インターネットで死ぬということ

著者 :
  • イースト・プレス
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本棚登録 : 70
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781615332

作品紹介・あらすじ

すべての世界で、誰かに愛されたい。
炎上騒動、自殺未遂、そして復活への覚悟。

「一点の汚れもない」自分でいたかった――
その泥沼は、どうすれば抜け出せるのか?
自身の「居場所」と向き合った、異色の自伝的エッセイ。

何気ない、悪意のない一言が、なぜ怒りを買ってしまうのか?

2014年、大学に通いながら潜入調査をして執筆した
『キャバ嬢の社会学』で鮮烈なデビューを果たした社会学者・北条かや。
しかし、その2年後、twitterの炎上騒動から自殺未遂をし、休業を余儀なくされた。
これまでに読んだ社会学の本の論点と重ね合わせながら、
「評価経済社会」のなかで悪戦苦闘した体験を赤裸々に描く。


私はインターネットをやめることができなかった。
あげくの果てには、インターネット上での評判を気に病み、みずからの命を絶とうとした。

いったい何が悪かったのだろう。
この「炎上」による傷も、すべて「自己責任」だろうか。
いまだにわけがわからないまま、日々をしのいでいる。

インターネットの泥沼は深くてなかなか抜け出せない。
まだもがいている私の姿を見てほしいと思ってこの本を書いた。
インターネットで殺されないために。(「はじめに」より)


【目次】
序章 インターネットで死ぬということ――「炎上」で折れた心
第一章 文学少女が田舎で生きるということ――小学生時代
第二章 スクールカーストで勝者になるということ――中学生時代
第三章 オタク少女がギャルよりモテるということ――高校生時代
第四章 社会学で出世を目指すということ――大学生時代前半
第五章 女が社会学をフィールドワークするということ――大学生時代後半~大学院生時代
第六章 社会学者が社会で働くということ――社会人時代
第七章 「評価経済社会」で成功者になるということ――フリー時代
第八章 誰も私を殺せないということ――「炎上」からの復活

感想・レビュー・書評

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  • この読後の不快感は、著者と同世代であるがゆえに自分のなかにも反応するアンテナがたってしまっているからだと思う。
    それでも今このような文章を読んで改めて感じるのは、傷そのものに価値があるとみんなが勘違いしてしまっていた時代は終わっているということ。
    他人のカサブタを剥がした傷口を無理やり見せつけられても、不快感しか感じない。

  • 2018.12.18 インタビュー記事より。
    https://twitter.com/kaya_hojo/status/1030465299110289408
    http://dailynewsonline.jp/article/1327808/
    美人でありながら、毒を吐き、自ら不様と言うこじらせ女子。そのギャップが萌えるかもしれない。

  •  北条かや氏と久々に会うにあたって、彼女の最新刊(今のところ)である、『インターネットで死ぬということ』という本を読んだ。この本は、つい数年前に話題になった(なってしまった)彼女の炎上騒動について、その出来事の経緯や背景を解説した本、かと思いきやそうではない。

     彼女のこれまでの生い立ちを振り返りながら、その時々で彼女がどのように考え、生きてきたのかをたどるという本である。もっと言うと、彼女の「生きづらさ」や「不器用さ」がよくわかる。一体誰に向けて書いた本なのか、わからないところもあるが、いち知り合いとしては、わりと興味深く読んだというのが正直なところである。
     特に、彼女と同世代であり、もしかしたら比較的似たような環境で育ったのかもしれないという勝手なシンパシーから、「わかるなあ」と思うところが少なくなかった。

     たとえば、元々エリートの子弟として生まれながら、片田舎で育ち、しかもうっかり進学校ではない高校に入ってしまったため、そのままでは周囲と言葉が通じない(文化資本が違いすぎて、価値観を共有しづらい)環境から、一流大学に入ったことで、急に「言葉が通じる環境」に移った、という話。僕自身も、別に進学校でもなんでもない高校から、一般的にいうところの有名大学に入ったことで、急に言葉が通じるようになり、また抽象的な議論ができるようになった時の感動をおぼえている。

     あるいは、ジェンダー論に関心があり、男性中心主義的な社会にあり方に批判的になるのと同時に、「女として認められる」ということに歓びを感じてしまうという感情について述べている部分である。ジェンダー論の議論は、一方で女性の置かれている不利な立場を言語化したり、分析したり、エンパワメントする効果があるが、同時に社会との軋轢を加速させることで、苦しくなる部分もある。ジェンダー論的には「(男に媚びることで)女として評価される」ということを素直に喜ぶことはできないし、そうした女性のあり方を積極的に肯定することはできないが、しかし自分がその役割にはまった時に、「楽しい」「ラク」と思う気持ちも否定できない、という。その矛盾を上手く説明することは難しい。

     僕自身が勝手に共感を感じたのは、これが資本主義批判を行う左翼的心性とも相似的であると感じるからである。一般的に左翼は、人を金銭で評価する資本主義や、能力主義について批判するものだが、しかし、いち個人としては、企業社会や評価経済の中で評価されることに歓びを感じる気持ちがあることは否定できない。あるいは労働に伴って訪れる「消費活動って楽しいよね」という世俗的な感覚。
     実際、現在の社会が男性中心主義的である以上、その中で「上手くやっていく」時に、男性(文化)に媚びることは評価される。あるいはそこに歓びが伴ったりする。あるいは労働に価値を与え消費を持ち上げる資本主義である以上、「有用な労働者・消費者」になることは評価されるし、楽しいのだ。それは政治的に正しくはないかもしれないが。

     だから、学問をすることで救われるような気持ちを味わうと同時に、「生ま身(なまみ)」の身体と欲望を持つ一人の人間としては、その狭間で引き裂かれる葛藤を持つことになる。学問は、物事を異なった視点で見たり、あるいは「客観的な」視点で分析する視座を与えてくれるが、この濁った社会に生きる一人の人間として、「どのように生きるか」というアドバイスを(直接的に)くれるものではない(本文中でも、彼女の友人の「社会学は冷たい」という言葉が紹介されている)。 

    「私の中の「女」は、キャバクラとホステスクラブで働いて容姿をほめられ、就活でおじさん社会を相手に「成功」したことで確実に大きくなっていた。男社会に順応して喜びを感じられるなら、そしてその喜びが永遠に続くと信じられるなら、この社会はとても生きやすい。
     しかし、男社会は「女」を自分たちに都合のいい者とそうでない者に分類するから、選別される側の女は苦悩や痛みも味わうことになる。その苦悩もまた、私のなかでは育っていたため、ときどき両者が衝突を起こすのであった」(p196)

     そうした、社会を批判的にまなざす視点と、自己の身体や感情が生む軋轢が、この本における一つの「読みどころ」であると、個人的には思う。
     その矛盾の中で揺れ動く彼女の自意識を、単に「どっちつかず」と批判することも可能だろうが、しかし、いち生活者としてはリアリティを感じるものではないのか。

     ところで、冒頭でも触れたが、この本のタイトルにもあるような彼女の炎上話については、多くが書いてあるようでそうでもないという矛盾がある。また、結婚相手との話もほとんど触れられていないが、その話が正面から書けることができたら、もっと面白い展開になるだろうなと、個人的には(無責任にも)思った。

  • 社会学者である著者の自伝。

    なぜインターネットで炎上したか、その生い立ちを含めて解き明かそうとしている。
    その試み自体が成功したかは微妙なところだが、彼女の自意識過剰な部分も含めて面白かった。

  • すべて真実だとしたら、著者には大変申し訳ないんですが、何だか現実味がないんですよね、全体的に。

    ただ、自分自身は、若い頃(とくに10代の頃)、自分自身をうまく説明するだけの語彙を持っていなかったので、非常に多彩な表現を持っている著者を、うらやましいと思いました。

  • 大学院で学んだことだけが、残滓のように残っており、その矜持と精神の不安定さが行き来しながら書かれている自伝的小説。生き返りを宣言しながら本書を終えているので、研究の世界に再度真摯に向いても良いのかと私見ながら感じる。私自身、金沢にいる身、自己を乖離的に見る視点、アイデンティティの不安など、共通共感するところは多々あるし、過去美味しいカレー屋さんを教えて頂いた縁も感謝もある。陰ながら応援している。

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著者プロフィール

ライター。1986年、石川県金沢市生まれ。東京在住。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。「BLOGOS」「Yahoo!ニュース」をはじめ複数のメディアに社会系・経済系の記事を寄稿・提供。NHK「新世代が解く! ニッポンのジレンマ」、TOKYO MX「モーニングCROSS」などに出演。著書に『キャバ嬢の社会学』(星海社新書)、『インターネットで死ぬということ』(イースト・プレス)など。

「2019年 『王子様はどこへ消えた?――恋愛迷宮と婚活ブームの末路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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