尾形亀之助詩集 (現代詩文庫 第 2期5)

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  • 思潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784783707905

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  • 私が尾形亀之助を知ったのは、もう何年も前の事。
    江國香織の小説「ホリー・ガーデン」だった。
    主人公の果歩が始終暗唱するのだ。
    小説を読んでいる時から、この詩はいったい誰の作なんだろうと気になっていたが、あとがきに江國さんが解説をつけてくれていた。
    で、直ぐに購入した。

    全部が理解できる詩ではないけれど、
    尾形の描く情景はたまに、忘れていたある場面を思いおこさせる。
    それがたまらなく甘く切ない思いを湧き上がらせる。
    中でもお気に入りなのは、
    「おおこれは砂糖のかたまりがぬるま湯の中でとけるやうに涙ぐましい」
    「昼の部屋の中はガラス窓の中にゼリーのやうにかたまっている」
    ~の中は~の中に…などと、文法的にどうなのだろう?と思う箇所はあれど、
    その独特の感性は私を刺してくる。

    江國さんもかなり尾形好きらしく、あかるい箱という作品でも尾形の表現をつかっている。
    「この部屋はゼリーみたい。みんなとじこめられている。」
    この詩集を手にして、私は視野が広がったかも。
    仕事帰り、ふと月を見上げたり。いつもより目線を上げて歩いたら、高い位置に気高く咲いている白薔薇に気付いたり。
    詩集を手にしたあなたは、どんな自分に出会うだろうか。

  • 『百貨店ワルツ』から。
    月と雨と少女と部屋。印象的な言葉。
    温度のない命が、この仮の世界でゆらりゆらりと漂っているよう。まるで白昼夢のように。

  • この人はどんな眼で世界を見ていたのだろうと羨ましくなる。
    技術ではない。詩としてはアマチュアだ。しかしこの感性を真似ることはできない。

  • 少しづつ読み続けて、ようやく読み終わった。一つ一つの文が重く、すらすらと読めなかった。尾形亀之助の人生そのものと、どこまで絡めて読み込むべきなのか、いまだ決めかねている。或る日、ふっと手に取ってみることができるように、しばらくの間、本棚に見えるように置いておく、そんな詩集である。

  • 図書館でようやく見つけた古い本。
    たぶんこれじゃないと思うけど一応登録。

    ホリー・ガーデンの果歩に憧れて、ずっと読みたかった詩人さんです。
    とってもとっても可愛らしい。親しみやすい。すごく好きです。暗唱したくなるような可愛らしい表現がたくさん。

    カステーラのように明るい夜だ
    や、
    おゝこれは砂糖のかたまりがぬるま湯の中でとけるやうに涙ぐましい

    はもちろん、
    今日は針の気げんがわるい
    や、
    お可しな春
    など、何度も何度も読みたくなる詩がいっぱいです。
    ちゃんと購入して、自分の手元に置いておきたいと思いました。

  • 始めてネット古本屋を介して手に入れた。
    本屋にない。
    例にもれず江國香織がきっかけ。
    調べると、本人太宰よりもダメ人間。
    でも文はいい。

  • この人の言葉の一つ一つが大切に思えてくる。
    どくとくのリズムにひきこまれてしまう。
    高校生の時に図書館でいつも読んでいた大切な本。

  • 「夕方になつてみても
     自分は一度飯に立つたきりで
     そのまゝ机によりかゝつて煙草をのんでいたのだ

     そして 今
     机の下の蚊やりにうつかり足を触れて
     しんから腹を立てて夜飯を食べずに寝床に入つてしまった

     何もそんなに腹をたてるわけもないのに
     こらえられない腹立たしさはどうだ

     まだ暮れきらない外のうす明かりを睨んで
     ごはんです と妻がよぶのにも返事をしないで むつとして自分を投げ出している態は・・・・・

     俺は
     「この男がいやになつた」と云って自分から離れてしまいたい」

    尾形亀之助の詩の中で
    わたしがいちばんすきなのはこれ。

     「昼の部屋の中はガラス窓の中にゼリーのやうにかたまっている」

    つぎにすきなのは、これ。

    ぽつり、ぽつりと
    雨粒の降るような感じの
    そんな書き方がすき。

  • かなしみをこんなにもストンと表現できるものなのだな。

  • 愛読書。所収の最後の詩集「障子のある家」がベスト。こんな日本語で散文が書けたら死んでもいいです。

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