女はポルノを読む: 女性の性欲とフェミニズム (青弓社ライブラリー 64)

著者 :
  • 青弓社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787233103

作品紹介・あらすじ

ポルノを、男だけではなく、女も楽しんでいる!――レディコミやBLの作品を読み、投稿にみる読者の実態や編集者へのインタビューも交えて、ポルノ=女性の商品化論が隠している女性の性的能動性を肯定し、ポルノを消費する主体としての存在を宣言する。

感想・レビュー・書評

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  • まぁ当然だけど、性愛に対する一定の共通認識があるとして書かれてるから、スッキリしない感はある。マイノリティは、こんなフラットに論じられてる場でも疎外感。

  • 女性用ポルノを扱う研究はなかなか見ないので、大変面白かった。女性用ポルノにおける強制性の扱い方のあたりはほんとにスリリングでおもしろい。返す刀で男性用ポルノにおける女性の主体性にも言及するのも見慣れた男性用ポルノについての新たな視点でおもしろかった。
    ポルノグラフィーの量的分析が中心なので、なぜそのようなポルノグラフィーになるのか?そこにはどんなジェンダーバイアスがあるのか?という言及はあまり多くなかった。次はそのような視点の論考を書いて欲しい。
    あとは漫画以外の映像媒体についても女性用AVとか出てきているので研究してほしい。
    この手の本が読まれず未だにマッキノンやドウォーキンが幅を利かす日本の謎のガラパゴスフェミニズムはいったいなんなんだろ。

  • ジェンダー

  • レディコミというジャンルがあることを初めて知った
    ポルノが女性を抑圧する存在である一方、女性を解放する可能性を秘めているという視点は新鮮だった。
    ポルノをまるごと規制してしまうと、女性から見た性の描き方も封殺してしまう。
    また、ポルノを批判することで性そのものを悪しき物にしてしまい、結局貞淑な女という画一的な価値観に染めてしまう。
    フェミニズムは本来、女性のどんなあり方も自由にできることを肯定するべきで、特定の価値観に固定するようなことをしてはいけないと思う。

  • ポルノを「女性に対する人権侵害」と画一的に決めつける議論が、女性たちの多様な性的欲望を無視していることに疑問を投げかけ、女性向けポルノコミックが何を表現しているか、だけでなく、むしろ女性たちがそれらをどう主体的に読み解いているかに焦点をあてた、実に説得力があり、かつ刺激的な論考だ。
    本書が分析の対象としている女性向けポルノコミックは、いわゆる「レディコミ」と「BL」である。ジャンルとしての成立はBL(当初の名称は「ヤオイ」)の方が早く、女性向けポルノ市場の成長可能性に気がついた企業が、BL作家に同じことを男女の絡みで描いてくれと依頼したのだそう。
    この点に関連して、注で引用されている鈴木薫の発言が、私的には実はいちばん面白かった。つまり、女性向けポルノは、女の欲望が本来男に向けられるべきとは想定しておらず、むしろクイアーな欲望こそがベースになっているというのだ。この観点から考えれば、性的「指向」がそもそも男性モデルではないのか、女にはそもそもヘテロセクシュアルな欲望なんてあるんだろうか、とさえ、鈴木は問いかけている。こんなラディカルな議論、はじめて聞いた!
    と注に激しく興奮してしまったけど、本文の守の議論も十分に刺激的だ。鈴木が指摘しているように、女性ポルノがBLに起源をもつという事実は、男/女の欲望を対ととらえる枠組みを無効化してしまう。そこで代わりに導入されるのが、BLで用いられる「攻め/受け」という関係性であり、P.カリフィアのS/M理論である。ここから、男性向けポルノコミックと女性向けポルノとの比較分析を通して、男性向けポルノが基本的に「受け」の位置にある女性を「見る」主体を立ち上げるのに対して、女性向けポルノにおいてはジェンダーの固定化が比較的緩く、読者の多数を占める女性たちは、「受け」と「攻め」の立場にアイデンティファイしたり、ときに客観視したりしながら、主体的に快楽をひきだしていると論じられている。また、暴力的表現を含むポルノに恐怖を感じることなく、ファンタジーとして安心して消費できるよう、さまざまな技術が駆使されていることが、SM理論を援用して論じられ、そうした安心化の技術が、ある程度男性ポルノにも共通するものであることも指摘される。
    女性たちが置かれてきた切実な状況について言語化したフェミニストによるポルノ批判の意義を正当に受けとめながら、一方でフェミニスト自身を閉じ込めてきた男/女のセクシュアリティの二項対立枠組みのもつ限界を明らかにし、そこから解き放たれたフェミニズムがもちうる可能性を示唆する筆者の建設的な姿勢につよく賛同する。カリフィアのSM論はもっと日本のフェミニストに読まれるべきだと、あらためて思う。

  • まだ立ち読みしかしてないけど、著者が同い年の人だった。BL関連の本は少し読んでみてるけど、ここまで突っ込んで書いているのはまだ見たことないなあ。どんなふうにかいてあるのか、楽しみ。
     よくまあ、ここまで集め、分析したもんだ、と思った。結局最後は流し読みしてしまったが・・・

  • 女性もポルノを消費する(ポルノは男性特有の文化ではない)ということを、マスタベーション・ファンタジーとしてのポルノグラフィ(主にエロ劇画、美少女コミック、レディコミ、ハードなBL)の分析を通して論考した本。
    公共空間に蔓延る「ポルノ文化」と、個室の中で読まれる「ポルノグラフィ」を同一の文脈で語るこれまでのフェミニズムに疑問を投げかけている点と、女性から見た(女性のための)ポルノグラフィに着目しているという点に意義がある。
    先行研究のレビューが基礎知識のない人には少し難しいかなと思ったのと、メインの分析が少々薄すぎたのが難点だけど、著者の問題関心の高さがうかがえて若手研究者らしい意欲作な印象。
    個人的には、男性向けのポルノでは攻め役の登場人物が「自分がしたかったわけじゃないんだけど…」と状況の不可避性をぼやいてみせ、女性向けポルノでは「私がやりたかったんです」と受け役が自分の望んだ行為であることを強調することで関係性の平等化をはかっているという指摘が面白いなと思った。あと、同じように受けの痴態を描いていても読み解き方は違うよねってとことか。

    とりあえず自分自身ももうちょっと勉強しないと適切なレビューができない気がするこの本。キワモノゆえに主題がちゃんと読めてるか自信ないわ…(笑)

  • ポルノが「こわい」という感覚は分かる。
    同一視の読み方が多いから、ハードBLは時々こわい…

    受けと攻めの相互作用的力関係という部分は面白いな、と思った。
    ふだん目にする物こそ、僕らは理解していない

  • (推薦者コメント)
    現代の日本には、数多くの“腐女子”と呼ばれる人たちが存在する。端的に言えば、ゲイの性愛や恋愛を描いた作品を好む層である。また、いわゆる「レディースコミック」には、性的な描写のある漫画がある。それだけではない、世の中に出回っている数多くの一般向け小説や映画などには、幾らだって女性向けに「セックス」を描いた作品が存在している。『セックス・アンド・ザ・シティ』は有名である。ポルノは男性のためだけのものではない。では、これらの「女性にとってのポルノ」はフェミニズム文脈の中でどう解釈されるのだろうか。女性的視点から見た「ポルノ」の論考書である。既に所蔵されている『私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち』『サブカルチャー神話解体 少女・音楽・マンガ・性の変容と現在』などと併せて読まれたい。

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著者プロフィール

1972年生まれ、北海道大学文学部卒業、お茶の水女子大学大学院修了(博士:社会科学)。現在は関西大学社会学部専任講師。専攻はジェンダー研究。博士論文に「女性向けポルノグラフィの社会学的分析」(お茶の水女子大学)、論文に「ハードなBL その可能性」(「ユリイカ」2007年6月臨時増刊号)、「〈ポルノグラフィ〉批判とポルノグラフィを消費する経験との間で」(「女性学年報」第20号)など。

「2010年 『女はポルノを読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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