男が痴漢になる理由

著者 :
  • イースト・プレス
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781615714

作品紹介・あらすじ

痴漢は、依存症です。

痴漢の多くは、勃起していない。
痴漢の多くは、よき家庭人である。

加害者を見つめ続ける性犯罪・依存症の専門家が、社会で大きく誤解されている「痴漢の実態」を解明し、その撲滅を目指す!

これらの“痴漢像"、すべて誤解です!
・痴漢は女性に相手にされない、さみしい男である。
・性欲をコントロールできないから、痴漢に走る。
・肌を露出した女性は、痴漢に狙われやすい。
・電車内に防犯カメラを搭載すれば、痴漢は減る。
・痴漢よりも、冤罪事件が問題だ。
……など。

第1章 四大卒、会社員、妻子あり 痴漢はどういう人間か
第2章 多くの痴漢は勃起していない 加害行為に及ぶ動機
第3章 「女性も喜んでいると思った」 共通する認知の歪み
第4章 やめたくても、やめられない 亢進される加害行為
第5章 反省も贖罪もない加害者たち 断トツに高い再犯率
第6章 痴漢しない自分に変わる方法 再犯防止治療の現実
第7章 離婚しない妻、自分を責める母 加害者家族への支援
第8章 「STOP! 痴漢」は可能なのか 痴漢大国からの脱却

感想・レビュー・書評

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  • なぜ会社員、既婚者、高学歴が痴漢常習者になるのか?『男が痴漢になる理由』 | 本がすき。
    https://honsuki.jp/review/5967/

    書籍詳細 - 男が痴漢になる理由|イースト・プレス
    https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781615714

    ーーーーーーーーーーーー
    『痴漢を弁護する理由』に
    「本書の執筆に際し、斉藤章佳氏(大船榎本クリニック)からは性嗜好障害とその治療について貴重な助言をいただきました。ここに記して感謝申し上げます。」
    とあったので、、、

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      naonaonao16gさん
      言い訳で言い逃れと思ったんじゃない?
      つまり卑怯で小心者。痴漢する輩は、、、
      naonaonao16gさん
      言い訳で言い逃れと思ったんじゃない?
      つまり卑怯で小心者。痴漢する輩は、、、
      2022/12/07
    • naonaonao16gさん
      Kindleで読もうかどうか悩んでます…
      Kindleで読もうかどうか悩んでます…
      2022/12/07
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      naonaonao16gさん
      "られる"が抜けてた、、、
      「痴漢」「動機」で検索したら、斉藤章佳が結構出てきたので
      Kindleでなら...
      naonaonao16gさん
      "られる"が抜けてた、、、
      「痴漢」「動機」で検索したら、斉藤章佳が結構出てきたので
      Kindleでなら良いかも。。。
      2022/12/08
  • 日本でもっともありふれた性暴力の形態である「痴漢」。おそらくだからこそ、世の中には、その問題性を頑なに認めようとしない物言いがあふれている。痴漢よりも「痴漢冤罪」こそが大きな問題であるとか、女の側にも問題があるといった言説は典型的だ。多数の痴漢加害者と接してきた依存症クリニックの精神保健福祉士による本書は、痴漢にまとわりつく神話の雲を吹き飛ばす知見に満ちている。
    痴漢に限らず、性犯罪は、「男性がもつ自然な性欲」を妻か風俗で発散できない男が抑えきれずに起こしてしまうものとされてきた。そういうジェンダー非対称的な解釈枠組みを刑法システムが創り上げ強固に維持してきているわけだが、著者によれば、痴漢はアルコールやギャンブル依存などと同じ依存症。適切な介入がなければ自力で脱出するのは困難という。なかでも衝撃的なのは、「痴漢は生きがい」という加害者たちの発言だ。会社などでのストレスと、痴漢という発散の手段がいったん結びついてしまった者たちは、「自然な、抑えきれない性欲」に衝き動かされているどころか、捕まらないよう、準備や逃走に入念に気をつけながら、徐々に加害行為をエスカレートさせていく。
    ジェンダー非対称な性犯罪理解のひとつの帰結が、たとえ捕まっても悪質でなければ刑事罰よりも示談、という司法判断だが、せっかく捕まっても罰金や示談で済ませることは、「まだ大丈夫」という認識をあたえてしまうことになる。刑事罰も再犯防止にはつながりにくい。逮捕を医療介入につなぐチャンスにすることが大事だという。
    基本的に医療アプローチを主張する本書だが、とはいえ、完全に個人の病理として理解するのは過ちだ。ストレス発散の手段として女性に対する性暴力を多くの男たちが選んでいるという現実は、社会における女性の人権軽視の蔓延と切り離すことができないからである。他の男性が痴漢をやっているのを見て自分もやるようになった、日本に来てから痴漢をおぼえたという加害者がいるのは、日本社会の性暴力への寛容さを反映するものといえるだろう。
    痴漢がアルコールやギャンブル依存症と違うのは、そこに必ず被害者が存在し、たとえ加害者にとっては問題行動からの脱出という「解決」が訪れても、被害のトラウマはそこで終わらないということだ。性差別が蔓延するなかで育ち、女性を対等な人間と思っていないからこそ、ストレス発散の対象として性暴力を選んできた加害者は、いくら反省の言葉を述べても、その実、被害者の存在がほとんど意識にないことが多いという。この点の気づきを加害者に絶えずうながすことが治療の重要なポイントのひとつだという指摘には深くうなずける。その意味で、加害者の行為に対する妻、母親、父親それぞれの異なる反応という話も示唆に富む。
    安易な治療アプローチをとることなく、社会構造としての性差別と個人の行動がどのようにリンクするのか、さらに探求が必要だろう。

  • 【感想】
    依存症患者は、彼らを取り巻く環境ごと変えなければ完治は望めない。
    依存症の本質は、快楽の追求ではなく苦痛の緩和である。
    薬物、セックス依存などの各種依存症患者は、行為自体が気持ちいいからやるというよりも、行為に先立って「対人関係の悪化」「親からの虐待」といった悪い環境が存在し、それから逃げるための結果として、依存症系犯罪に手を染めている。
    彼らの再犯率が高いのは、薬物やセックスを絶って出所したとしても、劣悪な環境に身を置き続ける現状が変わらないからだ。
    そのため、薬物や飲酒、セックスといった個別の問題にアプローチするのではなく、根本にある「つながり不足」を解決しなければならない。

    これと同様の理論は痴漢常習者にも当てはまる。
    しかし、痴漢依存症のほうが、治すのがより難しいだろう。

    痴漢が各種依存症に比べて厄介なのは、「依存症患者が自立している」からだ。
    前述した理由から、薬物依存、セックス依存は「つながり不足」が原因だと言われている。裏を返せば、自分が置かれた悩みや苦悩を打ち明けられる相手を見つけ、コミュニティを作り、社会からの孤立を防ぐことが、依存を断ち切るきっかけになる。

    しかし、痴漢はそうした「対人的アプローチ」の効果が薄い。彼らは家庭を持ち、仕事もし、社会で一定の地位についているため、「つながり不足」とはいいがたい。
    痴漢依存の根本には発散されないストレスがあるが、それを他の趣味で代替したところで、彼らを取り巻く環境が変わることはない。諸悪の根源である環境は「満員電車」と「男尊女卑意識」だからだ。それらは社会に根差したものであり、本人の自助努力で何とかできる範囲を超えている。

    「健全な環境に身を置く」というのは依存症治療の基本だ。
    だからこそ、痴漢は解決が難しい病なのだ。


    【本書の概要】
    痴漢被害の5割近くが電車内で発生しており、ほとんどが男性の犯行。
    痴漢する男というと、性にだらしがない社会不適合者の印象を抱いてしまうが、実態は「四大卒で会社勤めをする、働きざかりの既婚者男性」である。
    多くの痴漢は勃起しておらず、性の欲求不満解消が目的ではない。痴漢はストレスへの対処(コーピング)方法に乏しい人物が多く、日々のフラストレーションを発散するために、痴漢行為に及んでいるのだ。
    痴漢を撲滅するためには、性依存症という「病気」を治療することが求められる。治療は単発的な取り組みで終わることなく、刑務所内から社会復帰したあとも、長期的に継続して指導を受けられる仕組みづくりが必要である。
    また、加害者の治療だけでなく、社会全体の意識を変えていく必要がある。「痴漢の裏には性依存症の問題があり、治療によって止めることができる」ことを社会に周知しなければならない。同時に、社会にはびこる「男性は女性を下に見ても許される」という潜在意識を変化させなければ、痴漢はなくならない。


    【本書の詳細】
    1 統計から見る痴漢の実態
    2010年に警察庁が、東京・名古屋・大阪に住む16歳以上の女性を対象に痴漢被害を調査したところ、「過去1年間に電車内で痴漢被害に遭った」と回答した女性は全体の約13.7%であり、その9割近くが泣き寝入りをしていた。

    痴漢の発生場所は、5割近くが電車内。
    痴漢のほとんどは、どこにでもいるごく普通の男性であり、既婚者の割合(43%)のほうが未婚者(41%)より高かった。
    痴漢のリアルな実態は、「四大卒で会社勤めをする、働きざかりの既婚者男性」なのだ。

    痴漢の初犯の平均年齢は33.1歳。偶然の接触や痴漢現場の目撃がスイッチとなり、繰り返し痴漢に及んでしまうようになるという。

    勘違いされがちだが、痴漢は性欲解消が目的ではない。筆者が勤めている榎本クリニックの聞き取りによると、5割の人間が行為中に勃起していない。必ずしも性の欲求不満が動機ではないのだ。

    痴漢行為は彼らにとって、長時間労働、人間関係の悩みなど、日常のストレスへの対処法なのだ。痴漢には勤勉な人が多く、自己肯定感が低い人も多い。他にストレスを発散するすべを持たずに溜め込んでしまった結果、それが痴漢行為として表出している。

    2 痴漢は「病気」である。
    痴漢をやめられない人は性依存性に陥っている。
    依存症は強迫性や反復性を伴う。依存症はだらしがない人がかかる病気ではなく、強度の刺激を味わった結果、再びその誘惑から逃げられなくなった人がかかる病気だ。

    ただし、痴漢を過度に病気扱いしてはならない。痴漢には他の依存症と違って被害者がいるからだ。過度な病理化は、加害者の責任性を隠蔽してしまう。
    そのため筆者は、再犯防止のために、治療の場で常に「被害者の視点を取り入れる」ことを心がけている。

    3 認知の歪み
    痴漢の多くは、「女性も喜んでいると思った」という認知の歪みを抱えている。当初は彼らにも罪悪感があったが、犯罪行為に及ぶにつれ、自らの行為を正当化し、実行するための認知を意識的・無意識的に築き上げていく。現在、性犯罪更正プログラムにおいては「認知の歪み」を修整していくことをメインに据えている。ただし、本人が自発的に気づきを得ることはなかなか困難である。

    また、「女性は男性の性を受け入れるべき」という「社会全体の認知の歪み」も、痴漢発生の一因である。社会から男尊女卑の概念がなくならないかぎり、そこにある認知の歪みも是正されることはない。

    4 痴漢者の内面
    現実の性犯罪者は、アダルトコンテンツからの影響を受けている人が多い。強姦や強制わいせつの容疑で逮捕された553人のうち、33.5%が「AVを観て自分も同じことをしてみたかった」と回答した。
    インターネットの広がりが、性犯罪の複雑さに寄与している。利便性の高い動画配信サイトや、痴漢行為を自慢し合う掲示板など、アダルトコンテンツへの敷居の低さが、痴漢行為に一定の影響を与えている。

    「痴漢行為をやめたことで失ったものは?」そう尋ねた筆者に、受講者は答えた。
    「生きがい」
    これを聞いた受講者の過半数はうなずいていた。
    彼らは朝から晩まで痴漢の方法を考えている。仕事をしていても、家族と一緒にいても頭から離れることはない。頭の中で何度もシュミレーションし、捕まるかもしれないというスリルとリスクのなかで欲望を満たす。それは確かに生きがいと言えるからなのかもしれない。

    彼らは「何をしても逆らわない女性」「黙って自分たちに支配されて欲望をかなえてくれる女性」をターゲットにする。ターゲットが見つからなかった場合は、路線を変えたり再び引き返したりする。当然会社には遅刻するが、それでも止められない。これを「コントロール障害」という。

    再犯防止のためには、彼らに別の生きがいを与えてあげる必要がある。ストレスへの対象(コーピング)方法が少ないから、痴漢という行為で埋め合わせを行うのだ。

    5 再犯率の高さ
    痴漢は再犯率がずば抜けて高く、約半数近くが、再び性犯罪に手を染めている。再犯者から見てもそれは同じであり、痴漢における「性犯罪前科あり」の率は85%と、目を見張るほど高い。

    彼らに反省を強いるのは逆効果である。反省を強いて責任を追及しすぎると再犯率が上がるというエビデンスがある。そのため、大切なのは謝罪ではなく、自分自身の行動を見つめ返して、行動変容につなげることだ。行動面の変化が認知の歪みを治し、内面に変化を起こすのだ。

    行動変容のためには、刑務所内から社会復帰したあとも、長期的に継続して指導を受けられる仕組みが必要である。刑務所内の性犯罪再犯防止指導(R3プログラム)や、仮釈放者と保護観察付執行猶予者を対象とする性犯罪者処遇プログラムのような、再犯防止についての指導がいる。

    ○社再犯防止における、三本の柱
    ・再発防止
    ・薬物療法
    ・性加害行為に責任をとる
    筆者が勤めている榎本クリニックでは、上記の3本柱にちなんだ回復トレーニングを行っている。

    6 痴漢加害者の家族
    加害者の妻はよく、「痴漢さえしなければいい夫」と言う。懸命に働き、家事もし、家族サービスもする。そんないい夫が「これは冤罪だ」と言ってしまえば、妻はそれを信じてしまう。そして再犯が繰り返され逮捕されると、妻が夫をどんどん信じられなくなり、混乱や抑うつ状態が続き、孤立する。これが加害者家族に訪れる苦悩である。

    また、夫が職場をクビになり、妻が経済的負担を背負うようになると、お互いの人間関係にひびが入る。妻は「あんなに生活をめちゃくちゃにしたくせにもう忘れたのか」と憤り、夫は「いまだにそれを責めるのか」と、過ぎたことへの怒りをあらわにする。加害者は、自分の行いを都合よく忘却するものなのだ。

    クリニックでは2008年に、日本ではじめてとなる性犯罪の問題に特化した「加害者家族支援グループ」、通称SFGをスタートさせ、社会から見落とされている「被害者としての」加害者家族を支援している。

    家族支援グループは、加害者家族にとって唯一の安全な場所だ。いままで誰にも話せなかったことを、同じ経験をした人たちに話せる。
    日常的に他人を傷つけてきた者の再犯を止めるには、家族の存在が非常に大きいのだ。

    7 痴漢は撲滅できるのか?
    女性が通報「しづらい」「できない」心理を変えて行かなければならない。被害者女性が加害者男性と直接対面せずに、通報できるシステムの導入をするべき。

    男性は痴漢被害への想像力が欠如している。痴漢という目の前で行われている犯罪に目をつぶり、「冤罪かもしれないだろ」と、痴漢事件そのものを軽視してはならない。

    「男性が女性を下に見ており、多少なら何をしても許される」という、社会的に形成された心理が働いている。男性一般に共通する、冤罪への恐怖の根底には、自分より下だと思っていた存在から「騙される」という形で反撃されるのが怖い、という意識があるのかもしれない。
    男性の支配欲がすべての性犯罪の基盤になっている。痴漢は男性優位社会の中に潜む「女性への加害性」の産物である。

    ●痴漢撲滅のための具体策
    ・一度目の逮捕を示談金で終わらせることなく、専門治療につなげる
    →痴漢を生きがいだと感じている男性には、示談金は抑止力にならない。また、治療が社会生活を送りながらできるのであれば、「人生めちゃくちゃ」にはならないため、女性も通報しやすくなる。
    ・「痴漢の裏には性依存症の問題があり、治療によって止めることができる」ことを、鉄道会社および警察から啓発する


  • 読了。二人の娘が痴漢に合わない為にと思い読んだ。自分の中に痴漢になる要素があるのか不安もあり、それも知りたかった。治療プラグラムの話しは読んでいて、しんどくなった。私が学生の頃と世の中の認識が変わっているので、二人の娘が痴漢に合う可能性は低くなっているかなと感じた。それでも公共機関での通学は心配である。


  • 痴漢をはじめ、性暴力は「暴力」「支配欲」であって、「性欲」ではないんだよ…という認識が広がってほしい。

  • 犯罪と依存症の関係に着目し、数々の治療プログラムを立ち上げている依存症クリニックの精神保健福祉士の書。著者は男性である。男性がこの本を書いたことに、大きな意義があると思う。

    【メモ】
    痴漢などの「性犯罪」はアルコール依存やギャンブル依存と同じ「依存症」である。
    そしてそれらと大きく異なる点は「加害者」と「被害者」が必ず存在することである。
    それを「男の性欲の発散」「痴漢される(性犯罪に遭う)女に問題がある」として、まともな議論ができず誤った情報ばかり広がっている。

    痴漢は性欲発散のために行われているとは限らない。
    「痴漢は生きがい」という加害者たちがいる。
    会社などでたまったストレスを痴漢行為によって発散
    痴漢は罰金や示談で済む場合がほとんど
    「泣き寝入り」が多いので、実際に起きている痴漢の件数はわからない
    逮捕→治療に結び付けられる制度があれば
    「痴漢をするなら日本で」という外国人もいる

  • 男にこそ読んで欲しいとレビューに書いてあったので。
    自分はしないからと、無関心が痴漢を蔓延させる温床になってるんだなあ、と。

    ちょっと乱暴な結論の付け方もあったが、まあ、痴漢を止めたいという気持ちは伝わった。

  •  とにかく性犯罪の加害者への罰則が軽すぎる。
    捕まっても起訴すらされないとか、被害者に非があるかのようにいわれてしまう風潮とか何なんだろう、と常々憤っていた。議論が加熱すると必ず冤罪がどうとかいう話が持ち出されて、めちゃくちゃになる。
    何なの、おかしくない?ってずっと思ってきた。
    この本には、そのあたりの話まできっちりと書かれている。
    驚いた。

     性犯罪者は性欲が異常に強くて理性でそれが制御できないのだから、被害を無くすためには去勢するしかない、くらいに思っていた。痴漢は減らず、性犯罪者がまっとうに裁かれない現実に苛立つと、極端な願望を抱くしか救いがないから。
    まずその今の現状がおかしいことはまた別の話として、痴漢の人物像や、痴漢をする目的、自分からはなかなかやめられずどんどんエスカレートし捕まるまでやめられないこと、逮捕されても家族への罪悪感はあっても被害者には謝罪の気持ちはない等、思っていたのとは違い、諸々衝撃的な内容だった。
    ただ捕まって刑に服しても再犯率が高いことから、再犯防止プログラムが必要なこと、そして加害者家族へのケアのことまで痴漢をとりまく現状、問題や課題までよくまとめられていて、法律や環境が早く整って、とにかく早く痴漢被害が無くなる世の中になってほしい、と思った。

  • 最近「痴漢にあったら安全ピン」議論や
    痴漢が走って逃げる動画が拡散されるなど
    「痴漢」に関する話題を多く目にする中で
    本当に論ずべきは何なのか?を知りたくて読んでみた。
     
    依存者をケアするクリニックで
    多数の痴漢犯罪者の治療をしてきた先生による
    データと経験からあぶり出される
    おぞましいまでの痴漢の実像に
    絶望的な気分に。
     
    痴漢は依存症であり
    逮捕されるまで治らない。
     
    しかし
    依存症なので
    治療を続けない限り
    再犯率も非常に高い。
     
    痴漢加害者は
    自分の家族や会社に迷惑をかけたことへの反省はするが
    被害者への罪悪感はほとんどない。
     
    金品と違って目に見えて減らないので
    少しくらい触ってもよい
    相手が無防備なのが悪い、と
    認知の歪みが生じている。
     
    インターネットで簡単にアダルトコンテンツにアクセスできることで
    AVで描かれている女性像とリアルの区別がつかなくなっている。
     
    どの男性も潜在的に痴漢になる可能性があるので
    痴漢から目を背ける傾向がある。
    つまり痴漢は女性ではなく男性の問題である。

    等々
    ショッキングで怒りを覚える内容ばかりだった。
     
    多くの方がこの真実を知り
    日本が痴漢撲滅に向けて進んでいくことを願うばかりだ。

  • 2017.09.21 HONZより
    「日本初の痴漢専門書」
    「ストレスがたまったから痴漢くらいして良い、仕事が忙しいから痴漢くらい許されるはずだ、嫌よ嫌よも好きのうちで、女性も実は喜んでいるはずだ。冗談かと思うだろうが、痴漢のメンタリティはこのように歪んでいる。」

  • これを書籍にしてくださったことが嬉しい。

    痴漢が起きるのは、
    根底に根深い男尊女卑思想が、
    社会にあるからだ。

    男性にとって、
    男尊女卑は都合の悪いことではないし、
    男性の男尊女卑を利用したい、
    または、それを受け容れて当然と考える女性も多いので、問題が本当の意味での解決には向かわない。

    殺人が、と言っても冤罪がとは言われないのに、
    痴漢が、と言うと冤罪の話になる、
    強姦が、と言うとハニートラップの話になるのはおかしいのだ。

    どこまでも女性側に過失があるという発想を、
    男性だけでなく女性ももっている。

    だから、この社会はよくならない。

    女性の非正規率が高く低賃金であることも、
    まったく同じ構造から起きている。

    女性はもっともっと声を上げていい。
    そして、もっと堂々と女性の味方をすべきだ。

  • 痴漢は性依存症。この観点から、一貫して加害者(場合によっては加害者家族も含む)の治療の必要性を説いている。

    共感性の低さ、認知の歪み、ストレスコーピングの選択肢の少なさ、などが痴漢の特徴・キーワードとしてあげられている。

    治療計画や取り組みなどが興味深く、これは広く知らしめたほうがいいのでは?と思った。

  • 痴漢をした人に「痴漢を止めて失ったものは何ですか?」と聞いたら何人かが「生きがい」と答えた、と言うエピソードに業を感じた。依存症ってどうしたら良いんだろう……

  • 著者は加害者臨床を専門とする精神保健福祉士/社会福祉士。特に日本における痴漢のメカニズムと再犯防止プログラムに関する内容であった。
    著者が男性であることに少なからず意義があると思う。

    全体を通して、痴漢を発生させている社会背景やメカニズムが具体的かつ明瞭に書かれていた。一方、どう再犯を防ぐか、発生させなくするかという点は薄め。実際、これからもっと検討も議論も必要なのだろうなと思った。
    性犯罪は常習化しやすいこと、痴漢は学習された行為であること、日本においては男性の生きづらさや一部残る男尊女卑、満員電車などをはじめとする社会要因を踏まえ、痴漢行為はストレスコーピングとして繰り返されるのだと理解した。

    冤罪に関するデータが不足しているとのことだが、本書の発行から4年経っているので探ってみたい。
    また、新型コロナによる在宅ワークが進んだ以降の痴漢に関するデータが気になると同時に、そこでストレスを対処できなくなった人たちの対処方法がどのように変わっているのだろうと、少し怖くなった。

  • 多くの痴漢は勃起していない。性犯罪のニュースに「去勢しろ!」と言う人もいるが、性犯罪の動機を性欲だけに求めると、そこにある性暴力の本質を見誤る。だが、強迫的な性衝動を抑制する薬物もあり、人権に配慮して処方されている、とのこと。

    抗うつ剤「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」は、うつ病やパニック障害、強迫神経症の人に処方される薬だが、副作用のひとつに勃起不全があり、性依存症の治療に取り入れられているそうだ。
    さらに効き目が強力な抗精神病薬が用いられることもあり、こちらは吐き気などの強い副作用がある。

    そもそも人はどのように痴漢を始め、常習化していくのか。
    電車内で偶然身体がぶつかってしまったり、他者の痴漢行為を目撃した時に、「こんなに簡単なんだ」「意外とバレないんだ」と発見し、学習してしまうことから起こる認知の歪み。
    「もっとひどいことしてる人もいる」「女性だって嫌がっていない」「仕事でストレスが溜まっているから自分は許される」などと自分の行為を正当化。
    そうやって歪んだ認知を正当化して、痴漢が生きがいになっていってしまう人も多いという。

    【リスクを承知しているのに、自身の性的欲求や衝動をコントロールできない。または精神的、身体的、社会的破綻をきたしているにもかかわらず、それがやめられない状態】を性嗜好障害だと本のなかで定義していた。
    性依存症の怖さを感じると共に、専門クリニックに相談できると知れて勉強になった。
    自分も依存してしまったらぜひ通いたい。

  • 病気としての側面を知ることが出来て勉強になった。

    認知のゆがみや、謎の謝罪文、
    リスクマネジメント用紙のサンプル、
    加害者への責任追及によるジレンマ

    治療意欲とその効果に相関関係がない

    今のままの仕組みでは、再犯率が高く被害者も増え続けて国としての手続きの費用も馬鹿にならない。
    社会のこの犯罪に対する認識を変えて、とにかくまず被害者を出さないことにもっと力を入れるべきなんだと勉強になった。

    そもそも、一般的な司法による罰だけでは、認知のゆがんだ人間には罰にすらならなかったり、反省以前の問題という点は、ケーキが切れない非行少年たちと似た部分があると思った。

  • 認知の歪みが過ぎる

  • 2019年、40冊目です。

  •  痴漢治療の実践者が語る痴漢。

     痴漢が性欲というよりはストレスコーピングの間違った手段として行われているのは別段目新しい事実とは思わなかったが、実践者がきっちり本としてまとめたことは意味があったのだろう。

  • >以上のデ ータをまとめると 、痴漢のリアルな実態は 、 「四大卒で会社勤めをする 、働きざかりの既婚者男性 」ということになります 。つまり 、どこにでもいる 、普通すぎるほど普通の男性です 。それは裏を返せば 、普通の男性もきっかけがあれば痴漢行為に手を染めかねないということでもあります 。

    →これ、完全に自分じゃん。全くもって油断出来ないし、いつそうなってもおかしくない要素もある。今のところ大丈夫だけども。

    >強姦や強制わいせつの容疑で逮捕された 5 5 3人のうち 3 3 ・ 5 %が 「 A Vを観て自分も同じことをしてみたかった 」と回答しています 。 2 0歳未満の少年にかぎれば 、その割合は 5割近くにもなったそうです 。 「現実は現実 、ファンタジ ーはファンタジ ー 」と区別がついているといい切ることがむずかしいパ ーセンテ ージではないでしょうか 。

    →とりあえず、AVの見過ぎには気をつけよう。

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著者プロフィール

精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模と言われる依存症回復施設の榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などさまざまな依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、現在までに2500人以上の性犯罪者の治療に関わる。主な著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』(ともにイースト・プレス)、『盗撮をやめられない男たち』(扶桑社)、『「小児性愛」という病——それは、愛ではない』(ブックマン社)、『しくじらない飲み方 酒に逃げずに生きるには』(集英社)、『セックス依存症』(幻冬舎新書)、監修に漫画『セックス依存症になりました。』(津島隆太・作、集英社)などがある。

「2023年 『男尊女卑依存症社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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