オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険

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著者 : 鈴木光太郎
  • 新曜社 (2008年10月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788511248

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険の感想・レビュー・書評

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  • 心理学のうさんくさい印象をもたらしてしまう数々の神話を論じた本。
    たとえばサブリミナル、たとえば動物との会話、たとえば赤ん坊への条件付け。
    吊り橋の恋心を期待して手に取ったんだけどそれは入ってなかった。

    派手な話は人口に膾炙しやすく、いったん広まった説は学術的に否定されようとも容易に消えてくれない。
    しかもサブリミナル効果や赤ん坊を使った実験(心を操る・恐怖を植え付ける)は倫理コードにひっかるから今では行えない。
    実験して効果を検証できないことが神話化に拍車をかけてしまう。
    (なんか独裁者の死と神聖化みたいだ。触れないから幻滅もできない)

    厄介なことに神話は完全な嘘ばかりではなく、多少の真実も含んでいるから否定が難しい。
    否定したらしたで真実までもつぶしてしまいかねない。

    最後のほうにちょこっと、ちなみにモーツァルトの効果やロールシャッハテストや文化的性差もこの手の神話です、とある。
    それを見てようやく危うさを感覚的に理解できた。
    「性差はすべて文化的に作られる」という極論を否定しようとすると「文化的性差は嘘だ」と短絡的に考える人がきっとでてくる。
    「生まれつきの部分と社会的な部分があります」という言葉は当たり前すぎてドラマチックじゃない。
    興味のない人や興味だけしかない人には、あいまいな正論よりもわかりやすい極論のほうが伝わりやすい。
    (性差に触れられているのはここだけだから、どんな説を否定しているのか、「文化的性差」がなにを指すのか(社会的性差=ジェンダー?)よくわからない。文化vs生得の二項対立で考えてもしょうがないじゃんという同じ構造の問題を双子研究の部分で書いているにしてはゆるい書き方だ)

    個別の事例への反論は「こういう見方もできる(なのに考慮されていない)」というにとどまる。
    なぜなら、この本は個々の事例について「本当はこうなんだよ」と言おうとしているのではなく、論理的に考えさせるための本だから。

    著者はたぶん、思い込みや虚栄心に引きずられる研究者や、原典にあたらずに教科書を書いてしまう教育者、正確さよりも「わかりやすい」話を無責任に広めるメディアなど、ちゃんと仕事をしない人たちに憤っている。
    それにきっと(本のなかで書かれてはいないけれど)鵜呑みにする一般人にも腹を立てているのだと思う。

    とはいえ説教くさくはない。文章は一般向けで読みやすい。
    そうだったのか!とトリビア的に楽しんで、ああちゃんとしなきゃな騙されないように気をつけなきゃなと、ついでのように思う。
    たとえ研究者や教育者やメディア関係者が全員正確な仕事をしても、見る自分が鵜呑みにするなら危うさは変わらない。
    だから、この本だって正しい疑いをもつための足掛かりとして読まなきゃいけない。


    しっかり検証しようとしている本
    「社会運動の戸惑い」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4326653779

    しっかり検証しようとしない学術の世界を書いた本
    「移行化石の発見」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/416373970X
    「ヴィクトリア朝の昆虫学」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4887217854

    しっかり検証しない人たちを扱った本
    「ネットと愛国」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4062171120
    「突然、僕は殺人犯にされた」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4812445043

    調査する側の態度が捏造に手を貸してしまうかもしれない
    「調査されるという迷惑」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4944173547

  • これ面白いっす。もうね,尖ってますね。攻撃的です。
    確かに,僕らが常識として教えられてきた,まさに「嘘のようなほんとの話」が実はやっぱり嘘だったりすることを,説得力をもって示してくれている。

    早速,授業で使わせていただきました。当然のことながら,出典付きで,この著者はこういう風に今までの説に異を唱えていると言う形で紹介しました。だけども,こういうのって案外おざなりにされがちだとは確かに思う。

  • オオカミ少女の話にしても、サブリミナル効果にしても、聞いた当時(うろおぼえですが、中学生~大学くらいの間、80年代~90年代)の最新の研究結果だと思っていました。
    でも、実際はもっと昔の話だったことに驚いた。
    ほぼ、都市伝説並みの信憑性だったのですね。
    今でも信じている人は多いのではないでしょうか。

  • オオカミに育てられた少女アマラとカマラの話,映画でサブリミナルの広告を提示するとコーラの売上げが伸びた話,母親が左胸に赤ん坊を抱くのは心音を聞かせるため,など心理学に関する研究や逸話について懐疑的に批評している.まことしやかに語られるこれらの説がいかに信ぴょう性に乏しいかを痛感させられる.

  •  アマラとカマラは,狼に育てられてなどいなかった。サブリミナル広告の威力には根拠がない。などなど,心理学界隈の都市伝説を斬る。
     そういった都市伝説をただ否定するだけでなく,それが発生し,根強く信じられてきた理由なんかも考察。とても示唆に富む一冊。ロールシャッハテストも,モーツァルトで胎教も,実にあやふやな根拠に基づいているようだ。
     人間は新しい物好きで,何にでも因果関係を欲しがる。これに確証バイアスや同調,ハロー効果,認知的不協和の解消などが加わって,迷信や誤解が成り立ち,生き続ける。人の心を扱う心理学には,そうやってできた神話が特にはびこりやすい。素朴に感じる「なんか胡散臭い」って感覚を忘れずにいたいな。

  • いわゆる学会で活動する専門家が書く、一般読者向けの書物は何と読みづらく、分かりにくいものか。一般読者を対象としているからには、当然分かりやすく書くことを心がけているのだろう。その一方で分かりやすく書くことで、誤解を与えてはならないとの意識もあるため、その結果が読みづらく、分かりにくい文章につながるのだろう。なら、海外の書物のように、サイエンスライターと共著することで、それを解決できないのだろうか。

  • テキストに載っている内容を疑うことはほとんどしない。それによって神話が広がることがある。教科書は知的経済性が高いものとして認識しているので批判が向きにくい。また,それを使う者も信じていれば神話は再生産され続ける。

  • 心理学の胡散臭さを解消したいと言った本だったが、実験に対するダメ出しばかりで実際はどうだったかといった点がいまいち弱い気がした。

    もう少し明確にこの実験はここがダメだったので結果は、ここが間違っていると言うことを述べてもらいたかった。

    やっと自分も自分に合う著者、本がわかってきた気がする。
    この本の著者とはあまり相性が良くなかった。

    狼少女の件は、様々な状況から考えてやはりなかったのだと思う。今回そのことがよくわかった。

  • 自分が学生の時に最初に手にした本の一つが「狼に育てられた子」で、発達は環境に左右されると謳ったものだった。本書ではアマラとカマラの著述他これまで教科書に紹介されもした事例を胡散臭いものとして紹介し、論理的に考える必要性を訴える。2016.1.17

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オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険の作品紹介

オオカミに育てられた少女たちの話を聞いたことがあるでしょうか。ヒトにとって教育環境がいかに大切かを伝える、この有名なエピソードは、実はほとんどウソだったのです。ところがそれは専門家以外に知られることなく、事実として教えられ続けているのが現状です。心理学には、ウソや誇張が明らかでも、既成事実として生き残っている「神話」がいくつも存在するのです。あの有名な話は神話なのか、なぜ神話はなくならないのか? サブリミナル効果、言語相対仮説など9つの神話をめぐり、その真偽から神話を生み出してきた心理学の舞台裏のドラマまでを明るみに出す知的冒険の書です。

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