失踪日記2 アル中病棟

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781610726

作品紹介・あらすじ

緻密な描写。ギャグマンガ家ならではの客観的な視線。『失踪日記』以上にすごい作品です。───とり・みき  過度の飲酒でアルコール依存症となり、担ぎ込まれた通称『アル中病棟』。入院したらこうなった!30万部ベストセラー『失踪日記』から、満を持しての続編!

感想・レビュー・書評

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  • 「失踪日記」の続編。アルコール依存症を患った漫画家の吾妻ひでおは、アルコール依存症専門の病棟、「アル中病棟」に入院する。その時の経験を漫画で綴ったもの。
    アルコール依存症は、本人にとっても家族にとっても悲惨な病気であるが、日本にどれくらいの依存症の人がいるのか、ネットで調べてみると、80万人以上ということであった。80万人というのは、日本全体の人口1.2億人からすれば、0.6-0.7%程度。成人人口の比率からすれば、おそらく1%程度になるのだろう。ただ予備軍を含めると、その5倍以上の440万人になると言われており、成人人口の5%以上になるのだろう。予備軍の440万人という数もすごいし、5%という比率も大きな数字だ。
    漫画の中で、吾妻ひでおはアルコール依存症について、下記のように語っている。
    「アルコール依存症って、回復はしても完治はしない不治の病なんですよね。何十年断酒していようと一度呑んでしまえば元の木阿弥。いずれ内臓のどこか、あるいは脳を侵され廃人になるか死に至ります。」
    不治の病であるから、依存症に陥った人が普通に生活しようとすれば、出来ることは、「お酒を呑まない」ということだけとなる。それを1日1日続けることだけが出来ることだ。そして、それをサポートするのが、アル中病棟である。ただ、治療成績は悪い。統計によれば、アルコール依存症患者は治療病院を退院しても1年後の断酒継続率はわずか20%、ほとんどの人は再入院、もしくは死んだり行方不明になったりしているということだ。それくらい恐ろしい病気なのである。
    吾妻ひでおは、なんとか治療を進め、退院にこぎつける。そこで、この漫画は終わっているが、実は勝負はこれからなのだ。アルコール依存症患者の飲酒欲求はなかなか治まらないもので、最低でも2年、長くて10年つきまとうらしい。
    この漫画を読んでいると、絶対に酒に吞まれないようにしなければ、アルコール依存症には絶対にならないようにしなければ、という気持ちにさせられる。

  •  アル中病棟に入院中の出来事をギャグに仕立てている。吾妻先生の描くナースがカワイクてしょうがない。

  • 「失踪日記」の続編になり、アルコール依存症病棟での生活を描かれたものです。

    少し懐かしいですね。アルコール依存症になると本当に眠れなくなるし、飲酒欲求なんかの手の振るえもあんな感じでした。睡眠薬も全然効いてくれないです。

    半笑いで読みましたが、本当にあんな感じの生活をしていましたっけ。

    アル中はこの世の喜劇、その後の悲劇。

  • いずれ買おうと思っているうちに、あろうことか、作者は亡くなってしまった。読んでいるとつい笑ってしまうが、「失踪日記」の冒頭にある「なるべくリアリズムを排除して描いています」という説明は、この作品にも当てはまりそう。病院に面会に来た奥さんが怖がって帰ってしまったという話が載っているが、たぶん、現実はそんな感じ。2013年10月10日第1刷発行。2019年11月4日第9刷発行。定価(本体1300円+税)。

  • マンガだけでなく、対談もあり、贅沢な内容。
    支援の仕方について考えさせられた。

  • 「失踪日記」の続編。

    作者が生きることに大変苦悩しながら、表現者として、芸術家として、本物であることを証明した本。

    本当に大変な経験をしている中、よくぞここまで自分を客観視して、完成度高い漫画にできるなと。

    アルコール中毒は、死に至る病気。
    これは以前、西原理恵子の本でも、実体験として、心の底からの叫びとして書かれていて、印象に残っている。

    アルコール中毒という病気と折り合いをつけながら生きていかなければいけないのは、我々には想像もつかない恐怖であろう。そもそも、アルコール中毒の人は、日常の不安から逃れたいという人が多いと思う、その不安と付き合いながら、アルコールの誘惑からも逃れないといけない。

    この漫画は、そんなシリアスな現実も、笑いに昇華してしまう。登場人物たちは、世間とうまくやっていけないアウトサイダーだが、だからこそ人間らしく、活き活きとしているように見える。(実際は、もっと過酷なんだと思うが。)

    ある意味、吾妻ひでお自体がそちら側にいたからこそ、一定の共感、仲間意識をもっている。また、批評意識が高く、人をクールに観察していること(客観性をもっていること)の両面がうまい具合に交じっているから、ここまで、エンターテイメントに表現できるのだろう。

    つげ義春がギャグ漫画かけたら、こんなだっただろうなという印象。

  •  これを普通に笑いながら読めるんだけど(密度は濃いから読み進むのに時間がかかるの)、けれど、実際にアル中病棟に入院したのが作者であると思うと……なんというか、じわじわくる。
     自分の内面についてじぃと見つめるでもなく、ただ、淡々と作品としてこの本を仕上げた精神力はさすがギャグ漫画家であると思う。ストーリー漫画家であったら、物語にしてしまい「よい話」になってしまったんじゃなかろうか。

     アルコール依存症からの回復は20%程度に留まる。
     つまりそれは、何度も何度も再発するということを示している。出てくる人たちは当たり前のように普通なのにどこかおかしい(おかしいというと失礼なのかもしれないし、漫画的な誇張もあるのだろうけれど)。

     特別な理由があるから、アルコール依存症になったのではなく、アルコールを飲み続けるうちに依存症になってしまった。アルコールが無い生活を感柄レ無くなったというのが近いんだろうか。
     眠れない……というのは本当に恐ろしいことなんだろうな、と感じた。

  • ストレスからアルコール依存になり家出した経緯を描いた『失踪日記』のラストで、
    依存症治療のための入院生活について触れられていたが、
    やっと出た、その詳細版。

     完全主義者は身を亡ぼす〔p.310〕

    当事者全員に当て嵌まるわけではないにしても、この一言で
    調子を崩す→何かに縋る→そのせいで更に具合が悪くなる……という、
    依存の機制についてズバリと的を射ている気がする。
    俯瞰の大ゴマが、
    不安あるいは身の置き所のなさを見事に描出しており、マンガ表現として秀逸。

  • 失踪日記に比べると、アル中病棟にとどまっている為、ストーリの展開が少なく、刺激が少なかった。それでも最後のコマに向かう展開は好きだった。

  • アルコール依存症のケースを複数担当しており、入院生活がどんなもんか気になったので。

    漫画でほのぼのとしたイラスト、軽いタッチで描かれているから読み進められたものの、文章で淡々と書きつられていたら読むのが辛いだろう。

    それくらい実態は壮絶なことがよく分かった。
    アルコール依存症、治療後再飲酒することなく社会復帰出来る確率はわずか20%のようだ。それ以外の人は、肝臓壊して亡くなるか、行方不明か、再入院か。

    担当のうち、片方は断酒に成功し、仕事も始め、社会復帰に向けて着々と進んでるケース。もう一方は、過去に入院歴あるものの、再飲酒に走り、かれこれ10年以上依存しているケース。
    20%に入れるよう、支援していきたい。

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著者プロフィール

漫画家。1950年、北海道生まれ。1970年代に『ふたりと5人』『やけくそ天使』などで人気作家に。その後、不条理漫画や自費出版の同人誌「シベール」でおたくの教祖的存在になるも、80年代末から失踪やアルコール依存症を繰り返す。その体験記『失踪日記』で、日本漫画家協会大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞、日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門を受賞、話題に。

「2015年 『文庫 逃亡日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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