「キモさ」の解剖室 (よりみちパン! セ) (よりみちパン!セ 62)
- イースト・プレス (2014年5月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781690636
感想・レビュー・書評
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精神科医である著者が「キモい」という概念をみずからの体験と照らし合わせて解析するという趣向の本書。
たまたま図書館で手にとって読み始めたら止まらなくなった。
「キモい」という感覚って否定的に捉えてたけど、自分以外の理解しがたい「他者」と共存しているという実感を得るためには貴重なセンサーだと実感した。
そしてまた、キモさは「倫理」とも通じると思った。いやはや、子ども向けとはいえ、驚きの一冊だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(一応)子ども向けである「よりみちパン!セ」シリーズに於いても、安定の春日節。
こういう本に出会うと、春日氏の持つ「人間とは(もちろん自分も含めて)『おぞましい』ものである」という確信を中高生の頃に植え付けられていたら、今頃どうなってたかなぁ……と空想せずにはいられません。
「キモさ」を感じること自体は悪ではない。
むしろ「キモい」と思ったら、自分はなぜそのような気分になったのか、何をもって「キモい」と感じるのかを、じっくり考えてみる価値があるのではないか。
という事で、本書では(でも)春日氏の実体験を材料に「キモさ」を掘り下げていくわけですが、この体験談が非常にエグい。
小中学生特有の陰湿さや残酷さ、数十年前の日本に漂っていた貧しさ、差別的な視線等々を織り交ぜつつ、春日氏自身の「キモいと感じた体験」+αが次々に披露されては分析され、の繰り返し。
時には、私自身の黒歴史を土足で踏み荒らされたような気になってしまうエピソードもあって、読みながらにしてHPジワジワ削られた感じです。
これって本当は、春日氏の体験を元に分析した「キモさ」を読んで終わるんじゃなくて、自分の体験で内省し直して自分なりの「キモい」基準を探さないと意味ないんですよね。
それはとっても不愉快な作業ではあるけれど、どこか下品な好奇心を刺激してやまないはず。そしてその時、私は間違いなく「キモい」顔をしているに違いありません。ああ、世界はキモさに溢れている。
自分にとって好ましくないものを重ねることで、自分自身の輪郭を浮き彫りにする。この手の作業が苦手な人には、無理にお勧めしません。