オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険

  • 285人登録
  • 3.70評価
    • (16)
    • (40)
    • (35)
    • (5)
    • (0)
  • 52レビュー
著者 : 鈴木光太郎
  • 新曜社 (2008年10月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788511248

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険の感想・レビュー・書評

  • 心理学のうさんくさい印象をもたらしてしまう数々の神話を論じた本。
    たとえばサブリミナル、たとえば動物との会話、たとえば赤ん坊への条件付け。
    吊り橋の恋心を期待して手に取ったんだけどそれは入ってなかった。

    派手な話は人口に膾炙しやすく、いったん広まった説は学術的に否定されようとも容易に消えてくれない。
    しかもサブリミナル効果や赤ん坊を使った実験(心を操る・恐怖を植え付ける)は倫理コードにひっかるから今では行えない。
    実験して効果を検証できないことが神話化に拍車をかけてしまう。
    (なんか独裁者の死と神聖化みたいだ。触れないから幻滅もできない)

    厄介なことに神話は完全な嘘ばかりではなく、多少の真実も含んでいるから否定が難しい。
    否定したらしたで真実までもつぶしてしまいかねない。

    最後のほうにちょこっと、ちなみにモーツァルトの効果やロールシャッハテストや文化的性差もこの手の神話です、とある。
    それを見てようやく危うさを感覚的に理解できた。
    「性差はすべて文化的に作られる」という極論を否定しようとすると「文化的性差は嘘だ」と短絡的に考える人がきっとでてくる。
    「生まれつきの部分と社会的な部分があります」という言葉は当たり前すぎてドラマチックじゃない。
    興味のない人や興味だけしかない人には、あいまいな正論よりもわかりやすい極論のほうが伝わりやすい。
    (性差に触れられているのはここだけだから、どんな説を否定しているのか、「文化的性差」がなにを指すのか(社会的性差=ジェンダー?)よくわからない。文化vs生得の二項対立で考えてもしょうがないじゃんという同じ構造の問題を双子研究の部分で書いているにしてはゆるい書き方だ)

    個別の事例への反論は「こういう見方もできる(なのに考慮されていない)」というにとどまる。
    なぜなら、この本は個々の事例について「本当はこうなんだよ」と言おうとしているのではなく、論理的に考えさせるための本だから。

    著者はたぶん、思い込みや虚栄心に引きずられる研究者や、原典にあたらずに教科書を書いてしまう教育者、正確さよりも「わかりやすい」話を無責任に広めるメディアなど、ちゃんと仕事をしない人たちに憤っている。
    それにきっと(本のなかで書かれてはいないけれど)鵜呑みにする一般人にも腹を立てているのだと思う。

    とはいえ説教くさくはない。文章は一般向けで読みやすい。
    そうだったのか!とトリビア的に楽しんで、ああちゃんとしなきゃな騙されないように気をつけなきゃなと、ついでのように思う。
    たとえ研究者や教育者やメディア関係者が全員正確な仕事をしても、見る自分が鵜呑みにするなら危うさは変わらない。
    だから、この本だって正しい疑いをもつための足掛かりとして読まなきゃいけない。


    しっかり検証しようとしている本
    「社会運動の戸惑い」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4326653779

    しっかり検証しようとしない学術の世界を書いた本
    「移行化石の発見」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/416373970X
    「ヴィクトリア朝の昆虫学」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4887217854

    しっかり検証しない人たちを扱った本
    「ネットと愛国」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4062171120
    「突然、僕は殺人犯にされた」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4812445043

    調査する側の態度が捏造に手を貸してしまうかもしれない
    「調査されるという迷惑」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4944173547

  • これ面白いっす。もうね,尖ってますね。攻撃的です。
    確かに,僕らが常識として教えられてきた,まさに「嘘のようなほんとの話」が実はやっぱり嘘だったりすることを,説得力をもって示してくれている。

    早速,授業で使わせていただきました。当然のことながら,出典付きで,この著者はこういう風に今までの説に異を唱えていると言う形で紹介しました。だけども,こういうのって案外おざなりにされがちだとは確かに思う。

  • オオカミ少女の話にしても、サブリミナル効果にしても、聞いた当時(うろおぼえですが、中学生~大学くらいの間、80年代~90年代)の最新の研究結果だと思っていました。
    でも、実際はもっと昔の話だったことに驚いた。
    ほぼ、都市伝説並みの信憑性だったのですね。
    今でも信じている人は多いのではないでしょうか。

  • オオカミに育てられた少女アマラとカマラの話,映画でサブリミナルの広告を提示するとコーラの売上げが伸びた話,母親が左胸に赤ん坊を抱くのは心音を聞かせるため,など心理学に関する研究や逸話について懐疑的に批評している.まことしやかに語られるこれらの説がいかに信ぴょう性に乏しいかを痛感させられる.

  •  アマラとカマラは,狼に育てられてなどいなかった。サブリミナル広告の威力には根拠がない。などなど,心理学界隈の都市伝説を斬る。
     そういった都市伝説をただ否定するだけでなく,それが発生し,根強く信じられてきた理由なんかも考察。とても示唆に富む一冊。ロールシャッハテストも,モーツァルトで胎教も,実にあやふやな根拠に基づいているようだ。
     人間は新しい物好きで,何にでも因果関係を欲しがる。これに確証バイアスや同調,ハロー効果,認知的不協和の解消などが加わって,迷信や誤解が成り立ち,生き続ける。人の心を扱う心理学には,そうやってできた神話が特にはびこりやすい。素朴に感じる「なんか胡散臭い」って感覚を忘れずにいたいな。

  • いわゆる学会で活動する専門家が書く、一般読者向けの書物は何と読みづらく、分かりにくいものか。一般読者を対象としているからには、当然分かりやすく書くことを心がけているのだろう。その一方で分かりやすく書くことで、誤解を与えてはならないとの意識もあるため、その結果が読みづらく、分かりにくい文章につながるのだろう。なら、海外の書物のように、サイエンスライターと共著することで、それを解決できないのだろうか。

  • 心理学の胡散臭さを解消したいと言った本だったが、実験に対するダメ出しばかりで実際はどうだったかといった点がいまいち弱い気がした。

    もう少し明確にこの実験はここがダメだったので結果は、ここが間違っていると言うことを述べてもらいたかった。

    やっと自分も自分に合う著者、本がわかってきた気がする。
    この本の著者とはあまり相性が良くなかった。

    狼少女の件は、様々な状況から考えてやはりなかったのだと思う。今回そのことがよくわかった。

  • 自分が学生の時に最初に手にした本の一つが「狼に育てられた子」で、発達は環境に左右されると謳ったものだった。本書ではアマラとカマラの著述他これまで教科書に紹介されもした事例を胡散臭いものとして紹介し、論理的に考える必要性を訴える。2016.1.17

  • おもしろかった。この本で書いてあったように、心理学を勉強していて、誇張されたり、アレンジされてしまった「神話」のほうを最初に聞いたということが何度もあった(オオカミ少女、イヌイットの言語、赤ちゃんに対する心音の効果、ワトソンのアルバート坊や実験)。
    「STAP細胞」に限らず、実験結果をねつ造したり、自分の「価値観」に合わせて都合良く解釈したり、拾い読みだけで引用したり…ということは、日本に限らず、欧米でも、どの学問分野でも日常茶飯事なことなのかもしれない。
    前回読んだ「超常現象を本気で科学する」でも書いてあったが、科学(いや、学問全体がそうあるべきなんだと思う)は完全無欠ではなく、今ある説に疑問を感じることから始まっていくのだということを、再認識させられた。また、原典に当たることの大事さも痛感した。要約本「だけ」を読んで分かった気になるのだけではなく、その先、原典に当たって深めていくことの大切さを改めて感じた。
    なお、このレビューを書こうと思って検索したら、増補文庫版がつい最近出版されてたのを今知った・・・orz。

  • 図書館で借りて読みました。リクエストをしてからずいぶん待たされたので、かなり人気があるのだと思う。買って読んでもいいくらいなのだけど、単行本を買う勇気がない。経済的にも、空間的にも。さて、オオカミ少女については以前にも書いているけれど、自分の中ではとっくに結論が出ている。捏造。なのに、なぜ未だに具体例として取り上げられるのか、そちらに興味があった。本書は、いろいろな題材を使って、全編で、このガラクタとも思える捏造事件が、神話として残されてきた理由を考えている。いわゆる学部生レベルで使う教科書にも、まだまだ残っていると言う。結局、その著者たちが元論文に当たったりせず、孫引きで他の本から引用しているからなのだろう。あるいは、こういう題材を、学生の興味が引ければと、話題づくりのために使っているのかもしれない。しかし、そんなことを続けていると、サイエンスと偽サイエンスの区別がつかなくなる。何を信用していいか分からなくなる。果ては、「あるある事件」のようなことにもなってしまう。個人的には、あんな番組はまゆにつばでもつけながら楽しんでいればいいので、それを信じて、だまされたと言っているほうがどうかと思うのだけど。

  • 狼少女、コーラのサブリミナル、本当のことだと思っていたことが嘘であったらしいと言うことがわかっただけでも読む価値があった。プラナリアの記憶が分裂させても共食いさせても引き継がれて行く(これは否定されているわけではないと理解してます)というのが印象的。

  • オオカミ少女は実はいなかった、という話はなんとなく聞いたことがあったけど、サブリミナル効果も、双子をめぐるミステリーも、共食いしたプラナリアに記憶が移植されたというのも、みんな疑わしい話だったとは!!どれも聞いたことがあるような話だったのでビックリ。
    STAP細胞騒動やマスコミのあり方や、そんな問題にも繋がる話題が多くて勉強になりました。情報を受け取る自分たちも、慎重に真偽を見極めなければならないんだなぁ。

  • 一度は耳にしたことがあるような心理学や化学にまつわるいくつかのエピソード。さて、これらのエピソードははたして捏造であるか否か?最近話題のメンタリズム等にも通じますが、ある説をそのまま鵜呑みにしない、まず疑って調べて考えてみる、という姿勢をもつのは大事ですね。この本も本当なのかどうなのか、考え始めるとキリがない…。

  • オオカミ少女はいなかった。家庭科の教科書にも掲載されている話がまさか捏造だったとは思わなかった。
    他にもサブリミナルなど信じられているけれど証明ができないものやあやしいものがたくさんある。
    単に「あの話が嘘だった」とセンセーショナルにまくしたてるわけでもなく、一部を否定してしまうとすべてを否定しなければならなくなってしまうが、そうなるとちょっと待ってとなってしまう。
    問題は何故否定されても神話のようにいつまでもしぶとく生き残るのか、である。

  • 一連のトンデモ本ものを思い出した。著者のイライラはもっともだし、マメな脚注含めいい仕事だとは思うけれど、これ別に心理学に限った話でもないんじゃ?という気はする。いずれにしろ本で嘘をつくのは難しい話じゃないし、数値を並べた根拠だって素人には検証できない。眉に唾して読むしかないのかなあ。
    プラナリアのエピソードは本当だったら面白いのに、と引きこまれた。追試ができなかったということなのかもしれないけれど、反証のほうが尻切れトンボでなんか納得いかない。これ、学会ではどういう評価になっているのか知りたいぞ。

  • 講義で一度は聞いたことのある話…
    あの話は実はウソ?
    オオカミ少女やふたごの謎など、8つの謎を検証していきます!!真実とは何か、真実を知るためにはどうすればよいのかを考えてみませんか?

  • 心理学の周辺の言説は怪しいものが沢山ある,と思っていたら,そのような話が満載。

    「オオカミ少女」「サブリミナル効果」はデタラメ以外の何者でもない。他にも同じようなデタラメがあって,孫引きを繰り返しながら書かれた教科書も多いことが分かった。


    2012/01/28図書館から借用;1/29夕方から読み始め

  • 心理学の神話を検証する話。心理学者のスキャンダル集みたいな部分もあり、面白かった。
    ・オオカミ少女(アマラとカマラ)はいなかった。
    ・サブリミナル効果はマスコミが作り出した神話であり、ちゃんとした学者が検証したものではない。
    ・強い言語相対仮説は嘘。双生児の研究で有名なロンドン大学ユニヴァーシティ・コレッジ教授シリル・バートはデータを捏造していた。
    ・母親が赤ちゃんを左胸で抱くのは、心音が赤ちゃんを安心させるからというのは証明されていない。
    最後にちょっと触れられているだけだが、モーツァルトを聞くと頭の回転が良くなる。ロールシャッハテストでその人の性格が診断できる。男らしさ・女らしさは生まれついてのものではなく、文化によって決まるということも、ただの神話のようだ。

  • 一度は聞いたことのある話、オオカミ少女の話は本当なのか。など
    その検証をしながら少しだけ心理学を垣間見れます。

    【鹿児島大学】ペンネーム:アマラ
    ------------------------------------------------------------
    鹿大図書館に所蔵がある本です。
    〔所蔵情報〕⇒ http://kusv2.lib.kagoshima-u.ac.jp/cgi-bin/opc/opaclinki.cgi?fword=11108058437
    -----------------------------------------------------------

  • タイトルに「冒険」と表記しただけあって、恐れず大胆に自説を展開した検証がなされています。

  • 懐疑主義的な立場から、心理学にまつわる幾つかの「神話」、もっと俗な表現で言えば「都市伝説」的なテーマを批判的に検証する。
    扱われているテーマは「狼に育てられた少女」「TVや映画のサブリミナル効果」「言語・文化による色の認識数の変化(三色の虹)」「アルバート坊やの恐怖条件づけ」他。一次資料や聞き取り調査などにより、幾つかの「神話」について著者は明確にその心理学的効果を否定する。また、「なぜ母親は赤ちゃんを左胸で抱くか」というテーマについては、既存の学説は否定するものの、現実に左胸で抱くという事実は認め、未だ心理学では解明されていないとする。

    「神話を」明快にバッサリ切り崩す著者の文章は、面白く引き込まれる。しかし一方で、本書の記述に関して批判的な研究者が居ることもまた事実である。こうした懐疑主義的な本を読む際に、まず読者自身が懐疑的な立場を堅守することが大事であろう。

  • 心理学にまとわる『神話』をぶっ壊すという本書の試みは非常に刺激的であり、著者のシニカルな語り口も個人的には好みである。

    しかし、本書が取り扱う『神話』が、「オオカミ少女」「サブリミナル効果」以外、『神話』と呼ぶほど世間一般にその説が浸透していないように感じることが少し肩すかし(逆にそんな説があったのかという点では勉強になったので、それはそれで楽しめたが)。

    また、心理学という間接学問の限界ゆえか、『神話』の検証方法も間接事実の収集をもとにした著者の推測レベルを超えておらず、著者の主張に説得力が十分あるとは言えない、ただ読み物としては純粋に面白かった。

  • 心理学を専攻していると、
    「心理学って人の心が読めるの?」と
    胡散臭さと興味を持って聞かれることが多い。

    普通の心理学を勉強すれば、そんなことはないと自信を持って
    言えるのだが、なんで心理学は、そんな胡散臭いような学問に
    なってしまっているのかがよく分かる一冊。

    また同時に、心理学をめぐって、
    富と名声を手に入れようとした人や
    孤独に陥った人などの人間ドラマが紹介されている。
    ここが結構生々しくて面白い。

    心理学を勉強している大学生は読んでみると面白いだろう。

全52件中 1 - 25件を表示

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険に関連するまとめ

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険を本棚に「積読」で登録しているひと

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険の作品紹介

オオカミに育てられた少女たちの話を聞いたことがあるでしょうか。ヒトにとって教育環境がいかに大切かを伝える、この有名なエピソードは、実はほとんどウソだったのです。ところがそれは専門家以外に知られることなく、事実として教えられ続けているのが現状です。心理学には、ウソや誇張が明らかでも、既成事実として生き残っている「神話」がいくつも存在するのです。あの有名な話は神話なのか、なぜ神話はなくならないのか? サブリミナル効果、言語相対仮説など9つの神話をめぐり、その真偽から神話を生み出してきた心理学の舞台裏のドラマまでを明るみに出す知的冒険の書です。

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険はこんな本です

ツイートする