ナショナリズムとグローバリズム (ワードマップ)

制作 : 大澤真幸  塩原良和  橋本 努  和田伸一郎 
  • 新曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788514003

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  • 著者:
     大澤真幸
     塩原良和
     橋本 努
     和田伸一郎

    【書誌情報】
    版型:四六判 並製 336頁
    定価:本体2500円+税
    発売日:2014.8.8
    ISBN:978-4-7885-1400-3

    ◆その熱狂のなかでクールに考えるために
     国境を越えて人や資本が軽々と移動するグローバル化の時代に、なぜ国民・国家にこだわるナショナリズムが、生き続けるどころか、ますます盛んになっているのでしょうか。たしかに竹島・尖閣諸島などの領土問題は重要ですが、そのために憲法「解釈」を変え、集団的自衛権を使って、「戦争のできる国」にする必要などあるのでしょうか。この狂気ともいえるナショナリズムの熱狂のなかで、冷静にその意味と危険性を考えるために、本書は最適だと思います。ゲルナー、アンダーソンなどの著名な理論から始まって「日本のナショナリズム」「戦争・軍隊」「マクドナルド化」「移民」「核」「グローバルシティ」「ソーシャルメディア」などの魅力的なキーワードで、グローバル化のなかで変質するナショナリズムの「現在」を、四人の著者が多面的に解読します。


    【目次】
    まえがき [003-005]
    目次 [007-011]

    I部 歴史としてのナショナリズム

    ネイション/ナショナリズム  定義不可能なるもの 014
      定義の不可能性
      ‎特殊主義と普遍主義
      ‎ネイションとナショナリズムの起源

    民族/エトニー  ネイションの起源? 027
      民族
      ‎ネイションの断絶
      ‎エトニーのナショナルな起源
      ‎ナショナリズムの宿痾としての民族問題

    主権  権力の起源? 041
      暴力を正当化する方法
      ‎許される殺人
      ‎構成する権力

    ■コラム ネイションとステイト〔橋本〕 [048-049]

    想像の共同体/無名戦士の墓/出版資本主義  ネイションは想像された共同体 050
      想像の共同体
      ‎無名戦士の墓
      ‎出版資本主義

    資本主義  その国家との関係 060
      商業資本主義と自由資本主義
      独占資本主義
      国家の役割を最優先する‎二つの資本主義
      新‎自由主義

    国語  ネイションはなぜ言語に執着するのか 069
      ナショナリズムの中核要素としての国語
      ‎真理語と音声口語の間に
      ‎国語化の原因は?
      ‎日本語としての「国語」

    小説・新聞  小説・新聞がネイションをつくった? 079
      小説
      ‎新聞
      ‎もう一つの側面

    エスノ・ナショナリズム  民族とナショナリズム 089
      民族共同体からの発展
      ‎共通の文化的価値
      ‎エスノの過剰がもたらす悲劇

    ファシズム  民主主義のなかから生まれた 096
      ファシズムとは何か
      ‎ファシズムの諸特徴
      ‎「人種」

    テロリズム  理解不能な他者か 103
      テロリストと「名指す」こと
      ‎他者の悪魔化と「戦時社会」
      ‎同質性嫌悪と説明嫌悪
      ‎自己に跳ね返ってくる他者への暴力

    学校とネイション  学校教育がもたらしたもの 111
      「立身出世」と「平等社会」幻想
      ‎学校教育と公用語
      ‎学校という巡礼

    ■コラム 地図・博物館〔塩原〕 [116-117]

    ゲルナーと近代主義者たち  ネイションはどのように想像されるか 118
      なぜ、人はネイションのために死ぬのか?
      ‎事実誤認としてのネイション

    日本のナショナリズム  日本人はいつ「国民」になったのか 124
      国民の条件
      ‎国民以前の「日本」
      ‎日本人が「国民」になったとき
      ‎日本ナショナリズムの変容

    ■コラム 遠隔地ナショナリズム〔橋本〕 [134]


    II部 政治思想としてのナショナリズム 

    民主主義  運動としての民主主義 136
      近代民主主義の誕生
      ‎代議制の問題点
      ‎民主主義の四つの要素

    社会主義  なぜ不可能なのか 143
      究極の理想
      ‎どこまで実現すべきか
      ‎なぜ不可能なのか

    マルクス主義(コミュニズム)  マルクスがめざしたもの 150
      「運動」としての共産主義
      「最初の‎一歩」としての共産主義
      ‎「最終段階」としての共産主義

    左翼/右翼  サヨク/ウヨクって何? 157
      戦後の状況
      ‎日本における状況
      ‎「思想」としての左翼

    革命  民衆による小文字の革命 165
      二十世紀における「革命」
      ‎新自由主義以降の革命のあり方の変化
      ‎新自由主義国家の下での新たな革命の形
      ‎反グローバリゼーションの闘士たち

    戦争・軍隊  「新しい戦争」とは 174
      国家の上にある管理困難な軍事領域
      ‎国家の下にある管理困難な軍事領域
      ‎新自由主義経済と戦争との関係

    ヘゲモニー(覇権)  主導権をいかに確保するか 182
      G8サミットを通したアメリカの世界戦略
      ‎国内統治の具体的プロセス
      ‎今後の国際秩序は?

    コミュニタリアニズム  共同体を愛する思想 188
      三つの特徴
      ‎国家型コミュニタリアニズム
      ‎地域型コミュニタリアニズム

    シヴィック・ナショナリズム  市民とナショナリズム 194
      四つの特徴
      ‎多文化主義の困難

    新自由主義/新保守主義  「大きな政府」から「小さな政府」へ 199
      「大きな政府」から「小さな政府」へ
      ‎新自由主義理論と現実とのズレ
      ‎自由主義と新自由主義との違い
      ‎新自由主義と新保守主義との構造的相互補完性


    III部 グローバリズム

    近代世界システム  グローバリゼーションの始まり? 210
      近代世界システム
      ‎中核/周辺、そして半周辺
      ‎覇権

    グローバリゼーション  グローバル化の行く末 217
      標準化する世界と断片化するリアリティ
      ‎移動するパワーと「庭」
      ‎不安と怨念の「荒野」
      ‎吹き溜まり/ゴミ捨て場

    植民地  植民地化がもたらしたもの 224
      異なる事情
      ‎世界の分割
      ‎戦勝国の責任
      ‎周辺の開発

    帝国主義  帝国主義とは何か 231
      レーニンの帝国主義論
      幸徳秋水の‎帝国主義論
      ‎解決策としての科学的社会主義

    帝国  皇帝のいない帝国 239
      皇帝なしの帝国
      ‎至高と膨張
      ‎フロンティアの消滅

    ■コラム EU(欧州連合)の礎としての「ヨーロッパ合衆国」〔橋本〕 [246]

    シティズンシップ  「市民」とは何か 247
      何を?
      ‎誰の?
      ‎どのように?
      ‎誰が?

    マルチカルチュラリズム(多文化主義)  他者との対話と協働の論理へ 253
      マイノリティの異議申し立てと公定多文化主義
      ‎差異の管理と「寛容」
      ネオリベラル・マルチカルチュラリズムと‎「選別/排除」
      ‎変革するマルチカルチュラリズムへ

    ■コラム マクドナルド化〔塩原〕 [260]

    エスニシティと白人性  エスニック・マイノリティとは? 261
      オリエンタリズムとパターナリズム
      ‎マジョリティ性・白人性・日本人性
      ‎対話と協働のための理解

    移住者と出入国管理  国境を越えるとは? 266
      定住者と移住者
      ‎移住経験の分断
      ‎リベラル・パラドックスと「悪魔化」
      ‎国境と国内の区別?

    マイノリティとポジショナリティ  アイデンティティ・ポリティクス 272
      文化本質主義と「内なる差異」
      ‎マイノリティという位置
      ‎アイデンティティ・ポリティクスと自作自演としての排除

    反グローバリズム/NGO  もう一つの世界は可能だ! 275
      グローバリゼーションの三つの層
      ‎オルター・グローバリゼーション、「もう一つの世界は可能だ!」
      ‎世界社会フォーラム

    核/平和運動  核のない世界は夢か 288
      冷戦期の核軍拡競争
      ‎被爆国としての日本の反核運動
      ‎日本の反核運動が抱えたいくつかのねじれ
      ‎反核運動の三つの次元

    コスモポリタニズム 世界市民主義は空想か 296
      世界市民と世界政府?
      ‎コスモポリタンな現実
      ‎エリートの占有物?
      ‎コスモポリタンな対話と討議に向けて

    ■コラム 国連・国際機関とグローバルな市民社会〔塩原〕 [301]

    グローバル・シティ  グローバル化を超えて 302
      サッセンの「グローバル・シティ」
      ‎日本の場合
      ‎日本における自由化の難しさ
      ‎グローバル・シティが抱える矛盾

    ソーシャルメディア  マスメディアからソーシャルメディアへ 309
      ソーシャルメディアを普及可能にした空白
      ‎エジプトで果たした役割
      ‎マスメディアからソーシャルメディアへ
      ‎認知労働としてのネット投稿
      ‎大震災を越えて

    あとがき――ナショナリズムの現在 [320-329]
    さらに学ぶ人のためのブックガイド [xii-xvi]
    事項索引 [iii-xi]
    人名索引 [i-ii]

  • ほとんど社会学領域からの引用であるが、定義をざっとみることができるという意味では役に立つ。8月15日そ終戦記念日とするのは日本だけである、ということを気づかせないために、マスコミでは8月15日にイベントのニュースを放映する。これに気づくのはいつか。

  • ネイションは客観的には新しいのに、主観的には古い。
    あらゆるところが国境になる。
    資本主義とは無限んお資本蓄積を優先するシステム。
    世界は多様化しながら標準化していく。

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著者プロフィール

大澤真幸(おおさわ・まさち):1958年、長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。思想誌『THINKING 「O」』(左右社)主宰。2007年『ナショナリズムの由来』( 講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞をそれぞれ受賞。他の著書に『不可能性の時代』『夢よりも深い覚醒へ』(以上、岩波新書)、『〈自由〉の条件』(講談社文芸文庫)、『新世紀のコミュニズムへ』(NHK出版新書)、『日本史のなぞ』(朝日新書)、『社会学史』(講談社現代新書)、『〈世界史〉の哲学』シリーズ(講談社)、『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫)など多数。共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』(以上、講談社現代新書)、『資本主義という謎』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『資本主義の〈その先〉へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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