学問をしばるもの

制作 : 井上章一 
  • 思文閣出版
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本棚登録 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784784218981

作品紹介・あらすじ

時局による言論の制約、マルクス主義の流行、はたまた所属学会への配慮や、恩師・先輩への気遣いなど煩わしい人間関係……。
 資料と向き合い、ひたすら真理を追究していると思われがちな人文学の研究者たちも、知らず知らずに社会のさまざまなものに拘束されている。
 そんな学者たちの息苦しさの歴史を、科学史的に明らかにしようと企画された国際日本文化研究センターの共同研究「人文諸学の科学史的研究」の成果。
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感想・レビュー・書評

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  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/711922

  • あとがきによれば、「人脈と権力」という特集で学閥のことを書いてほしいという中央公論からの依頼を原点として成った本。学問的営みが、政治や学閥からいかに影響を受けてきたか。学史的視点というものを、初めてそれと意識して体験。
    ・学閥による歴史解釈の偏り。たとえば邪馬台国や鎌倉時代の解釈について、東大や京大の研究者の見解は、その立地する地域の郷土史にいくらか沿ったものとなる(井上、p343)。著者は静岡大学のお茶の研究を引き合いに出し、研究者が地元に歓迎される研究を行う可能性を示唆しつつも、歴史学で同様のことはないだろうとしている。が、最近の地域振興・町おこしの動きを見るに、あり得ないことでもないのでは。
    ・マルクス主義の影響が随所で指摘されることに驚く。海外に通用する日本史研究=海外と共通の理論に即して論じる日本史研究、とする考え方があるのかもしれない。ただし自らを写す鏡としての「海外」に何をもってくるかでまた解釈が変わる。マルクス主義(関、p186:石母田正による武家の解釈)、桑原武夫のフランス(竹村・井上、p254:明治絶対王政説とは何だったのか)、風巻景次郎のドイツ(荒木、p145「〈国文学史〉の振幅と二つの戦後」)等。
    ・第一部を眺めると、政府の方針が学問に与える影響を見て取れる。たとえば、国としての政治エリート育成の必要→政治研究の学会創設、東アジア進出の思想的裏付け→岡倉天心の「東洋美術」概念。外交的要請による日本伝統文化アピール→古都としての奈良・京都再評価。政府の影響というと弾圧等の直接的なものを想像したくなるが、その時々の政府の方針に沿う学説が都合よく脚光を浴びるという影響もある。
    ・永岡、p095:特高警察と民衆宗教の物語 捜査という、アカデミズムとは異なる文脈から行われた「研究」の営み。これは結構面白い視点。

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著者プロフィール

建築史家、風俗史研究者。国際日本文化研究センター所長。1955年、京都市生まれ。京都大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了。『つくられた桂離宮神話』でサントリー学芸賞、『南蛮幻想』で芸術選奨文部大臣賞、『京都ぎらい』で新書大賞2016を受賞。著書に『霊柩車の誕生』『美人論』『日本人とキリスト教』『阪神タイガースの正体』『パンツが見える。』『日本の醜さについて』『大阪的』『プロレスまみれ』『ふんどしニッポン』など多数。

「2023年 『海の向こうでニッポンは』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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