- Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
- / ISBN・EAN: 9784788713109
作品紹介・あらすじ
"東洋のルソー"の正体は日本の伝統に棹差そうとする保守思想家であった!近代日本思想史における俗論を糺す著者渾身の一冊!
感想・レビュー・書評
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「民主主義の元祖」「東洋のルソー」「幸徳秋水の師匠」等々評されるものの、その実像はよく知らなかったので、色々と参考にはなった。そもそも世間での評価を知らないので「誤解」と言われても、なにが誤解なのかという前提条件もなく、ある意味純粋に読めたとは思う。主に福沢諭吉との比較を通じて人物像や思想信条を浮き彫りにし、これまでの評価を覆そうと試みてはいるものの(主に桑原武夫批判)、著者の思想信条のフレームに当てはめようとしている側面も強く、中立的・客観的とは言い難い(そもそも著者にとっては福沢諭吉は保守思想家であり、自由主義者扱いする丸山眞男を批判しているし)。が、輿論と世論の違いや「自由と平等で狂った瘋癲病院」といったフランス革命批判等々兆民を保守論者として評したい著者の論調には共感できる部分もある(が、都合の悪いところは目を瞑ろうとしていて、いいとこ取りしている感もある)。
結局明治という時代は、西洋合理主義という近代にどう向き合うか?という時代であり、その対峙の仕方によって、福沢諭吉や漱石のように紙幣の顔になれるか?否かが決まるのかなあという気がした。という点においては兆民はしくじったのかもしれない。まあこれも後世の評価(誤解?)でしかないのかもしれないが。
ちょっと驚いたのは兆民がトクヴィルを読み誤り、「アメリカン・デモクラシー」の米国を楽園と読み誤り(まあこれは仕方ないという気もするし、兆民ともあろう者がという気もする)、それが20年前まで続いていたという下り。私が学生の頃にはトクヴィルとオルテガはセット扱いで大衆民主主義批判するという政治学が隆盛していたように思ってたのだが、実はマイノリティだったのかなあと思うと、大学時代に教わる先生の思想信条の影響性について考えさせられた。(それを結構引きずってるし・・・)詳細をみるコメント0件をすべて表示