キリン (19) (ヤングキングコミックス)

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  • 少年画報社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784785919528

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  • バイク乗りには有名なマンガ、東本昌平キリン第3部”RUN THE HAZARD”が開始する巻。(第3部は19巻~35巻)

    「バイカーのバイブル」とさえ言われる本作だが、実はこの第3部はそういった「信仰」のあるヒトからはあまり評判が良くない。いわゆる「バイク乗りの危険と紙一重の生き様」というテーマからかなり外れた作品。

    私がこの漫画を読んだのは第2部の連載中だったのだが、1部2部はバイクスピード狂がポルシェやGTRなどのスポーツカーに挑む話で、一定の人からは宗教にも似た熱狂的評価を受けていたものの、軟弱者の俺としては、なんでそこまで速く走らないといけないのかさっぱり分からず、その思い込みの激しさ、自暴自棄さにちょっとひいてしまう感じで共感できなかった。その点この第3部”RUN THE HAZARD”はさっきも言ったとおりそういった「バイカーのバイブル」とはちょっとテーマが違っている暴走族モノ。なのでヤンキー漫画好きの俺にはむしろ1部2部よりも面白かった。

    この作品のテーマはバイク乗りの哲学ではない。ずばり「バイクチームという集団が構成員の意志とは無関係に自己増殖し、そして滅亡するさまを描く」というもの。

    もともと純粋なバイク好きの集団として結成されたバイクチーム「ガルーダ」が所帯が大きくなって「ワルのあこがれの存在」になるにつれ余計なメンバーが増えていってどんどん無法グループになり、内部崩壊していく長編大河ストーリー。ちなみに主人公であるはずの「キリン」はその暴走族の「カシラ」に逆恨みされて追い掛け回されるという端役。

    群れが自然発生し、隆盛し、絶頂期に達した後に滅亡していくさま、あたかも「野生動物ドキュメンタリー」を見ているような醍醐味がある。

    チームの中では比較的良識派であり、純粋なバイク乗りである「ガモウ」が、チームの「犯罪派」と敵対し、ケンカでぶちのめすも逆恨みされ、集団で襲われて刺殺、公衆便所で死体となるシーンは底辺社会の実情を見ているようで本当にショッキング。

    この作品、暴走族を理想論で描く吉田聡の「荒くれナイト」と比較して読むと面白い。「荒くれナイト」は凶暴で犯罪者集団の集まりだった暴走族「がらがら蛇」から、純粋にバイク好き・スピード好きが割れて内部抗争、新たな純粋な走り中心のバイクチーム「輪蛇」を作る、という話。クズが群れを作ってぐちゃぐちゃの内紛になり、最終的に純化されたバイク乗りだけが割れて生き残る、というところがこの作品と似ている。
    (荒くれナイトは理想の走りチームになったカッコイイ「輪蛇」の現在から始まるが、実はここまで来るのに過去に相当悲惨な抗争があったんだよ、と後から語り継がれる歴史として語られる)

    しかしこういった暴走族が抗争でやってる内容、動機、人数規模を客観的に見ていると、国家成立前の「ムラ」の部族抗争そのまんまで興味深い。あの手の組織は多くて数百人。人間ってもともとこのくらいの規模の群れを作って抗争する本能があるんではないか。

    このキリン第3部で出てくるキャラでは”竿師”寺崎がお気に入り。彼の乗っているZ1000mk2は最高にかっこいい。

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