誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論

  • 新曜社
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本棚登録 : 2001
感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784788514348

感想・レビュー・書評

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  • プロダクトデザインの教科書的な本。
    そのため、プロのデザイナーなら当たり前な内容で、読者によっては新しい発見はあまりないかもしれない。

    本書は、使う人が困らないように配慮したデザインについて、アフォーダンスと絡めて述べられていた。
    世の中には使い勝手よりもオシャレを追求したデザインも多々あるが、下記のように危険も伴う製品は配慮したデザインが特に大事だと改めて感じた。

    以下、本書からの抜粋。

    ①ガスコンロのツマミの配置
    コンロの火が出るところと、ツマミの配置について記載。わかりにくい並び方だと、「左奥のコンロを点火するつもりでツマミを回したが、異なる箇所の火がついてしまった」とミスが起こる。どこと対応しているか、わかりやすく情報整理が大事。

    ②ドアの取っ手のデザイン
    Pull or Pushがわかりやすい見た目の取っ手にすること。災害時に一瞬のミスが命取りになってしまう。

    ③原子力発電所のスイッチ
    発電所で事故があり、当初は操作員によるヒューマンエラーとされたが、著者が調査したところ、スイッチが分かりにくく、起こるべきして起きた事故と断言。(こちらの例は、Before とAfter の写真がなく、どんな風にわかりにくかったのか不明瞭)

  • 海外のホテルの洗面台における、蛇口と栓の使いにくさ、使い方の分かりにくさ、に関する説明にいちいち共感してしまった。
    「よいデザイン」と「わるいデザイン」の間には明確な違いがある、というのは、世界共通の認識のようです。
    非常口のパニックバーは、完璧なデザイン。

  • デザインの基本的な考え方。
    ヒューマンエラー?いや、デザインが悪い(第5章)

  •  良いデザインにおける重要な特性が二つある。発見可能性と理解である。発見可能性とは、どういう行動が可能か、どの部分をどうすればよいのかを見つけ出せるかである。理解は、それがいったい何を意味しているのか、その製品はどんな使われ方が想定されているのか、いろいろ異なる操作部や設定は何を意味しているのか、である。

     エクスペリエンスは大切である。人がインタラクションをいかに好ましく記憶するかを決めるからである。全体的なエクスペリエンスは良いものだったか、フラストレーションを感じたり混乱するものだったか。我々の家庭で使われるテクノロジーが理解できない振舞いをすると、混乱、フラストレーション、さらには怒りを引き起こしかねない。これらはすべて強い負の情動である。理解できるときは、制御感、支配感、満足感、さらに自尊心さえも得ることができる。これらはすべて正の情動である。認知と情動は強く結びついている。つまり良い製品を作るためには、この両方を頭に置いてデザインしなければならないということである。
     我々が製品とインタラクションするときは、それがどう動くかを頭に描かなければならない。それが何をするもので、どう動き、どんな操作が可能かを発見すること、すなわち発見可能性である。発見可能性は、以下の章で扱う基本的な五つの心理学的概念から得られる。それらはアフォーダンス、シグニファイア、制約、対応づけ、フィードバックである。だが、おそらくこれらより重要な、六つの原則がある。システムの概念モデルである。真の理解を提供するのは概念モデルである。

     アフォーダンスという用語は、物理的なモノと人の関係を指している。アフォーダンスは、モノの属性と、それをどのように使うことができるかを決定する主体の能力との間の関係のことである。椅子は、支えることをアフォードするもので、それゆえ座ることをアフォードする。多くの椅子は一人で運ぶこともできるが、なかには力のある人か何人かでないと持ち上げられないものもある。幼い、あるいは力が弱い人が椅子を持ち上げられなかったとしたら、これらの人々にとってその椅子はこのアフォーダンスを持たない、つまり持ち上げることをアフォードしないのである。

    ・アフォーダンスは人と環境の間で起こりうるインタラクションである。アフォーダンスの中のあるものは知覚可能であるが、そうでないものもある。
    ・知覚されたアフォーダンスはシグニファイアとして働くことが多い。しかしそれは曖昧な場合がある。
    ・シグニファイアはものごとを示唆する。とくにどんな行為が可能か、それがどう行われるべきかを示す。シグニファイアは知覚されるものでなければならない。そうでないときはうまく機能しない。

     デザイナーの持つ概念モデルは、デザイナーが持つ、製品の見かけ、感じ、操作についての概念である。システムイメージは、構築された物理的な構造から知覚されうるものである。ユーザーの持つメンタルモデルは、製品やシステムイメージとのインタラクションによって形作られる。デザイナーはユーザーの持つモデルが自分たちの持つモデルと同一であって欲しいと思っている。しかし、デザイナーはユーザーと直接話をすることはできないので、コミュニケーションの責任はシステムイメージにかかっている。

    ・行為の七段階理論のサイクル
    1 ゴール(ゴールの形成)=何を達成したいか?
    2 プラン(行為のプラン)=代替となる行為は何か?
    3 詳細化(行為系列の詳細化)=何ができるか?
    4 実行(行為系列の実行)=それをどうやってやるのか?
    5 知覚(外界の状態の知覚)=何が起こったのか?
    6 解釈(知覚したものの解釈)=それは何を意味するのか?
    7 比較(ゴールと結果の比較)=それで良いか?

    ・デザインは本能、行動、内省すべてのレベルで行われなければならない
     三つの処理レベルはすべてが連動して働く。すべてが、製品やサービスに対する好き嫌いを決定するのに重要な役割を果たす。サービス提供者との一つの嫌な経験が、将来のすべての経験を台無しにすることもある。一つのすばらしい経験で過去の欠点を補うこともできる。インタラクションの原点となる行動レベルは、希望や喜び、欲求不満や怒りなどの、期待にもとづく情動の源泉でもある。行動レベルと内省レベルが連携するときに理解が起こる。楽しさには三つのすべてが必要になる。三つのレベルすべてでデザインすることはとても重要であり、私はこの話題のために『エモーショナル・デザイン』という本一冊を費やしたのである。

    ・デザインの七つの基礎的な原理
    1 発見可能性 どのような行為が行えるのか、機器の今の状態はどうなっているのかが判断される。
    2 フィードバック 行為の結果と製品やサービスの現在の状態について完全かつ継続的な情報がある。行為が実行された後、新しい状態がどうなったかが分かりやすい。
    3 概念モデル デザインは理解と制御感につながるように、システムの良い概念モデルを作るのに必要なすべての情報を伝える。概念モデルは、発見可能性と評価の両方を向上させる。
    4 アフォーダンス 望ましい行為を可能にするために適切なアフォーダンスがある。
    5 シグニファイア 効果的にシグニファイアを利用することによって、発見可能性を確かなものにし、フィードバックが理解可能なかたちで伝えられる。
    6 対応づけ 制御部と行為の間の関係は良い対応づけに原理に従う。それは、可能な限り空間的なレイアウトや時間的な接近によって支えられる。
    7 制約 物理的、論理的、意味的、文化的な制約を与える。これによって行為を導き、解釈のしやすさを助ける。

     想起させるもの(リマインダー)には、二つの側面がある。シグナルとメッセージである。何かを行なう際には、何をするのかということと、それをどのようにするのかということの区別があるのと同様に、思い出す場合にも、何か想起しなくてはならないことがあるということを知るシグナルと、想起する情報そのものであるメッセージの二つを区別しなくてはならない。想起するための道具としてよく使われているものは、通常この二つの重要な側面のうちの片方しか教えてくれない。

    ・最良の対応づけ つまみが、操作すべきものに直接備わっている。
    ・二番目に良い対応づけ つまみが、操作される対象のできるだけ近くにある。
    ・三番目に良い対応づけ つまみが、操作すべき対象と同じ空間配置になっている。

     なぜ人は誤るのか。それはデザインが、システムや機械の要求に焦点を当て、人間の要求に応えていないからである。ほとんどの機械では厳密な命令や指示が必要なので、人には数値情報を完全に入力することが強制される。しかし、人は精度高く行なうことは得意ではない。我々は数字や文字列をタイプしたり書いたりするように求められるとよく間違う。これはよく知られたことである。ではなぜ機械はいまだにそのような高い精度を要求するようにデザインされているのだろうか。間違ったキーを押すと恐ろしい結果につながることがあるというのに。


     我々が 「ヒューマンエラー」と呼ぶものは、単にテクノロジーのニーズに人の行為が適していない場合であることが多い。したがって、それはテクノロジーに欠点があるということを示している。それはエラーとして考えるべきではない。エラーの概念を排除する必要がある。そうではなくて、我々は、自分のゴールやプランをテクノロジーに合ったかたちに変えるのに支援が使える、ということを認識する必要があるのだ。
     人間の能力とテクノロジーの要件とのミスマッチがある限り、エラーは避けられない。したがって、最も良いデザインはその事実を前提として考慮し、エラーの機会を最小限にし、またその影響を軽減させるようにするのである。 起こりうる限りのエラーは全部起こると考えて、それらに対する対策をしておく。行為は元へ戻せるように、そしてエラーの結果はあまり重大でないようにしておく。キーとなるデザイン原則は次のようなものである。
    ・テクノロジーを操作するための知識は外界に置いておく。必要なものをすべて頭の中に入れておくよう 要求してはならない。人が要件をすべて学んだときには、効率的に操作ができるようにする。熟練者なら外界の知識なしに実行できるものであっても、初心者には外界の知識を使えるようにしておく。こうすれば熟練者でも、まれにしか実行しない操作や、長い間そのテクノロジーを使わなかった後にまた使うようになったときに助けになる。
    ・物理的、論理的、意味的、文化的などの自然な制約や人工的な制約の威力を利用する。強制選択機能や自然な対応づけの力を活用する。
    ・実行のへだたりと評価のへだたりの間に橋を架ける。実行および評価の両者において、関連するものを可視的にする。 実行側では、フィードフォワード情報を提供し、選択肢がすぐに選べるようにしておく。評価側では、フィードバックを提供し、それぞれの行為の結果が明らかになるようにする。システムの現在の状態を、直ちに、簡明に、正確に、そして人の持つゴールや意図や期待と合致するかたちで人に分かるようにしておく。

     我々はエラーを受け入れ、またその原因を理解し、それらが再び起こらないようにすることでそれに対処しなければならない。罰したり叱責したりするのではなく、支援することが必要なのである。


     ほとんどの会社は、競合相手に対して機能を比較し、自分のどこが弱いか判断して、その分野の力を強めようとする。間違いだ、とムンは言う。良い戦略は、自社が強い分野に集中して、それをさらに強くすることである。次に、強い点に注目させるように、すべてのマーケティングと宣伝の焦点を絞る。 それによって、その製品は、そういうことをあまり考えていない他社のものから際立つようになる。弱さに関しては、無関係なものは無視すればよいとムンは言う。教訓は簡単だ。むやみに追随するな、弱さは捨て、強さに集中することである。 ある製品が本当の強さを持ったら、 その他の分野では「それで充分」という程度にしておく余裕ができる。
     良いデザインのためには競争圧力から距離を置き、製品全体に一貫性があり、筋が通っていて、分かりやすいように確実にする必要がある。この姿勢には会社のリーダーシップが必要である。それは、いくつかの市場セグメントにとっては重要だと考えられるあれやこれやの機能を追加するように要求し続ける市 場の力に抵抗するものである。最良の製品はこれらの競合の声を無視し、そのかわり、製品を使う人の真のニーズに焦点を当てることである。
     アマゾンドットコムの創始者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾスは、自らのアプローチを「顧客へのこだわり」と呼んでいる。 すべてにおいてアマゾンの顧客の要求に焦点が当てられる。 競合は無視し、伝統的なマーケティングの要求も無視する。焦点は単純に、次のような顧客の問いに合わせられる。顧客は何を望んでいるか。彼らのニーズはいかに満たされるか、サービスと顧客を高めるためにできることは何か。顧客に集中せよ。そうすれば残りのことはおのずから片がつく、とベゾスは主張する。

    ・真のアフォーダンスのいくつかは知覚される。
    ・すべての知覚されたアフォーダンスはシグニファイアである。
    ・シグニファイアのいくつかは知覚されたアフォーダンスである。
    ・シグニファイアのいくつかは真のアフォーダンスである。
    ・真のアフォーダンスのいくつかは知覚されないものがある。

  • ・アフォーダンス 見た目からしてどう使うか分かるデザイン (室内の電球の配置に合わせたスイッチの配置)
    ・見た目で使い方を考える必要がないデザイン (+-を考えなくて良い乾電池)
    ・ダブルダイヤモンドモデル 正しい問題を見つける発散と収束と正しい解決を見つける発散と収束

  • 認知心理学的な分析に基づくデザイン提案の書。理図書 501.83||N96b 12038775

  • 大学の講義の教科書のような(?)読みごたえのある本。ヒューマンエラーについて丁寧に書かれている。最初から読むとデザイン思考の章に到達するまでに時間かかる。

  • 設計者は典型的なユーザーではない。
    自分が設計したものを使っているうちに、その専門家になってしまい、
    誰もが使用時に困難を覚えるということは想像もできなくなる、

  • 読み物としてもとても面白い。

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