拡張による学習―活動理論からのアプローチ

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  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788506893

作品紹介・あらすじ

教育/発達・学習心理学/認知科学のシーンに強力なインパクトを与えてきた文化‐歴史的活動理論の立役者エンゲストローム待望の邦訳。

感想・レビュー・書評

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  • 活動理論に基づく組織変化,個人の学習を捉えようとする研究.

    ユーリアの博士論文がベースになっているらしい.

    S研のT氏が修論でこれに基づいてJCOの臨界事故の解析をやったわけですが,それを通してこの本を知って,彼の分析が非常に面白かったので,
    自分の研究のフレームワークの中にも取り込んでいこうとおもったりしたわけです.

    ヨーロピアンらしい,意味深長なかきっぷりですが,こういう本って,ずっと向かい合っててもよくわからないんですよね.

    個人の学習についてはベイトソンをベースにしている点がおおいらしく,またもやベイトソン!!

    ベイトソンは最近余りに出てくるので,スルーもしてられないなと思う今日この頃.

    しかし,まあ,大体の骨格は分かったので,この本が他の研究との関係で持つ相対的な位置価を調べていこうと思いました.

    発達的ワークリサーチと呼ぶ方法論に繋がるらしいが,

    訳者の一人ですが,元京大教育,現兵庫県立大の保坂裕子先生や関西大学の山住勝広先生が日本では実践的な研究をされているらしい.
    S瀬先輩にこの話を振ると,ユーリアとの関係は認識されてなかったがやはり保坂先生とは,つながりが有るらしく,
    そのあたりから探っていこうという話になったりした.

    学習や変容のプロセス,発達や認識の形成プロセスを工学的なモデリング能力を応用してモデルで捉える事で,理論に貧しい世界に,
    何らかの理論を,という(モデル屋)仕事を主に構えている訳ですが,

    現実の世界の人間の学習で問題になってることと,現在のモデル研究(端的には機械による学習の実現)
    の世界で問題になってることとの間にはえもいわれぬギャップが有る.

    その谷に挑戦したいですね.と某先生とお話していました.

  • 以前、1回読んでいた。認知心理学のひとつとしていっとき有名になった本である。越境ということで再度読んだ。

  • 訳者後書きを読んで、未消化だった部分が腑に落ちた。

    拡張による学習は、問題解決学習などの学習方法論とは次元を異にしており、矢のように過ぎる時間ではなく、持続し、循環するサイクルの時間において、旧来の活動システムと格闘し転換しようとする永続的な運動を志向する。

    その意味で、弁証法が下敷きにあることは当然か。

    それにしても著者の論を構成する強靱な知力がすごい。

    あと、ハックルベリーフィンの冒険の分析はとても面白かった。

    ・躍進:哲学=ヘーゲル、生物学=ダーウィン、社会科学=マルクス※すべて三角形ですな。
    ・ヘレン・ケラーの最初の教師は、黒人少女マーサ・ワシントン。サリバンではない。
    ・P79 人間の活動の構造:三角形の重複
    ・矛盾とはたんなる活動に不可避の特徴なのではない。矛盾は自己運動の原理であり、発展がもたらされる形式である。
    ・書き言葉は、脱文脈性、限定性、明示性という傾向を明確にもっている。言語は、自律的で自己完結的な存在様式を獲得し、テクストとなる。知識を蓄え、運び、伝える能力が,飛躍的に発展する。音標文字で書くという営みは、言語のメタ言語的機能を開く。
    ・一般性はとらえるのが難しい。なぜならそれは関係的だからである。
    ・一般性は孤立したものから相互に結びつけられたものへ、単純な結びつきから複雑なシステムへ「なりゆく」拡張的な運動を内包している。
    ・芸術の対象が持つ過程的性格は直線的ではなく、質的な拡張と転換という性格を兼ね備えている。
    ・芸術のほんとうの性格は、本質を変化させることにあり、平凡な感情を越える何かである。情動ははじめは個人的であるが、それは芸術作品を通してのみ社会的なものとなり、一般化されたものになる。
    ・「お母さん、何して遊んだらいいのか分からないよ」。産業社会に生きる人間は一般に労働の内容から遠ざけられている。子どもは社会に参画してそれを動かすという努力がどういうものかということからますます疎遠になりつつある。
    ・ベイトソンの学習1、2,3
    ・人間活動はたんに個人の産物ではない。それは同時にまた不可分に社会的な交換と社会的な分配でもある。
    ・人格発達の第一の基本パラメータは「個人と世界との結びつきの豊かさ」。第二のパラメータは活動と動機が階層的に配置される、その程度。
    ・ジレンマの中でこそ、共同の協同的行為は歴史的に新しい活動の形態を出現させることができる。
    ・足場組のメタファーは、子どもの創造性という問題に手をつけないでいる。
    ・最近説発達領域とダブルバインド(個人と社会)の関係。
    ・所与の問題や課題を疑問視し、その範囲を打ち破ることは学習2から3への変換を示す過程である。
    ・弁証法の本来的な性質:抽象的なもの非現実的なものはその要素と内容ではない。
    ・弁証法は現実の実体的内容を扱う。さらに対象の運動を扱う。
    ・バフチンの主要な発見は、個人主義の直中から立ち現れる社会性の新しい質の可能性である。彼はこの新しい潜在力を小説の中に予感した。
    ・ソビエト(歴史的変化の強調)とアメリカ(非歴史的)の研究の違い。
    ・拡張的な移行のサイクルは個人的には表明された疑いやためらい、混乱が出発点になる。

  • 学習活動は、それ以前の段階として、学校教育・労働活動・科学と芸術といった3つの潮流の中に萌芽があったと捉えられている。

    学習を個人的、静的な営みとして分析することには限界があることを指摘している。個人的学習は、集団的なものに拡張される。
    自らの欲求に基づいた第一の学習。何らかの課題を解決するための第一の道具。
    課題と状況などのメタ認知の齟齬から発生するダブルバインドから抜け出そうとする第二の学習(?)。その際、第二の道具として、スプリングボード(まったく関係のないように見えるものでもある課題を解決するための決定的なヒントを与えるかもしれない)・モデル(抽象化・単純化されたモデルで、精緻化されていくことが求められる)・ミクロコスモス(他から隔絶された、これから起きようとしている出来事の小さい版を少人数で試してみる)が考えられている。

    もう一度読まないと理解が十分でないので、ここの内容は信用しないように。多くの面白いことが書かれていたのは確かであるが、それを使いこなさせるかといえば、それはまだまだである。

  • ○co-inovate?

  • 活動理論からのアプローチ

  • 輪読で再読。事例に当てはめると面白いように腑に落ちた。大変だけどやっぱり現場で泳いでる方が性に合ってる。

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