共感覚―もっとも奇妙な知覚世界

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制作 : 松尾 香弥子 
  • 新曜社 (2006年5月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788509986

共感覚―もっとも奇妙な知覚世界の感想・レビュー・書評

  • 原著では10年以上前の本なので,今はもっと研究が進んでいるのでしょうが,共感覚について最初に読むに値する非常に真面目な本だと思います。「ブーバ・キキ」のような非共感覚者における共感覚様現象の話はありません。

    ただ,共感覚を奇妙なものとしている割に,「我々が見てきた共感覚者とは違う」みたいな言い分で,共感覚の「普通」を作り上げようしているかのように読めるところがあり,その点は残念です。(「奇妙さ」からスタートしつつ,その後は針小棒大に扱っているということです。)

    最も気に食わなかったのは,「共感覚者に女性が多い」という性差を「ある理論は扱えない!」という批判をしている点です。第1章で説明の色んな水準について言っているのであれば「ある理論はこのレベルを扱っている」とか,そういう見方をすべきで,著者の性差の扱い方は「遺伝」であるのですが,その説明では共感覚がどのように起きるかは説明できていないわけです。説明のレベルを述べていながら,他の研究者の理論に対して,レベルを無視して欠陥を指摘するのは,一貫性がないと思います。


    *****
    医学には軽症型ないし不完全型という用語があるが,とても軽度なので通常の検査では検出されず,そのため病気だとも診断されないような最小限の病状のことを指している。それで可能性のひとつとして,私たちすべてが軽症型の共感覚で,だから共感覚者とは質的に違うわけではなく,単に量的に違うだけだ,ということがありうる。でも,注意しておきたいのだが,共感覚がすべての普通の人にも見られるのかどうか調べようとデザインされた研究には,共通して次のような問題がある。これは,「大量に共感覚を持っている人(共感覚者)」を調べる場合にも当てはまる問題だ。普通の実験参加者が明るい視覚対象と甲高い音の間の関係について,みんなにたような判断をしたがるというのが,文化の間に受け継がれているメタファーを学習した結果なのか,それとも軽症型の共感覚のせいなのか,絶対の確信を持って区別することはできない。(p.260)

  • 音で色が見える(色聴)などの「共感覚」を、神経科学的アプローチで理論づけた書物だが、2000年の発行で、まだはっきり言えないことが多いとのこと。著者の研究では、共感覚者は2000人に一人くらいはいて、6:1程度に女性が多く、遺伝するらしい。MRIで観察すると、目隠しされていても脳の色覚にかかわる情報処理部分がはたらいている。共感覚者は一般的に思い出せる限りの過去から共感覚があり、一定の共感覚をもちつづけ生涯かわらない。笑い者にされるのをおそれ、他人には共感覚のことを話さない傾向にある。これらのことから著者は、共感覚は2〜3歳のころにはみなあるが、思春期ごろに完成する脳のミエリン化(神経繊維の脂肪による絶縁)が未完成で、電気信号がもれでて、ほかの感覚に対応する脳の部分にはいってしまうという「感覚漏洩」理論を提唱している。基本的に、物を見るということは3種あり、普通に外部の物を見ること、意志でよびだされる「心の目」にみえるイメージ、幻覚などの「外に」あるわけではないことが分かっているものである。共感覚者もこれら全てをもっているが、色聴とこれらを混同することはないらしい。歴史上、詩人や芸術家には共感覚にもとづいているとされる作品があるが、可能性がきわめて高いのはナポコフ(『ロリータ』の著者)だけで、スクリャービンやリムスキー・コルサコフなどが音階に色彩をあてているのは、きわめてあやしく、おそらくアナロジーらしい。ランボー・ボードレール・カンディンスキーらには共感覚があったともされるが、決定的な証拠がない。ネーゲルの『コウモリであるとはいかなることか』にも言及し、他者の心の認識の困難さも指摘している。実験デザインや統計手法にも比較的詳しくふれている。ただ、データを掲載していないので、専門書ではない。共感覚は19世紀末、ヴントによる心理学の成立時には、比較的多く研究されていたが、20世紀末になって、実験手法の精緻化に応じて、再興している。

  • 読み飛ばしつつ。
    解釈として、共感覚は「特別に付け加わった能力」ではなく、「なくならなかったもの」だと。
    ただ、新生児時代の記憶なんて誰も立証できないから難しい話だよね。

    結局、肉体的能力と精神的な思い込みって切り離せないのでは、というのが私の持論でする。
    「病は気から」ってことですな、うむ。

  • 作家のナボコフもそうだったらしいが、言葉を聞いて色が見えるような共感覚(Synaesthesia)は、とても興味深い現象だと思う。本書は、共感覚に関する記述は2−3割程度で、脳科学の方法論についての記載が大半で、これから心理学を始めようとする人を対象にしているような印象だった。・共感覚のタイプとしては色聴が一番多い。2000人に一人ぐらいあると考えられており、女性に多いそうだ。・単語と色の対応は個人ごとに極めて異なっており、一卵性双生児間でも異なっている。そのため、色つきのアルファベット積み木でことばを覚えたことによる連合の問題による現象とは考えにくい。・物心ついたころから共感覚があるという人が多い。動物実験でも、最初は聴覚野と視覚野の間に結合があるのが三か月ぐらいで消失することが確認されており、生下時にはもともとつながっていた回路が何らかの理由で刈り込まれず、残っているためではないかと考えられている。

  • 音を聞くと色が見える…味に形がある…一つの刺激から複数の感覚が生じる「共感覚」。この希有で奇妙な心の現象への心理学の探求からわかってきた、脳と心のしくみ。

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