界トップレベルの研究者が生命の起源を探るため、深海艇に乗り込み、『冒険』を続ける。しかし、その筆致はタマキングや椎名誠がさらにおちゃらけたよう。およそ真面目に書かれた本とは思えない」「タイトルはイマイチだし、なぜか青いインクで印刷されてるし、このおちゃらけた文体だし、たぶん良識ある人々には訴えないと思う」「私がベストワンに選ばずして誰が選ぼう(いや、選ぶまい)」
アハハ!まったくそうだ。著者は四十代で、機関銃のように連発されるギャグはまさにその世代のネタ、若い人に読んでもらいたいと書いてあったが、若い人は知りませんって斉藤由貴とか。「そらそうよ」に至っては阪神ファンしか知らないから。
この高井さん、まるで暴走するブルドーザーのよう。燃料はみなぎる自信と、見てろよオラー!という不屈の闘志、そして熱い熱い探究心。壁にぶつかるたびアドレナリン全開で突破していく姿に圧倒される。身近にいたらちょっとイヤかも。読んでるだけでも胃もたれしてくる。
それでも、この真剣さはどうだろう。こんな一途な思いで研究に人生を賭けている人がいるのだ。学問の世界にも、とにかく成果を出せ、社会に貢献しろとうるさく言い立てる世知辛い世の中だけれど、この世界の成り立ちが知りたい、「その気持ちだけじゃダメなんですか!?」と著者とともに言いたくなってくる。
著者は京都生まれの滋賀育ちで京大卒。「関西人」キャラは東京あたりでは受けが悪いと再三書いているが、いやあ、それって関西人というよりアナタの個性では?と私は思うよ。でもまあ、写真で見る限りこの方甘いマスクの持ち主で、お勉強もできる。こういう人は東京では黙っててもモテモテだろうが(いやよく知らんが)、関西では黙ってるとうっとうしがられる。ハンサムほどフレンドリーなキャラクタを要求されるんだよね。にしたってあまりにも濃い人ではあるけれど。
高野さんも書いているが、活字の色が何故か最初の方は青くて、だんだん濃くなり、最後のほうは黒くなっているのだが…、あ!今思いついたぞ。これって海の色?「しんかい6500」で海に潜るときときだんだん周囲の色が変わっていくと書いていた、あれに対応してるんじゃ?きっとそうだ。でも、これ正直言って読みにくいんだけど。特にはじめの方。このことも含め、ユニークな個性が炸裂する一冊だ。あ~、なんか疲れた…。 -
独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の微生物学者による「科学者青春ビンビン物語」(←この紹介文は私のセンスじゃなくて著者のセンスですよ)
専門は深海の微生物から地球生命の誕生を解明する、というもの。
JAMSTEC誇る深海艇に乗り込み微生物採集や、地震による生命活動や地形変化を調べる。
専門的な話も出ていますが、あくまでも「中高生に科学者っていいな」と思ってもらうために、科学者へを目指した青春時代、科学への情熱を書いた本ということなのでかなり分かり易く楽しめます。
しかしターゲットが進路を考える世代ってことですが「関西出身のワタクシには東京とはジュリアナ東京のお立ち台ギャル」だの、怪しげな論法を書いて「民明書房参照」だの、こんなん中高生に分からんだろう(笑)。
(蛇足ではございますが、民明書房とは「魁!男塾」シリーズに出ていた怪しげな事象をさも事実のように説明する架空の出版社)
私としては「自分は科学とは縁がなかったけど、科学とは実に熱く面白い分野だ」と思ったんだから、ターゲットに入れてください(笑)。
著者は今では宇宙航空研究開発機構(JAXA)の客員講師として招かれているということ。検索したら宇宙生物学者という肩書も増えていた。
海底の微生物から生命の誕生を探ろうとしていたら、宇宙の生命の誕生分野とつながったんですね。
化学って、生命って、面白い。 -
海洋研究開発機構(JAMSTEC)という研究機関で、深海熱水中に生息する微生物の研究をしている高井研さんの研究人生を綴った本。
深海には、地中の熱で熱せられた海水が吹き出しているところがありまして、そんなところには酸素がないどころか、我々のような地上に棲む生物にとっては毒となるものもある環境です。
とても生物が棲めるとは思えない深海熱水に生息する生物や微生物がいて、それらを研究しているのが筆者です。
もちろん、優秀な方なのでしょうが、そんなことを微塵も感じさせない面白い文体で、彼の研究がスムーズに頭のなかに入ってきます。分かりやすい文章ですが、本当にこの人は研究者なのだろうかという、おふざけが過ぎるところがあります(笑)。
しんかい6500に研究者として搭乗されたときの話は、すごいなあと感心しながら読みました。
中川翔子さんがテレビ番組でしんかい6500に搭乗して到着した日本海溝三陸沖水深5300mのところが「しょこたんサイト」と呼ばれているとは。
海水面から徐々に深くなって色みが黒っぽくなっていくようすを表しているのでしょうか、ページの印刷の色が青から藍、さらに黒へと64ページ毎にグラデーション的に変わっているのが凝っているなあと思いました。
しかしまあ、若かりし頃の高井さんの写真、外見めっちゃバブリーで、回りに女子を侍らせている辺り、ちょっとイヤンな感じがします(笑)。 -
微生物ハンター、深海を行く
高井研 著
ナニモノでもなかった21歳の青年が、世界でもっとも生命の起源に肉迫する科学者になるまで。
「BOOKデータベース」より
[目次]
実録!有人潜水艇による深海熱水調査の真実
JAMSTECへの道
JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語
地球微生物学よこんにちは
JAMSTECの拳-天帝編
新たな「愛と青春の旅だち」へ
「しんかい6500」、震源域に潜る
地震とH2ガスと私
極限環境微生物はなぜクマムシを殺さなかったのか
25歳のボクの経験した米国ジョージア州アセンスでのでんじゃらすなあばんちゅーる外伝
有人潜水艇にまつわる2つのニュース
「BOOKデータベース」より
あとがきに著者ご本人が綴っておられるが
「内容はともかくとして文章のノリがウザい」のが難。
書籍の装丁が前半が青のモノクロであるのには意味があるのだろうか。採用された紙質が少年ジャンプほどではないが、わりと粗い藁半紙風のものなので、図書館で借りた際、既に余白が黄変していた。紙書籍は耐久性も大事だと思う。
これを原作に誰か漫画化されたらどうなんだろう?と思ったけれど、科学モノは絵の中に嘘があってはいけないので、それをキチンと考証できる編集者が必要で、そういう人材が育っていないのだろうと推察する。
以上。 -
ちょっと分厚いなーと思ってるのですが、職場でパラ見した時に、章が後ろにいけばいくほど文字の色が明るいブルーから群青、黒へと変わっていく趣向が面白いなと思い、後書きも軽い書き口だったので思い切って借りてきました。
後書きの「内容はともかくとして文章のノリがウザいとお叱りを受けることも多い」という自白通りの楽しい本でした。
文中の口癖(?)が「~よ、そらそうよ」なのですが、なぜか阪神の川藤さんが脳内でナレーターになってしまいます。
全然顔は似てませんけど。
ブクログの他のコメントにも上がっている通り、「楽しかったけど、現役中高生向けというにはノリが古い」のが残念な?
昔読んだ全然別の本で、わかりやすくするためにあげてる例がターゲットにはわからんよ、というのを読んだことがあって、そういう意味では陥りやすいアヤマチなんだな、と思いました。
装丁 / 漆原 悠一(tento)
写真 / 神藤 剛
初出 / 『青春を深海に賭けて』「Webナショジオ」2011年5月27日~2013年4月11日
画像提供 / JAMSTEC -
何かムイミにテンションの高い文章で、こんなの読まなくちゃイケねーのKA・YO! と憂鬱だったのだが、読み進めるうちにあまり気にならなくなった。これは科学のドキュメンタリーではなくて、熱血科学者兄ちゃんの突撃の記録だ。科学の成果が評判になることは多いが、職業としての科学者がどういうものなのかを知る機会は少ない。予算のとりっことか、上司をうまく説得してやりたい仕事を進める手管とか、根回しとか、そういうそこらの会社と変わらない権謀術数がある。それが嫌な感じがしないのは、著者の「俺はこの仕事がしたいんだ!」というストレートな思いが根底にあるからだ。
この文体は、著者の地らしい。何度か、人にうっとおしがられる話が出てくるけど、なるほどなあと思った。
で、この人の科学の話があるらしく、テーマには大変興味があるのだが、ちょっと迷ってる。やっぱりこういう語り口なんだろうなあ・・・ -
本文は381ページ(厳密には、384ページ)なんですが、文字色が青から黒へ少しずつ微妙に変わっていっていて、若干読みにくかったです。
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URLではなく、二次元バーコードなら動画などをみるのに便利だったのになぁと思いました。
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著者は、深海の高温が噴き出す場所で、無機質物質をエネルギーにして生息するという「極限環境微生物」の研究者。
生物誕生の秘密を握る、とも言われているという。
と言っても、本書はその微生物の解説書ではなく、研究者である著者の半生記、研究に対する取り組みを記したもの。
研究者は頭が良くて緻密で、と紋切型のイメージがあるが、研究を成功させるためにはリスクを取り、パッションにあふれ、周囲を巻き込んでいく力が必要なのだと理解した。
しかし、内容は非常に示唆に富むのだが、おちゃらけたこの文章はいけない。残念。
これは絶対にプロには書けない(書かない)一冊だと思いました。