さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

著者 :
  • イースト・プレス
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781614427

感想・レビュー・書評

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  • 次作品の「一人交換日記」と比較すると、こちらはさわやかで、希望に満ちた読後感。

    大学中退後、鬱になり、家族=親に対して良い子供であろうとする強制観念から、身動きできなかった筆者。

    漫画を書くことが、はっきりとやりたい事としてあったのが救い。そしてプロとしてデビューできたこと。

    いわゆる異性に興味がない人や、性的な欲求がない人も世の中にはたくさんいるはずで、その人たちにとって世間での「常識」は、重荷でしかない。

    人と触れあうということ、安心感。
    を得るために女性用の風俗に行くという考え方が新鮮だった。

    体験における筆者の感想は、風俗体験においても高度なコミュニケーションが必要だった。というもので。
    まさにそうだと思う。

    筆者は自分を批評的に見る視点があり、だからこそ体験レポートのようなものを、面白く、きちんとツボを押さえてかけるのであろう。

    もっとわがままに、自己をすごく肯定して、突き進む方が、本人の人生は生きやすい。

    でも、そんな人はこの漫画を描けない。筆者の内省的な外の目を気にする性格だからこそこの漫画は面白い。

    ただ、次作を見る限り、筆者の生きづらさは、続いていく。表現者はある意味このような傾向があると思う。
    生きづらさがなければ、そんなに表現しなくても良くなってしまうのではないか。

    筆者の生きづらさの軽減には、
    自分がどういう性格か、強みを見極めて、自ら信じることが大事だと思った。

    自分がどのような性格か、良いところと悪いところは表裏一体のはず。自己肯定感が高い人は良い面ばかりを見て、自己肯定感が低い人は悪い面ばかりを見る。

    自分の良いところをしっかり自分に意識させる。「自分の味方は自分である」という状況をつくれるようになるといいなと思った。
    簡単なことではないけれど。

  • H29.5.19 読了。

    私の知らない世界。

  • 全くエロい話ではない、というかむしろ人間の闇と向き合う話。一気に読めて入り込めるし、何度も泣きそうになった。

  •  妙齢の女の人が、寂しすぎて、レズ風俗に行ってしまったお話。

     といえば、簡単で。
     本屋でちょろっと読んで以来、ずっとずっと読みたくて探していた本でした。

     読んだ感想をダラダラと書きますが。
     当初、この本を読んだ時には、流し読みでパラパラ読んだだけだったので、どうしてこの作者さんがレズ風俗に行かなきゃいけなかったのか、とかそういう裏の細かい事情がわかっていませんでした。(別にわかっていたらいいというものでもないと思うので、そこにそんなに責任は感じてないのだけれど)
     本当はノン気の人が手っ取り早く癒しを求めて女の風俗に行ったんだ、と勝手に思ってました。
     でも実はそうじゃなくて、この作者さんの本当のアイデンティティはどっちかなんて、これからこの作者さんが見つけていく話で。
     根本的な人間的に埋められないところの部分の話をしているのだなあ……と読み始めるうちにわかって。
     もっと深い話だったと気づかされました。
     人間は成長していく過程で、いろんなことに悩んだり、困ったり戸惑ったりするものだと思っているのですが、それがどうだこうだというのは、違うような気がするので、もっとエロ本の延長のルポだと思わずに、どこか心に隙間が空いて、ガタガタしてる人に読んでほしいなあ……と思いました。

     この人がやったことだけが正解では決してないのだと思うのですが、真っ直ぐに自分と見つめあったことはきっとプラスになるのだと思う。
     自分からは決して逃げちゃいけないんですよね。

  • こだまさんの「夫のちんぽがはいらない」に似てるなあと思った。(題名がショッキング)がむしゃらにあがいては傷つくところとか。。。でも最後の台詞「親不孝が怖くて人生が生きられるか!」に、がつんときた!座右の銘にしたい。

  • タイトルがなかなか衝撃的なので、表紙を晒しながら人前で読むのは少し躊躇われる。
    しかし、内容は「レズ風俗行った!女の子エロ可愛かった!!」というような単純なルポルタージュではない。世の中で何かと生き難い思いをしている筆者が如何に自己と向き合い、レズ風俗へ行く決断を下したのか。実際にレズ風俗を利用した際の感想と、後日譚を明け透けに描いたエッセイ漫画である。
    全然恥ずかしいことなんてなかった。寧ろタイトルからエロを期待した自分が恥ずかしい。

    筆者は摂食障害など色々な(こういう言い方はしたくないが)問題を抱えていて、序盤はその辺りのことを語っている。自分は摂食障害などになったことがないので「へえ、そういうことしちゃうんだ、大変やなあ」程度の感想しか出てこなかった。共感出来るような出来ないような中途半端な感覚で、物語にも余り身が入らなかった。
    けれど、筆者が『親の期待に応えようと頑張る自分』と「抱き締められたい」欲求に気付いた時。共感が爆発した。本やネット記事を読みながら「わかる〜!!」と叫ぶ作中の筆者に対し、「わかる〜〜〜!!めっちゃわかりみが深い〜〜〜〜!!!!」と叫んでいた。心の中で。2秒だけで良いから抱き締めて欲しい。分かる。
    でも、そこから「そうだ、レズ風俗に行こう」となるのは分からん。思考回路が凄すぎた。きっと自分は、その着地点には辿り着けない。

    一応ラストは綺麗に切りよく幕を下ろしているが、おまけ漫画を読む限り、成長の道のりはまだまだ長く厳しいものなのだろう。筆者の「甘い蜜」が増えて、少しでも生きやすい人生を送って欲しい。
    そして生き難いと感じている全ての人に、本書を手に取って欲しいなと思う。いや、生き難くなくて順風満帆な人にも勧めたい。タイトルはアレだけど、品のない風俗ルポ漫画だと思わず読んで欲しい。

  • ネットで話題になっていたので手に取った一冊。
    いわゆる風俗レポ、と思ってエロティックな描写を期待すると肩透かしを食うかもしれません。(あるにはあるけれど、ボリューム的にはさほどないので(笑))

    このマンガのキモは「さびしすぎて」というタイトル部分。
    なぜこんなにも筆者が寂しかったのか、なぜレズ風俗を選ぶに至ったのか、という葛藤の部分です。ボリューム的にもそちらの部分の描写が多いです。
    個人的にはこの部分が丁寧に描かれていたので、興味深く読みました。

    たぶん、癒やしと許しと「ぎゅっと抱きしめられたい」他人の体温を感じたかったのかなぁと。
    女性である筆者が、対男性でそれを求めると(異性経験がほぼないに等しいので)いろいろとリスクが多い。母親とのエピソード(母親と特にすごく仲良いわけでもないのに、母親の肉体的な柔らかい部分に固執したい)、肉体の暖かさ、柔らかさに包まれたい、となると、相手を女性に限定したレズ風俗、というのは個人的には「あ、そういう考えもあるのか(ひざポン)、こういうのも有りだな」と読んでいて感じました。

    単なる風俗レポ、というよりは、自分の内面世界を試行錯誤しつつ切り開き広げていく冒険譚として読むと納得出来るかもしれません。
    もちろん失敗エピソードもあるのですが、なにより筆者自身が真摯に正直に描こう、という気持ちが見えるので、手段はどうであろうと読後は
    「よく頑張ったなぁ」
    と思えてしまいました。

    人生の「甘い蜜」を筆者がどうか見つけてくれますように、と思います。

  • 過去の自分が悪化した状態を見ているようだった……

    著者はノンケのようだが、自己肯定感の低さから対人恐怖症であることが伺える。

    威圧的で無関心な父、過干渉な母親という図式が見える…
    どうしてお母さんは成人した女性(娘)のおしりのできものが治ったかを確認するのだろう……?
    カビさんが嫌悪しないのも不思議だが、何となく子供の頃に貰えなかったものに執着しているためではないだろうか?

    親子関係の問題を自覚しているが、親にその修正を求めても得られない…そんな状態で異性は恐怖でしかない。
    人恋しさを同性に求めるのも、同性という自分を投影しやすい対象、あるいは“母親”の代りなのだろうか……

    カビさんは他人との身体の触れ合いが高度なコミュニケーションであることを、初体験後に悟る。
    結果、見えてきたのは、カビさんが“子供のまま”成長を留めてしまっていること。性への拒否感があったことを自覚する。

    自覚…この本はカビさんの半生であり、内省の本だった。劣等コンプレックスが何なのかを紐解き、「自分が無い」ことに至る。
    田房永子『キレる私をやめたい』( https://booklog.jp/item/1/4801907652 )に通じる、自己の定義を他人の尺度に委ねてしまったことに起る弊害だった。

    別件で「性知識の乏しさ」を言及している。
    それは風俗のお姉さんから「処女膜がない」指摘されたことも理由だが、それがヴァージンを証明するものでもないし、初体験で出血するわけでもない。
    そうした知識を、一般知識として持っていないことを問題視していた。それは同感。

    • moemiさん
      ノンケからレズになるひとの特徴に
      母親との関係が上手く行ってないってのがあるらしいです。
      なんかで見たのを思い出したのでコメントさせてもらい...
      ノンケからレズになるひとの特徴に
      母親との関係が上手く行ってないってのがあるらしいです。
      なんかで見たのを思い出したのでコメントさせてもらいました。
      この本読んでないのですが、
      あなたのコメントは的確なような気がします。
      2020/08/22
    • 亞綺羅さん
      moemiさま
      コメントありがとうございます。
      なるほど、親子関係がうまくいかない形の一つとして、そうした指摘があるのですね。
      >母親...
      moemiさま
      コメントありがとうございます。
      なるほど、親子関係がうまくいかない形の一つとして、そうした指摘があるのですね。
      >母親との関係
      私も同性愛になる人の傾向として、両親との関係がうまくいっていなかった、という指摘を本で読んがことがあります。
      ギー・コルノー『愛することに「臆病な人」の教科書』( https://booklog.jp/item/1/4062641038 )でしたか…
      信憑性が不明なのですが、親子関係がうまくいかない弊害が、ここ最近、日本でも指摘されるようになったのは事実ですね。
      2020/08/23
  • ちょうど
    「山田孝之の北区赤羽〜」
    を観た後読んだ。
    自分の敵は自分なんだなあとつくづく。

    "私なら、
    人に言えない
    人の秘密が
    描いてある物が
    読みたいし
    お金を払いたい"

    たしかに、読みたいと思うものや読んでるものの中に
    よくこんなの書けるよなあって。
    自分だったら周りの人のこと気にして書けない。
    実際書けないこととか言えない事とか。
    そこを超えないと表現ってできないんだろうかー。

  • 意外にも、凄く哲学的だった。
    作者の人生が辛くて痛くて、読んでいて悲しい。
    新しい時代の文学作品みたい。
    太宰治みたい。

    病んでいる人の自分語りって出口が見えない物が多い。
    ひたすら周りのせいにして、破綻した生活を見せつけて、それでいてそこから抜け出す努力は何もしてない。
    本当は一生そこにいたいんじゃないの、という気がしてくる。
    この本はそうじゃなかった。
    作者は抜け出そうとめちゃくちゃもがいてる。

    自分の人生を切り売りする漫画はよくある。
    そういう漫画の作者がよく「自分をネタにして売らないと生きられない」的な事を言っているのを見る度に、生きるために体売ってるみたいな感覚で漫画描いてるのか?嫌なら他に生き方無いの?と少し軽蔑していた。
    でも永田氏は自身の事が描きたい!と思って描いたそう。

    共感できるところ沢山あったし、いろいろ参考にもなった。
    作者の親うちの親と似てるなーと思ったり。
    自分の価値観で行動を制限しまくる、辛いときには寄り添ってくれない。
    私もそういう人間になりそうで怖い。。
    うちの親はスキンシップ0だったし、私は女の人に触りたい欲求は無い、というか触るのが怖いけど。

    女性で生まれついての同性愛者って少ないんでしたっけ。
    女性で同性愛者をカミングアウトしてる漫画家さんの作品を時々読むけど、育った環境が崩壊してる人が多い。
    最近同性愛に理解を示す風潮だけど、同性愛の裏に心の闇が潜んでいるなら、「同性愛、どうぞお好きに」と言うだけで良いのだろうか、という気がしてくる。
    まぁ付き合ってる人同士にわざわざ別れなさいとは言わないけど。
    女性が女性を愛したいという時、相手の女性は自分であり、母親なのかもしれない。

    最近思うのは、人生を改善するのに、まず愛情が必要なのではという事。
    付け焼き刃の愛じゃなくて、無償の愛が必要なのだ。
    どんな酷い状態になっても見捨てないでくれるような、無償の愛が。

    こういう心の状態ってすっぱり改善されるわけじゃないから、これからもこの人は悩むと思う。
    でも、次は大幅に改善して幸せになった話を出したときに読みたいな。
    ずっとメンヘラ抜け出せない話は気が滅入るから。

著者プロフィール

大阪府在住の漫画家。著作に「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」「現実逃避してたらボロボロになった話」(イースト・プレス)、「一人交換日記1、2」(小学館)、「迷走戦士・永田カビ」(双葉社)がある。

「2022年 『膵臓がこわれたら、少し生きやすくなりました。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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