近世ヨーロッパの書籍業: 印刷以前・印刷以後

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  • 出版ニュース社
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784785201319

作品紹介・あらすじ

ロンドンの神保町・セントポール大聖堂脇のパターノスター通りは、ステーショナー(写本屋)、彩飾屋、製本屋、古本屋、羊皮紙屋など書籍関連業者が軒を連ねた本屋街であった。

感想・レビュー・書評

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  • 活版印刷発明をはさんだ時期の本屋さん(と言っていいのかな)のあれこれが興味深かった。けっこう長いこと写本と印刷本が混在していたこととか、写本であれ印刷本であれ値段がめちゃくちゃ高かったこととか、意外にも写本の方が初期投資が少なくてすんだとか。

  • ●構成
    はじめに
    Ⅰ ロンドンの本屋街
    Ⅱ チョーサーのイギリス
    Ⅲ 着だおれのパリ
    Ⅳ ルネサンスのイタリア
    Ⅴ グーテンベルクがやってきた
    Ⅵ 大学町の本屋たち
    おわりに
    --
     グーテンベルクによる活版印刷の「発明」――実際には活版印刷は既に東洋で行われていた――は、西洋において出版革命をもたらした、と言われることがある。果たしてそうなのだろうか。また、印刷本と写本の交代はどのように行われたのであろうか。
     本書では、12世紀から16世紀の西洋において、書籍の写本から印刷本への転換期に出版業や書籍の形態がどのように変化していったかを論じる。
     これより前の時代、いわゆる中世ヨーロッパにおいては、出版活動は殆ど修道院での写本作成であり、また書籍とはすなわち聖書や典礼などのキリスト教出版物を意味していた。次第に宗教書以外の古典文学、科学書、医学書、歴史書などの需要が増えだし、もっぱら修道士が修行の一貫として行っていた写本制作に俗人も関わるようになった。写本は当初羊皮紙を用い、美麗であるが制作に時間がかかり大変高価なものであった。ヨーロッパに紙が普及し始めるとともに、筆記法の簡略化や略字の採用もあいまって書物の量は増大し、しかし品質は低下した。一方、依然として羊皮紙に依る写本も作成され続けていた。それは特に上流階級における書籍の財産的価値観による。値段もそれほど大幅な値下がりはしなかった。
     活版印刷がはじまった15世紀半ば以降も、実態としては革命といいうるほどの低価格化や出版点数の増加、普及度合いなどは無かったことを本書は示している。出版、販売に関して、大学の増加は一見出版の活況を示しそうであるが、実態としては政府や大学当局の保護政策により、自由化とは程遠い制約の網の中で出版活動が行われていたのである。書籍の爆発的な普及は、結局は20世紀当初の物流革命を待たねばならなかった。また著者は、先行研究の様々なデータをもとに、写本から印刷本への交代は断絶的なものではなく緩やかに行われたことを主張する。
     書籍業という視点から、写本作成の過程や読者への流通経路、印刷本の導入および写本と印刷本の関係などを本書は論じている。
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    【図書館】

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